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性風俗世界を生きる「おんなのこ」のエスノグラフィ
SM・関係性・「自己」がつむぐもの
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年8月
- 書店発売日
- 2017年8月10日
- 登録日
- 2017年8月2日
- 最終更新日
- 2017年8月2日
紹介
あるときカナダのコールガールの講演を聞く機会があり、性風俗世界で生きる女性たちに興味を抱くようになった著者は、論文執筆のために某都市のSMサービスを提供するデリバリーヘルスにスタッフの仕事を得て、フィールドワークを開始した。結果、43人のおんなのこたちから調査の確約を得て、おんなのこたちとの交流を深める。性的なサービスを提供する女性たちは、いったいどのような思いで、その仕事を選び、日々を過ごしているのか。彼女たちと日常をともにしながら、彼女たちの生存戦略を描き出した意欲作。
目次
プロローグ 何が善で、何が悪かはわからない――性風俗で働く人々に興味を持ったわけ
デリバリーヘルスY店で調査を始める
「おんなのこ」とうちとけるまでの道のり
43人の「おんなのこ」たちに話を聞く――調査の概要
本書の構成と都市への着目
第1章 性風俗世界としてのY店
Y店のコンセプトと営業形態
独自性と戦略
Y店の客
Y店を取り巻く人々
Y店の法的な位置づけ
第2章 「おんなのこ」として働く/をやめる/になれない/にならない
女性たちが入店するまでの流れ
「おんなのこ」として働きに出る
「おんなのこ」をやめるとき
「おんなのこ」になれない人
「おんなのこ」にならない人
第3章 「遊び」としてのプレイがつむぐ
Y店のプレイをどう捉えるべきか――人類学による性行為研究から
Y店のプレイ
客にとってのプレイ――「おんなのこ」による「変態」の理解を通じて
「おんなのこ」が考える「本来」のSMプレイ――SとMの役割をめぐって
「おんなのこ」が考えるY店のSMプレイ
「おんなのこ」と客の協同で成立する「遊び」
「遊び」と「本気」の境界線を「遊ぶ」
第4章 差異を作るゲームがつむぐ
優子さんのケース
1 プレイでのこだわり
2 完璧であること
3 客との関係における優子さんの経験
桃さんのケース
1 合わせるという戦略
2 変わり続けること
3 変わり続けても変わらずすること
4 変わり続ける女としての経験
カノ子さんのケース
1 SMという「実験」開始
2 独自の基準
ヒカルさんのケース
1 淡々とした姿勢
2 接客の技法と仕事への姿勢
3 過去に働いてきたお店
ゲームの進め方で生じる過剰性と4人の「遊び」方
第5章 「笑い」がつむぐ
頻繁に笑う「おんなのこ」
笑いを通じて示される「自己」、読み取られる「自己」
「おんなのこ」をつなぐ笑い
1 新人と「おんなのこ」をつなげる笑い
2 「おんなのこ」同士のつながりに見られる笑い
3 一緒になって客を許容していく笑い
「共同の想像体/態」形成を通じた客とのつながり
客を個別性を有した存在として見ること
自分のことも笑う
「笑い」の複数性と連続性
第6章 都市に生きるということ――性風俗世界における部分的「自己」の切断と接合をめぐって
近代的な「自己」
関係性から成る包括的-多配列的「自己」
都市的生活で可能となる「自己」
1 都市で育むことのできる関係のモード
2 都市的な部分的「自己」
客との関係で「おんなのこ」が示す都市的-部分的「自己」
第7章 そして、「おんなのこ」になる
「遊び」、ゲーム、「笑い」の関係性
「遊び」-ゲーム-「笑い」を横断する都市的-部分的「自己」
「おんなのこ」として行為すること、「おんなのこ」になること
「わざ」磨きと「おんなのこ」
「スタイル」の議論から「おんなのこ」になることを考える
売春、セックスワーク/性労働の議論とそれに対する本書の立場及び意見
エピローグ
補論 風営法にみる適法化をめぐる諸問題――性風俗世界という視点に向けて
あとがき
文献
前書きなど
プロローグ
(…前略…)
本書の構成と都市への着目
次に本書の構成について説明する。前半である第1章から第5章までは、Y店とはどんな場所であり、どんな人々が関わっているのか事例に基づいて明らかにしていくことに専念する。そして後半の第6章と第7章では、前半の議論に基づきながら私なりに「おんなのこ」について考察を深めた。その際のキーワードとなるのが、都市である。
「おんなのこ」の中には、何とか生きるためにがんばっている人たちが少なくない。スキルがないために他の仕事に就くことが難しい(と思っている)人や、離婚して小さな子どもを育てている人などが「おんなのこ」となってお金を稼ぎ、生きている。口に出していいやすい仕事、いわゆる「昼の仕事」や「昼職」を持ち、副業として「おんなのこ」となる人も少なくないが、「昼の仕事」だけでは余裕のないぎりぎりの生活であり、やはり何とか生きていることに変わりはない。さらに、面接で落とされY店に入ることさえかなわなかったが、借金を抱えた女性など、やはり何とか生きる場を求めてやってくる人にもたくさん出会った。
こうしてみると、都市でどうにか生きることを具体的に実践する人々が集まっている場所が、そのまま、調査をしているY店であるように思えてきた。どうにかここで生きていこうとする人々の姿が折り重なってできあがっていく、このY店のありようは、現代日本社会を映す縮図のようにも感じられてきたのである。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。
