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カリブ海世界を知るための70章
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年6月
- 書店発売日
- 2017年6月20日
- 登録日
- 2017年6月12日
- 最終更新日
- 2017年6月12日
紹介
カリブ海に浮かぶ島々を中心に、海を囲む沿岸の地域まで視点を広げた「カリブ海世界」を、歴史・政治・社会・文化・生活など様々な角度から紹介。人びとのリアルな有り様を描き出し、リゾートと租税回避地というステロタイプを大きく変える画期的な案内書。
目次
はじめに
Ⅰ カリブ海世界への招待
第1章 21世紀のカリブ海世界――「環カリブ海地域」とカリブ海域諸国
第2章 カリブ海世界の自然と環境――熱帯の多様な自然と人びとの暮らし
第3章 現代カリブ海世界を創った欧米列強の遺産――抗争と植民地争奪戦の跡
第4章 カリブ海世界の多人種・多民族社会――その形成の歴史と21世紀の姿
第5章 21世紀のカリブ海世界の経済社会――開発途上国からの脱却と経済の多角化への努力
第6章 グローバル化するカリブ海世界――大きな経済格差と人口減少に直面する小国家群
【コラム1】グレナダのナツメグの話
Ⅱ ヨーロッパによる破壊と「植民地」という秩序の形成
第7章 「コロンブスの交換」――コロンブスによる新世界の「発見」とカリブ海世界
第8章 カリブ海域の先住民は絶滅したのか?――病死・虐待・逃亡・絶滅・復活
第9章 カリブ海域の砂糖プランテーションと奴隷制――アフロカリブ海世界の形成
第10章 カリブ海域の開発とユダヤ人――海賊から交易まで
第11章 ヨーロッパからの労働移民――プアー・ホワイトの導入
第12章 ヨーロッパが運んだアジア人――環カリブ海地域の中国人
【コラム2】カリブ海と「コロンブスの日」
Ⅲ 欧米植民地統治からの独立とその後
第13章 アフリカ人奴隷の導入――新大陸で最大の奴隷輸入地域となったカリブ海世界
第14章 カリブ海地域における奴隷制度の廃止――奴隷貿易の廃止から奴隷解放への道
第15章 フランス植民地はどのような道を選択したか――独立の道と同化の道
第16章 スペイン植民地の独立――ドミニカ共和国・キューバ・プエルトリコ
第17章 英国植民地の独立――英領西インド諸島連邦から分離独立への道
第18章 オランダ植民地の独立――オランダ領に留まった島々と独立したスリナム
第19章 米国の未編入領域の経緯と現状――米国領バージン諸島とプエルトリコ
【コラム3】奴隷制廃止と英国議会――W・ウィルバーフォースが遺したもの
Ⅳ 多人種・多民族が共存するカリブ海世界の姿
第20章 アフロカリブ海世界――アイデンティティの変容とブラック・パワー運動
第21章 環カリブ海地域のアジア系社会――インド人・ジャワ人・ベトナム人など
第22章 インド系年期奉公人から多数派へ――トリニダード・トバゴとガイアナの政党政治を中心に
第23章 環カリブ海地域のイスラム系社会――その起源と現代に至る社会の形成
第24章 環カリブ海地域のユダヤ系社会――オランダ系ユダヤ人から東欧系ユダヤ人まで
第25章 カリブ海島嶼のマイノリティ――カリナゴ・ガリフナ・マルーン
第26章 環カリブ海地域のシリア・レバノン系社会――行商人から大富豪へ
第27章 環カリブ海地域のヨーロッパ系白人社会――絶対少数派としての存在とアイデンティティ
【コラム4】セイントマーティン――「言語境界線」が横断する島
Ⅴ 欧米におけるカリブ系社会と混交文化
第28章 古くて新しいクレオール――クレオールがカリブ海文化のキーワードになるまで
第29章 ニューヨーク市の英語圏カリブ系集団――誇り高きカリブ海の西インド諸島系
第30章 マイアミのハイチ・クレオール社会――言語文化継承の取り組み
第31章 英国のカリブ海移民たち――マイノリティの文化的影響
第32章 フランスのカリブ海移民社会――クレオール化を生きる人びと
第33章 オランダのカリブ海移民社会――多様性を認めるオランダ社会での定住と存在感
第34章 世界に広がるカリブ海の音楽――「ラム・アンド・コカコーラ」
【コラム5】キュラソーのクレオール言語パピアメントは書きことばとして定着するのか?
Ⅵ 融合と混交による独自のカリブ海文化の生成
第35章 トリニダード島の観客参加型カーニバル――カリブ海最大の熱狂
第36章 英語圏カリブ海音楽におけるアフリカ性――トリニダード島のカリプソとソカ
第37章 20世紀以降のジャマイカ音楽――ラスタファリからレゲエまで
第38章 カリブ海文学への招待――大陸と大陸、語圏と語圏を股にかける
第39章 英語圏文学への招待――起源と展開
第40章 スペイン語圏文学への招待――大アンティル諸島から大陸部まで
第41章 フランス語圏文学への招待――書き言葉と話し言葉のあいだで
第42章 カリビアンアート――世界の芸術文化が融合して誕生したカリブ海世界のアート
【コラム6】スリナムと小アンティル諸島のクレオール料理
Ⅶ 現代カリブ海世界の政治
第43章 政治体制の多様性と旧宗主国との関係――継承した体制と独自の体制の並存
第44章 社会主義国キューバ――半世紀にわたる自立への苦闘
第45章 カリブ海域の盟主をめざす大国の力学――ドミニカ共和国が取り組む地域外交
第46章 米国の対カリブ海域政策――軍事介入の歴史に決別できるか
第47章 現代中国とカリブ海世界――習近平のラテンアメリカ・カリブ外交
第48章 旧英領植民地諸国と英連邦の絆――英国伝統文化と慣習法
第49章 旧フランス植民地の多様性とフランス海外県――困難を伴う自立への道
【コラム7】女性の地位向上と政界進出――カリブ海世界の女性首脳たち
Ⅷ カリブ海世界の連携――経済社会開発を目指して
第50章 西インド諸島が輩出した二人の知識人――W・アーサー・ルイスとE・ウィリアムズの遺産
第51章 カリブ共同体(カリコム)――経済統合・機能的協力・対外政策上の協力
第52章 西インド諸島大学を中心とする人材育成のための地域協力――英国留学から地元の大学へ
第53章 カリブ海世界と米国およびラテンアメリカ諸国との連携――CBIとCELACを中心に
第54章 東カリブ諸国機構(OECS)――通貨を共有するミニステートの協力
第55章 南北問題とカリブ海世界――国連とロメ協定・コトヌー協定
第56章 カリブ海世界のジェンダー――男女平等と女性のエンパワーメント
【コラム8】旧宗主国への謝罪と賠償の請求――先住民虐殺と奴隷制の補償問題
Ⅸ グローバル化するカリブ海世界
第57章 カリブ海諸島のラム酒――旧宗主国の伝統を受け継ぐ地場製品
第58章 海島綿(シーアイランドコットン)――カリブが世界に誇る最高級コットン
第59章 カリブ海域のバナナ産業――グローバル化に翻弄される熱帯の特産物
第60章 カリブ海域の会員制ホールセールクラブ――存在感を保つプライススマート社
第61章 知られざる地下資源保有諸国――ボーキサイト・ニッケルから石油まで
第62章 カリブ海域の観光産業――地域を支える基幹産業の実情と課題
第63章 世界を動かすタックスヘイブン――その歴史と実態
【コラム9】クジラ漁の島、グレナディン諸島のベキア島
Ⅹ カリブ海世界と日本――相互交流の現状と未来
第64章 日本のカリブ海世界外交――利害を共有する諸国との外交重点地域
第65章 核兵器廃絶へ向けた日本との連携――共通目標への緊密な協力
第66章 日本とカリブ海域とのヒトとモノの交流――島嶼国同士の400年に及ぶ絆
第67章 カリブ海地域諸国への日本の開発援助――評価を受ける日本のODA
第68章 日本のカリブ海域水産業への支援――なぜカリブ海域なのか
第69章 カリブ海域の気候変動・防災・環境への支援――日本の経験を活かす
第70章 カリブ海諸国のエネルギー問題――構造的課題解決への日本の支援
【コラム10】カリブ海域諸国で愛される日本の中古車――日本の顔としての存在感
『カリブ海世界を知るための70章』参考文献
前書きなど
はじめに
読者の皆さんは、カリブ海世界は日本から遠いと、何となく思っているのではないだろうか。しかしカリブ海は必ずしも日本から遠くない。日本から直行便で行ける北米・欧州のいくつかの都市で乗り継げば、そこからカリブ海域のどこかの国へ直行できる。そしていったんカリブ海世界に足を踏み入れると、域内の移動は空路やフェリーで案外簡単なことが判る。そこでは街を走る車がほとんど日本車であるためカリブ海世界における日本の存在に気づき、多くの国が親日的であることも実感する。
しかし本書では、そのようなカリブ海世界を「白い砂浜・碧い海と空」の異国情緒あふれる地域として紹介するのではなく、カリブ海域諸国の政治・経済・社会・文化の有り様と人びとの暮らしを70のテーマで紹介する。世界のどの国とも同様に、暮らしの豊かさと公正・公平を実現しようとする取り組みがあり、社会における貧富の格差や不正・不公平を克服する難しさに直面しながらも、多くの住民が近代的な首都を中心に整った官公庁・道路・海空港などのインフラ・市場・教育施設・博物館・美術館などを身近に持って暮らしていることを知れば、読者の持つカリブ海世界のイメージは大きく変わるに違いない。
本書をまとめるにあたって編者があらためて気づいたことは、カリブ海世界全体を日本語で紹介した本があまりにも少ないことであった。専門的な研究書が出版されており、カリブ海世界で仕事をしている日本人も少なくないにも拘わらず、この地域全体の姿を紹介した出版物がほとんどなかった。そこでカリブ海世界をできるだけ広い視野で紹介してみようと考え、歴史・政治・経済・言語・文学・文化人類学などを専門分野とする研究者と現地で活躍する日本人を本書の企画に誘った。
(…後略…)
追記
【執筆者一覧】
石垣泰司(いしがき やすじ)
東北大学法学部および米国オバリン大学卒業。元外務省国際連合局担当官房審議官、在サンパウロ総領事、ドミニカ共和国(ジャマイカ・バハマ兼任)、レバノン、フィンランド等大使、東海大学法学部教授。
主な著作:「テロとの戦いにおける国際機構の役割と人権問題」(『慶応法学』、2006年)、『国際機構』(岩波書店、2006年)、「ハイチ・ドミニカ共和国関係の歴史的考察及び展望」(『外務省調査月報』、1994年)など。
石部尚登(いしべ なおと)
日本大学理工学部教員。大阪大学博士(言語文化学)。専門は社会言語学、とくにベルギーの言語政策、方言復権についての研究。
主な著作:“Le regime de territorialite linguistique et les langues non-officielles en Belgique” (La territorialitat linguistica, Quaderns per a l’analisi, 44, Horsori Editorial, 2016)、『「ベルギー」とは何か?――アイデンティティの多層性』(共編著、松籟社、2013年)、『ベルギーの言語政策 方言と公用語』(大阪大学出版会、2011年)、など。
伊藤みちる(いとう みちる)
大妻女子大学国際センター専任講師。社会学修士(英国ウォーリック大学)。国際関係学修士(英国レスター大学)。専門は社会学、特にカリブ地域駐在中に見聞した社会問題の研究。国際協力機構(JICA)青年海外協力隊員(ジャマイカ)。在トリニダード・トバゴ共和国日本国大使館専門調査員。駐ガイアナUNDP/UNVプログラム・オフィサー。日本ラム協会認定ラム・コンシェルジュ。
主な著作: “Constructing and Reproducing Whiteness: An Oral History of French Creoles in Trinidad” (International Journal of Human Culture Studies, 26, 2016)など。
河崎 靖(かわさき やすし)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授。オランダ語を中心としたゲルマン語学が専門。
主な著作:『ルーン文字の起源』(大学書林、2017年)、『オランダ語学への誘い』(大学書林、2011年)、『アフリカーンス語への招待』(現代書館、2010年)、『ドイツ方言学』(現代書館、2008年)、『ゲルマン語学への招待――ヨーロッパ言語文化史入門』(現代書館、2006年)、Eine graphematische Untersuchung zu den Heliand-Handschriften (Munchen: iudicium, 2004)、『オランダ語の基礎』(白水社、2004年)など。
カレーニョ、グローリア(Gloria Celia Carreno Alvarado)
メキシコ在住。メキシコ国立定期刊行物資料館専門司書。メキシコ国立自治大学(UNAM)講師(情報・資料処理技術講義)。メキシコ・ユダヤコミュニティComunidad Maguen David 歴史資料室管理責任者。サンニコラス・デ・イダルゴ・ミチョアカン大学卒(メキシコ史専攻)、歴史学修士(UNAM)。
主な著作:Estudio historico demografico de la migracion judia a Mexico, 1900-1950(共著。Mexico: 2005)など。
寺尾智史(てらお さとし)
宮崎大学語学教育センター/大学院教育学研究科准教授、中国浙江師範大学客座教授。京都大学博士(人間・環境学)。研究分野は言語多様性継承論、社会言語学。
主な著作:『欧州周縁の言語マイノリティと東アジア――言語多様性の継承は可能か』(彩流社、2014年)、「少数言語として切り取られることは言語多様性保全につながるか――ヨーロッパ最周縁を起点として」(砂野幸稔編著『多言語主義再考――多言語状況の比較研究』三元社、2012年)など。
久野量一(くの りょういち)
東京外国語大学大学院総合国際学研究院准教授。研究対象はラテンアメリカ文学、カリブ文学(スペイン語圏)。
主な論文:「ポストソ連時代のキューバ文学を読む」(『れにくさ』第6 号、2016年)、「プエルト・リコ、問い直される『正史』」(『立命館言語文化研究』第27巻2・3号、2016年)など。
主な訳書:フアン・ガブリエル・バスケス『コスタグアナ秘史』(水声社、2016年)、ロベルト・ボラーニョ『鼻持ちならないガウチョ』(白水社、2014年)など。
杉浦 篤(すぎうら あつし)
日本ボリビア協会専務理事。神戸大学経済学部卒。トヨタ自動車、関西デジタルホン、ウィルソンラーニング・ワールドワイドなどに勤務。
主な著作:「日本のODA政策とドミニカ共和国」、「顔の見えるODA政策」、「新しい支援政策の現場を見る」(国本伊代編著『ドミニカ共和国を知るための60章』、明石書店、2013年)など。
長瀬玲子(ながせ れいこ)
ジャマイカ在住。画家。愛知淑徳大学卒。ベイリー・ナガセ・コンサルティング・グループ・コーオーナー。
中村和恵(なかむら かずえ)
明治大学法学部・教養デザイン研究科教授。英語圏文学を軸に、先住民族の現代文化、詩・随筆・物語執筆など、分野の垣根を越えて聞こえにくい声の探求を試みる。東京大学総合文化研究科博士課程中退。
主な著作:『日本語に生まれて』(岩波書店、2013年)、『地上の飯』(平凡社、2012年)、『世界中のアフリカへ行こう』(共編著、岩波書店、2009年)。主な翻訳:ジーン・リース『闇の中の航海』(岩波書店、2017年)、アール・ラヴレイス『ドラゴンは踊れない』(みすず書房、2009年)など。
中村隆之(なかむら たかゆき)
大東文化大学外国語学部専任講師。東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了。学術博士(東京外国語大学)。カリブ海域を中心にフランス語圏文学を研究する一方、世界各地のアフリカ系文化や口承文化にも関心を向けている。
主な著作:『エドゥアール・グリッサン――〈全‐世界〉のヴィジョン』(岩波書店、2016年)、『カリブ‐世界論――植民地主義に抗う複数の場所と歴史』(人文書院、2013年)。主な訳書:エドゥアール・グリッサン『痕跡』(水声社、2016年)など。
西 成彦(にし まさひこ)
立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。比較文学専攻。とくに東欧、低緯度アメリカに関して研究歴が長い。
関連著作:『移動文学論②エクストラテリトリアル』(作品社、2008年)、『耳の悦楽――ラフカディオ・ハーンと女たち』(紀伊國屋書店、2004年)、『クレオール事始』(紀伊國屋書店、1999年)、『移動文学論①イディッシュ』(作品社、1995年)、フレンチ・クレオール関係の翻訳に「クレオール民話――三題」(平川祐弘編『クレオール物語』講談社学術文庫、1991年)など。
松本八重子(まつもと やえこ)
亜細亜大学非常勤講師。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。MA in political science(ミシガン大学)。学術修士(東京大学)。専門は政治学・国際関係論、ラテンアメリカ・カリブ研究。
主な著作:「ガイアナの二大政党制の変化と2015年総選挙」(『ラテンアメリカ・レポート』、第32巻第2号、2015年)、『地域統合、国家主権とグローバリゼーション』(中央公論事業出版、2009年)など。
丸谷雄一郎(まるや ゆういちろう)
東京経済大学経営学部教授。商学修士(中央大学)。グローバル・マーケティング論専門。
主な著作:『グローバル・マーケティング(第5版)』(創成社、2015年)、『ウォルマートのグローバル・マーケティング戦略』(創成社、2013年)、『ラテンアメリカ経済成長と広がる貧困格差』(創成社、2009年)、『変貌するメキシコ小売産業――経済開放政策とウォルマートの進出』(白桃書房、2003年)など。
三吉美加(みよし みか)
東京大学大学院総合文化研究科学術研究員、ニューヨーク市立大学シティカレッジ・ドミニカンスタディーズ研究所研究員、多文化コンサルタント。学術博士(東京大学)。文化人類学・北米カリブ海域黒人表現文化研究専門。主な著作:『米国のラティーノ』(大学教育出版、2014年)、『シンコペーション――ラティーノ/カリビアンの文化実践』(共著。エディマン・新宿書房、2003年)など。
渡辺洋一(わたなべ よういち)
トリニダード・トバゴ在住。音楽家。慶應義塾大学法学部卒。トリニダード・トバゴ大学パーフォーミングアーツ・音楽技術学科専任講師。音楽プロデューサー。レコーディング・エンジニア。トリニダード・トバゴのナショナル・アーカイブの録音担当。
上記内容は本書刊行時のものです。