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道路建設とステークホルダー 合意形成の記録
四日市港臨港道路霞4号幹線の事例より
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年3月
- 書店発売日
- 2017年3月21日
- 登録日
- 2017年3月8日
- 最終更新日
- 2017年3月8日
紹介
四日市港臨港道路霞4号幹線建設計画は、港管理組合、国、自治体、住民、環境保護団体など多くのステークホルダー(利害関係者)が議論を重ね、折り合いを模索していくことで最終的な合意を得た。本書は、その16年間の紆余曲折を振り返る記録である。
目次
はじめに
第1章 四日市港臨港道路(霞4号幹線)はなぜ必要になったのか
1 四日市港臨港道路(霞4号幹線)とは
2 整備予定地(川越町・四日市市周辺)の背景
歴史、文化、自然
四日市公害からの再起と教訓
3 霞4号幹線整備は必要か
グローバルとローカル
四日市港港湾計画と臨港道路の課題
現状の道路の渋滞と大気汚染・騒音問題の解消
コンテナ機能の拡充――産業の競争力と雇用維持に重要
地震等災害時の輸送代替機能
第2章 計画検討のための“体制づくり”
1 地域に及ぼす影響を的確に把握するための体制づくり
2 環境影響評価(環境アセスメント)ができるコンサルタントを選ぶ
3 臨港道路霞4号幹線調査検討委員会のスタート
調査検討委員会の委員の選定
吉田克己(三重大学名誉教授)の存在
調査検討委員会と4つの専門部会
情報共有がもたらした一体感
4 調査検討委員会での様々な試み
環境への影響をいかに予測するか――ポストの状態をプレの段階から織り込む
地域協働、住民参画の時代に――藤前干潟保全の成功を契機に
霞4号幹線は本当に必要なのか、から始める
第3章 多様な立場の人々(ステークホルダー)の意見を如何に拾い上げるか
1 多様な立場の人々の意見を聴く意味
2 多くの意見を拾い上げるための工夫
意見を聴く地域を決める
公開で問題意識を全部さらけ出す
各団体から1人だけが発言できる「意見交換会」の意義
3 同じ意見は一つとしてない
第4章 折り合いをつけるための様々な工夫
1 反対を理解し、課題を共有する
まずは、すべての意見に耳を傾け、課題を共有した
「反対は反対」「賛成は賛成」を理解する
信頼を得ることが必要
一般の人でも理解できる方法を取り入れる
マスコミへの伝え方にも注意を払う
2 地域住民の理解を得るための課題は残る
第5章 『道路ガイドプラン』と『臨港道路霞4号幹線計画について(提言)』
1 霞4号幹線事業のマニフェスト『道路ガイドプラン』
2 5つのルート案から3つの推奨ルートへ
3 『臨港道路霞4号幹線計画について(提言)』
第6章 建設開始、そして次のステップへ
1 調査検討委員会から懇談会へ
意見交換の場は、調査検討委員会から「四日市港臨港道路霞4号幹線事業に伴う懇談会」へと引き継がれた
懇談会の役割
設計にあたっての小検討会の設置
調査、モニタリング、検討の状況は開示し続ける
2 細部への配慮事項
細部設計への景観的および生物への配慮
橋梁本体色の選定
海岸堤防を15m海側へ移動
騒音対策
環境モニタリング調査の実施
生物への保全対策の実施
避難場所としての利用検討
3 多様なステークホルダーの利用の段階へ
第7章 霞4号幹線事業から学んだこと
1 公共事業の検討プロセスのモデルとして
2 まちづくりに生かす
3 行政組織間の連携
4 地域にプラスになる公共事業にするために
5 大気汚染・騒音などへの配慮
6 生物への配慮
第8章 プロジェクトを振り返って
第9章 資料編
1 四日市港臨港道路「霞4号幹線」整備事業の経緯
2 霞4号幹線関連公開資料
3 海辺の生物保全対策ガイドライン
保全対策の経緯
事業範囲で保全対策を実施した重要な海辺の生物
保全対象を実施した海辺の生物の概要
海辺の生物保全対策
おわりに
コラム
1《四日市港外貿コンテナ取扱量》
2《国道23号線の交通量》
3《国道23号線の大気汚染と自動車騒音》
4《臨港道路霞4号幹線調査検討委員会》
5《多くの意見を拾い上げるための工夫》
6《ドイツ・ミュンヘン新空港整備における反対運動と合意形成の事例》
7《『道路ガイドプラン』とは》
8《『四日市港臨港道路霞4号幹線事業に伴う懇談会』》
9《『景観・環境検討ワーキンググループ』》
10《『四日市港臨港道路霞4号幹線のリダンダンシー確保に係る検討』》
11《海辺の植物の保全対策(ハマボウフウの例)》
前書きなど
はじめに
1990年代後半には、伊勢湾の藤前干潟、東京湾の三番瀬の埋め立て計画に対して、希少な干潟の生態系保全を求める反対運動が起こり、計画が中止となった。こうした時代に、四日市港臨港道路霞4号幹線プロジェクトは、港の北部に位置する霞ヶ浦ふ頭におけるコンテナターミナルの増強に対応するため、四日市港港湾計画により既設の霞大橋ルートに対する代替ルートとして計画された。埠頭の北端から短径間を繋ぐ橋梁の数本の桁が高松干潟に脚を下ろす設計となっており、その生態系を破壊するとして反対運動が起こった。また、環境庁より環境への配慮を十分に行うようにとの意見が出された。これらの課題に対応し、計画を再検討する必要が生じた。
(…中略…)
調査検討委員会は平成12(2000)年度から始まり、現在も年1回、懇談会の形で検討やモニタリングが継続されている。実に16年にも及んで多ステークホルダーの意見を聴き続ける場を設けた道路づくりは、多くの例をみないのではないかと思われる。
本書は、多くのステークホルダーが携わったプロジェクトの16年間の紆余曲折を振り返る記録である。当初から座長を務めてきた林良嗣と一番最近にコンサルタントとして参画した桒原淳とが代表して執筆した。(……)
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。