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「開かれた学校」の功罪
ボランティアの参入と子どもの排除/包摂
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年2月
- 書店発売日
- 2017年2月25日
- 登録日
- 2017年2月23日
- 最終更新日
- 2017年2月23日
紹介
開かれた学校の必要性とともに注目されているボランティア。だがはたして、ボランティアは子どものために機能しているといえるのだろうか。そのような問題意識のもと、質的研究の手法を用いて4つの事例からボランティアの影響を分析。真に子どもの最善の利益を保障するために、ボランティアはどのような役割を果たすべきなのかを提言する。
目次
まえがき
第1章 「開かれた学校」を問い直す
第1節 問題の所在
1.「意思決定への参加」論の隆盛
2.「教育活動への参加」論の課題
3.本研究の目的
第2節 先行研究の検討
1.学校―家庭・地域をめぐる実証的研究
2.マイノリティの子どもをめぐる議論
3.ボランティアの役割をめぐる議論
第3節 本研究の課題
第2章 「開かれた学校」への質的なアプローチ
第1節 質的手法の採用と事例選定の条件
1.質的手法の採用
2.事例選定の条件
第2節 事例の概要と選定の手順
1.事例の概要
2.選定の手順
第3節 調査と分析の手順
1.調査の手順
2.分析の手順
第3章 ボランティアの陥穽
第1節 障害のある子どもへの対応
1.同質性の前提
2.例外的な措置
第2節 ボランティアとスティグマ
1.学級共同体の存続
2.例外的措置の象徴
3.スティグマの維持・強化
第3節 ボランティアとしての対応
1.例外的な措置を解除することの困難性
2.特段の努力と意識の変革
第4節 ボランティアが置かれていた立場
1.ボランティアの存在意義
2.「弱者」を助けるボランティア
第5節 意図せざる帰結
1.「同質性の前提」の維持
2.〈指導〉的役割の遂行
3.「弱者」と「強者」の関係性
第4章 ボランティアが担う役割の転換
第1節 明確なニーズ
1.母親によるニーズの代弁
2.本人によるニーズの表出
第2節 スティグマを軽減・解消することの困難性
1.同質性の前提と例外的な措置
2.スティグマへの対処
第3節 ボランティアの優位性とイニシアティブの委譲
1.優位性に対する自戒
2.非対称な関係性の転換
3.イニシアティブの委譲
第4節 ボランティアによるニーズの再解釈
1.恣意的・暫定的な判断
2.ニーズの発見
第5節 〈指導〉から〈支援〉へ
1.「同質性の前提」とスティグマの維持・強化
2.ボランティアによる〈支援〉
3.〈支援〉の条件
4.検討を要する課題
第5章 子ども同士の関係性の転換
第1節 ボランティアを取り巻く状況
1.教師との関係性
2.子どもとの関係性
第2節 スティグマの軽減・解消に向けた取り組み
1.一対多の関係性
2.序列化への抵抗
第3節 ボランティアとしてのアイデンティティ
1.存在意義の喪失
2.存在の承認
3.対等な関係性
第4節 ボランティアが担いうる役割とその限界
1.文脈への配慮
2.子どもの代弁者
3.ボランティアとしての限界
第5節 排除から包摂へ
1.スティグマを軽減・解消する方策
2.ボランティアという立場の脆弱性
3.「アドボカシー」の重要性と困難性
第6章 「開かれた学校」のインパクト
第1節 脆弱な立場
1.教師との関係性
2.子どもとの関係性
第2節 アイデンティティの獲得
1.承認の獲得
2.意思の尊重
第3節 ネットワークの形成とボランティアの相互補完性
1.ネットワークの形成
2.ボランティアの相互補完性
第4節 教師への働きかけ
1.〈支援〉とアドボカシー
2.ボランティアによる関係の編み直し
第5節 ボランティアの可能性
1.ボランティア同士のネットワーク
2.ネットワークとアドボカシー
3.責任の引き受け
終章 「開かれた学校」の在り方
第1節 本研究で得られた知見
1.子ども同士の関係性に及ぼす影響
2.ボランティアの担う役割
3.ボランティアの自己認識
第2節 本研究から示される含意
1.「教育活動への参加」に潜む逆機能
2.ボランティアの困難と意義
3.異質な価値の共存
第3節 本研究の限界と今後の課題
文献
あとがき
前書きなど
まえがき
(…前略…)
以下、第1章で先行研究のレビューを行い、本研究の目的、視角、課題の設定を行う。第2章では、研究の手法と分析の対象について述べる。本研究では、授業に継続して携わるボランティアの実践として計4つの事例を取り上げ、質的研究のパラダイムに依りながら第3~6章でそれらを一つずつ分析することになる。まず第3章で扱うのは、ボランティアの参入によって教室での学習や生活から排除されがちな子どもがより不利な立場に追い込まれることになった事例である。これは、ボランティアの協力を得ることが学びの場にネガティブな影響を及ぼす可能性があることを示すものと言える。続いて第4章および第5章では、教室内の差別や排除の構造を転換させるために何が重要となるのか、検討を加える。ボランティアの参入によるネガティブな影響を回避するための要件についても、ここで明らかとなる。さらに第6章では、教室での学習や生活から排除されがちな子どもを包摂するために、ボランティアによる「アドボカシー」が重要となることが示される。「アドボカシー」とは時に教師への異議申し立てを伴うものとなるため、ボランティアにとって容易には遂行できない行為であるが、ここでは、その困難性を乗り越えるための条件を析出する。そして終章では、本研究から得られた知見と含意を整理したうえで、子どもの学びや育ちにとって有効な「開かれた学校」の在り方を提示する。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。