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同性婚 だれもが自由に結婚する権利
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2016年10月
- 書店発売日
- 2016年10月10日
- 登録日
- 2016年10月3日
- 最終更新日
- 2016年10月3日
紹介
「同性婚が認められないのは人権侵害だ」として全国455人の当事者が日本弁護士連合会に人権救済申立てを行った。当事者の声を織り交ぜながら法制化されていないことによる不利益を明らかにすると共に婚姻制度に関わる憲法や民法の論点、同性パートナーシップ制度などを解説。
目次
プロローグ
PART1 悩み・孤立・生きづらさ――私たちが同性婚を求めるのはなぜか
1 子どものころに感じた不安や戸惑い
2 社会から受け入れられない自分を受け入れられない
3 パートナーと家族・周囲との関係
4 理解の少ない地域ゆえの悩み
5 子どもを育てる当事者の悩み
PART2 なぜ、差別や偏見があるのだろう?――「同性愛嫌悪」の根底にあるもの
1 同性愛ってなんだろう?
2 なぜ、同性愛になるのだろう?
3 なぜ、差別や偏見が生まれるのだろう?
4 なぜ、差別はいけないんだろう?――憲法や法律から考える
PART3 同性カップルを取り巻く不利益――かくも不平等な法律、制度、ルール
1 パートナーが亡くなったとき
2 事故や病気のとき
3 別れるとき
4 パートナーから暴力をふるわれたとき
5 パートナーと一緒に暮らすとき
6 子どもを育てるとき
7 パートナーが外国人のとき
8 保険金やさまざまな手当てを受け取るとき
9 不利益解消のための方法はあるか
PART4 憲法や法律は同性婚をどうとらえているか――「憲法で禁じられている」の誤り
1 民法ではどうなっているんだろう?
2 憲法ではどう解釈できるのだろう?
3 子どもを産み育てることと同性婚
4 動き出した同性パートナーシップ制度
PART5 世界にひろがる同性婚――日本との違いはどこにあるのか
付録 同性婚を憲法上の権利として確立した米国最高裁判決
おわりに
前書きなど
プロローグ
(…前略…)
だれもが尊重される社会をめざして
この本が出版されるときには、日弁連の結論は、まだ出ていません。
その現時点でこの本を出すのは、「弁護士会だけでなく読者の皆さんにも、全国から集まった当事者の声に耳を傾け、そして私たち弁護団と一緒に考えてほしい」と思うからです。
「家族とは何か」ということは、この社会を構成している私たち一人ひとりがどう思い、どう考えるかということと、密接に関連しています。「法律でこう決まっているから」「法律に詳しい人たちでそう決めているから」というのではなく、すべての人々が一緒に考えることこそ必要なのです。
社会の中には、同性婚について、頭の中だけの理屈で議論し、否定的な考えを持っている人も見受けられます。もちろん、それだけでなく、同性愛当事者の中にも、婚姻制度に否定的な考え方を持っている人もいるでしょう。しかし、同性婚を求める当事者の話をよく聞き、実際に起きている事実から出発して考えることが、なにより大切です。
そして、今回申し立てたのが「人権救済」であることからもおわかりいただけるように、同性婚の問題が、まさに「人権」の問題であるということを念頭に置いて、読み進めていってほしいと、強く願っています。だれもが一人ひとり大切な人間として尊重され、差別されないこと。安心した毎日の暮らしと、幸せな人生を送ることができること。人が生まれながらにして持っているそのこと、異性間であればできる婚姻が、なぜ同性間では認められないのか。そもそも「婚姻」とは何なのか。――それらを、人権という視点から皆で考えてほしいと思っています。同性婚の問題は、同性愛者・両性愛者だけの問題ではありません。一人ひとりが尊重される、多様性が肯定される社会は、だれにとっても生きやすい、より良い社会となるはずです。
申立て前の2015年の3月に渋谷区の条例ができ、6月にアメリカの連邦最高裁の判決が出ることは、私たち弁護団も予想していませんでした。人権救済申立ての前日の7月6日には、韓国で初の同性婚訴訟の第1回期日が開かれています。これらすべてが同じ2015年に重なったのはまったくの偶然ですが、しかし、必然でもあったのだと思います。日本の同性愛者が苦しみながら少しずつ歩み続けてきたことが、世界の動きや国内の動きと重なって、まさにこのタイミングになったのです。
欧米を中心として他国では同性婚が認められ始めていますが、それでも、世界で初めて同性婚が認められたオランダですら2001年からです。また他方で、21世紀に入って、同性愛の規制を強化したり禁止したりして、迫害する国々もあります。同性愛・同性婚について、世界はいままさに大きく動いている状況です。その中にあって、日本はいま、同性愛について規制もされていなければ、保護もされていません。
だからこそいま、今回の人権救済申立てとこの本を通して、日本社会が同性婚の問題を人権問題として認識する契機となることを、強く願っています。
同性婚人権救済弁護団 団長 山下敏雅
上記内容は本書刊行時のものです。