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香港バリケード 遠藤 誉(著) - 明石書店
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香港バリケード (ホンコンバリケード) 若者はなぜ立ち上がったのか (ワカモノハナゼタチアガッタノカ)

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発行:明石書店
四六判
304ページ
並製
定価 1,600円+税
ISBN
978-4-7503-4148-4   COPY
ISBN 13
9784750341484   COPY
ISBN 10h
4-7503-4148-7   COPY
ISBN 10
4750341487   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2015年3月
書店発売日
登録日
2015年3月2日
最終更新日
2015年3月5日
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紹介

香港のトップを選ぶ「普通選挙」が実施されないことを知った若者たちが始めた抗議活動。市民も加わり、巨大な運動へと発展していった。だが、ある時期から市民の支持を失い79日間で幕を閉じた。雨傘革命とは何だったのか。社会・政治状況の分析と現地の人へのインタビューで多面的に考察し、今後の行方を展望する。

目次

序章 雨傘革命を解剖する――香港新世代のメンタリティ[遠藤誉]


第Ⅰ部 バリケードはなぜ出現したのか[遠藤誉]

第1章 「鉄の女」サッチャーと「鋼の男」鄧小平の一騎打ち――イギリス植民地から中国返還へ
 1 アヘンを使って香港を奪ったイギリス
 2 新中国の誕生とイギリスの対中政策
 3 米中が接近するならイギリスも――一国二制度を準備した中国
 4 中英共同声明――地にひれ伏した美しい金髪

第2章 香港特別行政区基本法に潜む爆薬――成立過程とからくり
 1 香港特別行政区基本法起草委員会
 2 香港人という塊の「正体」は何か?
 3 基本法はいかなる爆薬を含んでいるのか?
 4 2003年、基本法第23条――爆発した50万人抗議デモ

第3章 チャイナ・マネーからオキュパイ論台頭まで――反愛国教育勝利の中で何が起きたのか?
 1 CEPAと「9プラス2」汎珠江デルタ大開発――チャイナ・マネーが「民心」を買う
 2 愛国論争と愛国教育導入への抗議デモ
 3 チャイナ・マネーが買った選挙委員会と長官選挙
 4 用意されていたオキュパイ論

第4章 雨傘革命がつきつけたもの
 1 立ち上がった学生たち――デモの時系列
 2 市民がついていかなかった、もう一つの理由――チャイナ・マネーが民主を買う
 3 中国中央はどう対処したのか?
 4 世界金融界のセンターを狙う中国
 5 アジア情勢を揺さぶる新世代の本土化意識――新しいメンタリティ
 6 ジミー・ライの根性と意地

 ◆コラム 自由のないところに国際金融中心地はできない[安冨歩]


第Ⅱ部 バリケードの中で人々は何を考えたのか

第5章 香港が香港であり続けるために――香港と日本人のハーフが見た雨傘革命[伯川星矢]
 香港の未来に不安を感じている若者たち
 新旧両世代間の葛藤
 誰のためにある香港?
 若者たちの声を聞く
 私にとっての雨傘革命

第6章 最前線に立った66歳の起業家と17歳の学生[刈部謙一]
 ジミー・ライ インタビュー
 黄之峰 インタビュー

第7章 香港のゲバラに会いに行く[安冨歩]

第8章 It was not a dream ――占拠79日を支えた想い[深尾葉子]
 20年目の香港へ
 返還後の香港に生まれた新たな生きざま
  【Interview1】現場を遠くから眺める人たち
  【Interview2】オキュパイに参加した人々
  【Interview3】占拠地区に80日間毎日夕食を届け続けたH夫妻と1歳の娘
  【Interview4】運動に加わり情報発信を続けたL氏
 運動で得たもの、失ったもの

終章 雨傘世代――バリケードは崩壊しない[遠藤誉]


 あとがき[深尾葉子/遠藤誉]

前書きなど

序章 雨傘革命を解剖する――香港新世代のメンタリティ[遠藤誉]

 (…前略…)

 本書では、「香港の若者はなぜ立ち上がったのか」というテーマとともに、学生たちとオキュパイ派の間に垣間見えてくる運動のベクトルの違いを考察しながら、それでもなお雨傘革命が東アジア情勢に与える決定的な影響に関して分析する。
 香港の中国返還後に生まれたか、あるいはその頃に物心ついた香港新世代たちと、かつて中国共産党の圧政から逃れて香港に渡り、その後の中国返還に伴ってカナダやオーストラリアなどに移民していった人たちと同世代で香港に残留するしかなかった市民たちとの間には、明らかな世代間ギャップがある。メンタリティが違うのである。
 香港新世代が持つ価値観が起こしてきた数々の抵抗運動は、台湾の若者にも強い影響を与え、2014年3月に「ひまわり運動」の誘因となった。台湾の若者たちもまた、かつて国民党と共産党の間で戦われた国共内戦(1946年~1949年)に敗北して台湾に逃れてきた世代との間に、明確な世代間ギャップを生んでいる。
 こういった新世代のエネルギーとパワーは、中国共産党が一党支配している中国中央政府にとっては、脅威だ。
 しかし、そのパワーが消えるとは思えない。
 なぜなら、道路に張られたバリケードは撤去されたけれど、若者の心に刻印されているバリケードを撤去することはできないからだ。バリケードの中で叫ばれたスローガンに「抗命」というのがある。本来は「命令に従わない」という意味だが、それは「運命に抗う」と解釈することもできる。抜け出せない香港の運命と闘う新世代たちの叫びは、やがてアジア情勢を変えていくだろう。
 チャイナ・マネーが「強権と言論弾圧」を伴っている限り、中国共産党による一党支配体制は、必ずどこかで限界が来る。そのメッセージを、今般の雨傘革命における香港新世代は世界に届けたのではないだろうか。
 それを検証し、歴史軸と地域軸の中で、雨傘革命をきちんと位置付けていくことが、いま強く求められている。本書の目的は、この喫緊の課題に対して解答を模索することにある。この解答が見えれば、冒頭に書いた若者たちの声の重みも、きっと伝わってくるにちがいないと期待している。
 第Ⅰ部の「バリケードはなぜ出現したのか」では、中国中央と香港の間における関係を、政治的あるいは社会的側面から考察し、雨傘革命を解剖する。
 第Ⅱ部の「バリケードの中で人々は何を考えたのか」では深尾・安冨チームによる香港現地取材を通して拾ったナマの声をご紹介する。ただし単なる取材リポートではなく、各自が高い知見と洞察により執筆している。
 各執筆者は形の上では独立しているが、執筆過程では互いに助け合い補い合い、事実確認をする濃密な共同作業の結果、生まれたのが本書である。

 (…後略…)

著者プロフィール

遠藤 誉  (エンドウ ホマレ)  (

1941年中国吉林省長春市生まれ。1953年帰国。東京福祉大学国際交流センター長。筑波大学名誉教授。理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『チャイナ・セブン 〈紅い皇帝〉習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(以上、朝日新聞出版)、『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(WAC)、『ネット大国中国――言論をめぐる攻防』(岩波新書)、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』(日経BP社)など多数。

深尾 葉子  (フカオ ヨウコ)  (共著

1963年大阪府生まれ。大阪外国語大学中国語専攻卒業。大阪市立大学大学院前期修了。大阪大学大学院経済学研究科准教授。修士(文学)。主な編著に『現代中国の底流』(行路社)、『満洲の成立』(名古屋大学出版会)、『黄土高原・緑を紡ぎだす人々』(風響社)、著書に『黄土高原の村――音・空間・社会』(古今書院)、『魂の脱植民地化とは何か』(青灯社)、『日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体』『日本の社会を埋め尽くすカエル男の末路』(以上、講談社α新書)、翻訳書に『蝕まれた大地』(行路社)など。

安冨 歩  (ヤストミ アユム)  (共著

1963年大阪府生まれ。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。東京大学東洋文化研究所教授。博士(経済学)。主な著書に『原発危機と「東大話法」』『幻影からの脱出』『ジャパン・イズ・バック』(以上、明石書店)、『もう「東大話法」にはだまされない』(講談社α新書)、『生きる技法』『合理的な神秘主義』(以上、青灯社)、『ドラッカーと論語』(東洋経済新報社)、『生きるための論語』(ちくま新書)、『経済学の船出』(NTT出版)、『生きるための経済学』(NHKブックス)、『「満洲国」の金融』『貨幣の複雑性』(以上、創文社)など多数。

上記内容は本書刊行時のものです。