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コーカサスと黒海の資源・民族・紛争 中島 偉晴(著) - 明石書店
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コーカサスと黒海の資源・民族・紛争

発行:明石書店
四六判
272ページ
上製
定価 3,200円+税
ISBN
978-4-7503-4102-6
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2014年11月
書店発売日
登録日
2014年11月12日
最終更新日
2014年11月13日
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紹介

カスピ海と黒海に挟まれたコーカサスは石油・天然ガスの輸送ラインとして資源戦略上の要衝となっている。大国の論理で蹂躙され続け、また、民族同士の対立も絶えないコーカサス諸民族の抱える問題を詳説し、この地で続く紛争解決の糸口を探る。

目次

 はじめに

Ⅰ 戦略上の要衝


第1章 石油・天然ガスの輸送ルート・供給源をめぐる問題
 1.石油・天然ガス関連施設の概況
 2.ガス・パイプラインの敷設計画をめぐって

第2章 戦略上の要衝――コーカサスと黒海
 1.黒海――「五日間戦争」もう一つの舞台
 2.戦略上の要衝確保のための戦争の可能性


Ⅱ 民族の問題

第3章 民族の十字路――コーカサス概略史

第4章 南コーカサス三国
 1.グルジア共和国
 2.アルメニア共和国
 3.アゼルバイジャン共和国
 4.ナゴルノ・カラバフ問題

第5章 北コーカサス
 1.北オセチア=アラニア共和国
 2.チェチェン共和国
 3.イングシ共和国
 4.ダゲスタン共和国
 5.カバルダ・バルカル共和国
 6.カラチャイ・チェルケス共和国
 7.アディゲア共和国
 8.「キルカッシア人問題」

第6章 民族抑圧の根源に向き合う
 1.ソ連邦崩壊から二〇年
 2.ソヴェト連邦崩壊と民族の問題
 3.あらゆる民族的抑圧に対して「ノー」を


 あとがき

 コーカサス・アルメニア高地対照年表
 参考文献・資料

前書きなど

はじめに

 (…前略…)

 本書では、「五日間戦争」以前に、支配的民族グルジア人と比較少数民族オセット人、アブハズ人との関係はどうであったのかを考察した。グルジア民族主義はなぜそんなにも「激しい」のか、米国はどのくらいグルジアにてこ入れしていたのか、ロシアはなぜ緊張関係のエスカレートをも辞さずにグルジア侵攻・進駐という強攻策に出たのか、「国際機構」の介入とは一体なにほどのものなのか。
 二つ目。「ナゴルノ・カラバフ戦争」は、ソ連邦の崩壊過程で生起した戦争である。支配的民族の抑圧から国家的に分離、独立をめざしたナゴルノ・カラバフの民族解放運動は、この二月で二三年目を迎えた。考察の対象として、大ロシア主義的民族抑圧体制の立役者となり、ロシア革命を変容させたスターリンが直接関わった行政のうち、その大ロシア主義的集権体制形成の嚆矢となった「グルジア問題」と、「ナゴルノ・カラバフ帰属問題」について若干触れた。ともすれば「領土紛争」等に矮小化されるナゴルノ・カラバフ問題を歴史的に捉えるために踏まえるべき事柄を検討し、本当は何が問題なのか、なぜ現地住民の意思が活かされないのか、「国際機構」に委ねられることは果たして解決の道につながっているのか等の考察を試みた。
 三つ目は、四〇もの民族が諸山岳言語を有することから「ことばの山」、最近では「火薬庫」とも形容される北コーカサスにおける戦争状態をめぐる民族の問題についてである。
 現在、チェチェン人の独立闘争に対して、ロシアが軍事力によって「解決」を押し付けることに差し当たり成功したかのようである。ロシア軍によって徹底的に破壊された首都グローズヌィも再建途上にあるという。二〇〇九年四月、ロシアのメドヴェージェフ大統領(当時)は、チェチェンでの独立・抵抗活動を沈静化させたとして「対テロ作戦」体制を解除すると宣言し、「安定」が強調された。だが、実際は北コーカサス地域に和平も安定ももたらされていない。チェチェン、イングシではプーチンの傀儡政権による支配によって人権は危機に瀕しており、これに対する人々の怒りは強く、二〇〇九年には、イングシ、ダゲスタン、カバルダ・バルカル共和国等で、治安・司法当局幹部の暗殺や連邦保安庁関連施設等、国家機構への襲撃事件が相次いだ。そして、二〇一〇年三月、モスクワの地下鉄ルビャンカ駅(同駅の上には、ロシア連邦保安庁(FSB)本部あり。帝政時の「ルビャンカ監獄」)とパルク・クリトゥールィ駅(至近に内務省がある)で車両爆破事件が起き、百名を超える死傷者が出た。これは、北コーカサスから連邦中央権力へ宛てた厳粛なメッセージであり、プーチン=メドヴェージェフ政権にとって強烈な一撃となった。二〇一一年一月には、モスクワのドモジェードヴォ空港で死者三七名を出す爆発事件が起きている。
 また、第二次大戦中にスターリンが行ったイスラーム教信仰諸民族の強制追放と、フルシチョフ恩赦による帰還許可後の土地未回収の結果として生じている紛争は、いまなお民族間の関係をひどく害しており、その矛盾は北コーカサス諸国で爆発寸前となっている。北コーカサスから目が離せない。
 そもそも、ある民族が分離・独立を求めているという事実は、その民族がその地域・国家の支配的民族から抑圧されていることを示す。民族には分離・独立する自由があり、それは、当該地域の民族構成および居住民の意思に従って決められるべきことであろう。

著者プロフィール

中島 偉晴  (ナカジマ ヒデハル)  (

 1939年東京目黒生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。産業団体勤務・定年退職。国際政治経済、ソ連論、アルメニア高地・コーカサスの民族問題研究。1980年以来アルメニアを中心にコーカサスを訪問。1984年日本アルメニア研究所(後の「日本アルメニア友好協会」)設立。1984、87年アルメニア高地訪問。1993、98年ナゴルノ・カラバフに入る。
 2000年和光大学オープンカレッジ講座「アルメニアの民族・文化、歴史」講師。
 主な著書および小論に『閃光のアルメニア――ナゴルノ・カラバフはどこへ‐トランスコーカサス歴史と紀行』(神保出版会 1990年)、『アルメニア人ジェノサイド』(明石書店 2007年)、『アルメニアを知るための65章』(共編著 明石書店 2009年)、A・マイヤホフ「世界の天然ガス確認埋蔵量と究極埋蔵量」(翻訳、(社)ソ連東欧貿易会『調査月報』1980年1月号)、「〔図説〕オイル・ルート」(共筆)『世界』(1980年4月号〈特集・80年代の石油危機〉)、「カフカスの民族」山川出版社『歴史と地理』(1993年)、「コーカサスの南と北」古今書院『地理』11月増刊〈現代世界をどう教えるか〉」(1996年)、「コーカサス・カスピ海地域」古今書院『授業のための世界地理』(地理教育研究会編、2006年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。