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3.11後の持続可能な社会をつくる実践学 山崎 憲治(編) - 明石書店
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3.11後の持続可能な社会をつくる実践学 (サンテンイチイチゴノジゾクカノウナシャカイヲツクルジッセンガク) 被災地・岩手のレジリエントな社会構築の試み (ヒサイチイワテノレジリエントナシャカイコウチクノココロミ)

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発行:明石書店
A5判
328ページ
並製
定価 2,200円+税
ISBN
978-4-7503-4069-2   COPY
ISBN 13
9784750340692   COPY
ISBN 10h
4-7503-4069-3   COPY
ISBN 10
4750340693   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2014年9月
書店発売日
登録日
2014年9月19日
最終更新日
2014年9月19日
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紹介

地域が抱える問題を一気に顕在化させた東日本大震災。持続可能な社会づくりとは何かを問い続けてきた岩手大学の試みの真価が問われている。コミュニティ・教育・平和などの多様な側面から、災害からの復興への歩みを被災地から発信する。

目次

まえがき――ESDと東日本大震災


第Ⅰ部 持続可能な地域のあり方をめぐって

第1章 3.11以降のレジリエントな地域社会づくり
第2章 地域資源の再生による「遠野スタイル」の実現
第3章 逆境が創造の原点、地域資源を活かした持続可能なコミュニティづくり――葛巻町の取り組み
第4章 安心安全を地域からつくる――情報・食糧・教育・雇用
第5章 町づくりは人の意識を育てることである――土地問題を中心にして
第6章 諦めの境地から生きる郷へ――旧沢内村村長深澤晟雄に学ぶ
第7章 情熱こそが推進力、イーハトーブトライアルの38年
第8章 すべてのキーワードは「心」


第Ⅱ部 地域と生産・復興

第1章 復興の力を生むうえで必要な企業の役割
第2章 「なつかしい未来創造株式会社」が陸前高田にもたらす可能性
第3章 3.11、大震災と経営
第4章 災害からの復興
第5章 農業がつくる地域の風景
第6章 起業のすすめ
第7章 震災におけるエネルギー環境の変化――持続可能な社会に向けての当社のエネルギー方針
第8章 地域と共に企業は復興する
第9章 学生レポートに見る震災復興に向けた持続可能なコミュニティづくりとESDに関する社会起業の可能性

第Ⅲ部 教育と復興

第1章 被災地に学ぶ教育の原点――被災地の教育復興の思想と実践から
第2章 語り継ぐことは命をつなぐこと――共通教育科目「津波の実際から防災を考える」のよっちゃんとアイちゃんの物語から
第3章 いのちを育む教育・被災から復興に向けて
第4章 ふるさと「田老」を想う――未来を生きる子どもたちの笑顔を描いて
第5章 震災と防災、そして人づくり「防災教育の実践」――復興・郷土をになう人づくり
第6章 ポスト3.11を子どもたちと生き延びるために――サステイナブルからサバイバルへ


第Ⅳ部 平和と復興

第1章 持続可能な社会の根底をつくる反戦・平和
第2章 「農民兵士の声がきこえる」――戦争を語り伝える北上平和記念展示館の実践
第3章 復興の根底に避戦がなければならない――避戦なくして、復興なし


 あとがき
 執筆者一覧

前書きなど

あとがき

 (…前略…)

 第Ⅰ部は「持続可能な地域のあり方をめぐって」と題し、各自治体の首長・首長経験者から、地域の実情に合わせた危機克服の道が提示された。また、地域で草の根の活動を展開されている方からも問題提起を受けた。これらの主張は、いずれもハードな施設建設や中央からの資本に、地域の将来をゆだねる方法ではない。自前で当該地域に適応した政策の展開が示されている。今回あげた自治体は、3.11で津波という打撃を直接受けなかった被災周辺地域に位置し、被災直後から全力で被災地支援を続けている。災害の救援・支援に関わって地域連携がつくられている。しかし、その後の復興期において、地域政策策定レベルでの具体的連携は生まれるまでに至っていない。同時に、共通課題を抱え悩んでいる事実がある被災地では被災後一気に人口減少が、若い女性を中心に起こっている。被災地の女性の労働は、臨時的で非正規雇用の低賃金が中心である。女性が抱えるジェンダーvulnerability (脆弱性)が20歳代に集中して噴出している。しかも「出産年齢」に当たるため、地域の中で結婚相手を見つけられない男性が増え、その結果次の世代が大幅に減少するという地域の消滅に結びつく現象が、被災後わずか2年で起こっている。声高に叫ばれている復興事業がこのジェンダーvulnerabilityを解消する方向に機能していないのだ。

 (……)

 第Ⅱ部は「地域と生産・復興」と題して地域と企業活動を課題にあげた。企業は自治体の垣根を越えて活動できる点、地域間連携の可能性を具体化するものでもある。「一人の首も切らない、一つの会社もつぶさせない」陸前高田を中心とする気仙中小企業家同友会のスローガンだ。社員を単なる労働力としてではなく、地域社会を担う一員として位置づけている。津波で生産施設、商品を失い、生産活動を停止した企業が、社員が行うボランティア活動を企業活動とみなして、給料を支払う。経営者は資金が底を尽くぎりぎりまで、この活動を続けると社員に宣言する。企業が地域と共にあることを、社員は実感し、ボランティア活動を進めるとともに、会社再建に全力を傾けることになる。地域・企業・社員の結びつきが、復興の具体的道筋をつくっていく。再建を果たした企業に共通することは、早期計画・実施・生産規模の適正化・新しい市場開拓が、ほぼ同時展開で進んでいる。震災前から、「夢」としての経営計画があり、被災を契機に具体化することであった。早期の復興は、ファンドの多様な提供と新しい市場の開拓を進めることになる。行政からの支援も受けやすい。企業の社会貢献の生きた姿を示すものとなる。

 (……)

 第Ⅲ部は「教育と復興」と題して、防災教育の成果と課題を明らかにした。防災学習を災害文化の一翼を担うものとして、public domainにすることが問われている。3・11の大津波に対して、岩手の沿岸部の小学校・中学校で、学校管理下での犠牲はゼロである。ゼロをこれからも続けなくてはならないし、どうすれば可能になるのか、この課題を世界に発信することが義務でもある。三陸沿岸は「津波常襲地」である。安全確保に向けた日ごろの防災学習の実践は、世界の最前線の学習展開という課題を常にもっている。世界に向けた発信の意義もそこにある。

 (……)

 第Ⅳ部は「平和と復興」と題し、二つの課題の同根性を追うことにした。ビアク島で日本兵の捜索を続けている人々がいる。強い反戦平和活動である。ジャングルの中で食料も武器もわずかしかもたずに戦うことを強いられ、マラリアと飢餓に苦しんでジャングルに消えた日本兵から、戦争放棄という言葉がリアルな叫びとして聞こえてくる。これは戦地から届いた7000通の軍事郵便の中にも示されている。いまこそ、兵士の声に耳を傾けねばならない状況にある。

 (…後略…)

著者プロフィール

山崎 憲治  (ヤマザキ ケンジ)  (

1947年愛知県生まれ。明治大学大学院前期博士課程修了。神奈川県、東京都で公立高等学校の教諭を務める。1997年「戦後日本における水害の地域性に関する研究」で論文博士(地理学)。高校教員時は地理教育とともに中高一貫の中等教育や高大連携教育の展開を実践した。2005年岩手大学大学教育総合センター教授。2012年岩手大学退職。めぐろシティカレッジ理事。専門は災害地理学。主な編著書『都市型水害と過疎地の水害』(築地書館、1994年)、『地域に学ぶ――身近な地域研究から「目黒学」を創る』(二宮書店、2003年)、『目黒・みどりへの誘い――地域をつくり 地域を育む』(二宮書店、2008年)、『持続可能な社会をつくる実践学――岩手大学からの発信』(岩手日報社、2010年)。

本田 敏秋  (ホンダ トシアキ)  (

1947年岩手県遠野市生まれ。神奈川大学法学部卒。1970年岩手県庁入庁。消防防災課長、工業振興課長、企画調整課長、久慈地方振興局長などを経て2002年旧遠野市長選で初当選。2005年初代(新)遠野市長に就任。現在、通算4期目。

山崎 友子  (ヤマザキ トモコ)  (

長崎県生まれ。東京大学総合文化研究科、ハーバード大学教育学大学院修了。現在、岩手大学教授。教育学部・教育学研究科専任。地域防災研究センター兼任。専門分野:英語教育。防災教育・災害文化研究。震災関連の著書『おばあちゃんの紙しばい つなみ』監修・英訳(産経新聞出版、2011年)、『震災からの教育復興――岩手県宮古市の記録』分担執筆(悠光堂、2012年)。

上記内容は本書刊行時のものです。