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生活困窮者への伴走型支援
経済的困窮と社会的孤立に対応するトータルサポート
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年3月
- 書店発売日
- 2014年3月31日
- 登録日
- 2014年3月27日
- 最終更新日
- 2014年3月28日
紹介
2015年度より全面施行となる「生活困窮者自立支援法」は、ホームレス層に留まらない多様な困窮者に寄り添う「伴走型支援」を必要とするものである。本書は、北九州で支援活動を継続してきた奥田知志氏らが、今後の支援の理念と実践についてまとめる。
目次
はじめに
序章 本書の目的と基本的視座
1.本書の目的
2.伴走型支援
3.基本的視座――生活困窮者自立支援をどのように考えるのか
第1部 伴走型支援とは何か――その社会的背景・思想・仕組み
第1章 生活困窮をめぐる新たな状況――なぜ伴走型支援が必要なのか
1.はじめに
2.生活困窮の拡大
3.既存の制度の問題点と伴走型支援の必要性
第2章 伴走の思想と伴走型支援の理念・仕組み
1.「伴走」という思想
2.伴走型支援の7つの理念
3.伴走型支援の仕組み
4.伴走型支援を担う人材に求められる力
第2部 伴走型支援の成果と課題
第3章 伴走型支援としてのパーソナルサポート事業の展開――福岡絆プロジェクト
1.はじめに
2.福岡絆プロジェクトの仕組み
3.福岡絆プロジェクトの検証
4.福岡絆プロジェクトの検証から得られた知見と伴走型支援の課題
第4章 若年生活困窮者への伴走型就労・社会参加支援――北九州におけるモデル事業
1.はじめに
2.若年生活困窮者への伴走型就労・社会参加支援の仕組み
3.若年生活困窮者への伴走型就労・社会参加支援の効果
4.若年生活困窮者への伴走型就労・社会参加支援のこれから
第3部 これからの生活困窮者支援のあり方
第5章 相互多重型支援――これからの生活困窮者支援の構想と展望
1.相互多重型支援とは何か
2.「笑える牡蠣」プロジェクト――震災被災者と生活困窮者の相互支援
3.「笑えるだし巻き玉子」プロジェクト――独居孤立者と若年生活困窮者の相互支援
4.「生笑一座」プロジェクト――子どもの自殺予防とホームレス自立の相互支援
第6章 座談会:これからの生活困窮者支援はいかにあるべきか
1.はじめに
2.生活困窮者とは誰か
3.生活困窮者支援には何が大切なのか
4.生活困窮者自立支援法への期待と危惧
5.伴走型支援についてどのように考えるか
6.おわりに――関わる人たちの物語が重なり合っていくような支援を
おわりに
資料 生活困窮者自立支援法
前書きなど
おわりに
本書が立脚する基本的立場は、生活困窮者の本質を「経済的困窮」と「社会的孤立」において理解するということである。
25年前、北九州においてホームレス支援が始まったとき以来、支援活動を支えた視点は「ハウスレス」と「ホームレス」であった。「ハウスレス」は「宿なし」に象徴される経済的、物理的貧困を意味している。野宿者に対する自立支援の場合、「失業と住宅喪失」が中心課題となっていた。2002年に施行された「ホームレス自立支援法」においてもこの点が踏襲された。だが、支援現場においては「ハウスレス」の解消だけでは済まない事態が起こっていた。それが「ホームレス」問題である。「ホーム」は「ハウス」とは違う。「ハウス」が経済的、物理的課題を意味するのに対して、「ホーム」は「関係概念」である。よって、「ホームレス」とは「無縁」状態を示す言葉としてわれわれはとらえてきた。
よって、「ハウスレス(経済的困窮)」と「ホームレス(社会的孤立)」に同時的に対処することが何よりも重要であった。路上においては、当事者から「畳の上で死にたい」という言葉をよく耳にした。その後、居住支援を行い仕事にも就けた。だが「これで安心」とはならなった。「俺の最期は誰が看取ってくれるだろうか」。アパート入居後の自立者からしばしば聞かれた言葉である。そこには「孤立」の問題が明確に語られていた。経済的自立の前にも後にも「孤立」があった。
自立が孤立に終わらない。そのことが支援のテーマであった。よって、野宿者支援においては「この人には今『何が(家、食物、仕事など)』必要か」とともに、「この人には今『誰が』必要か」という2つの課題を同時的に満たす仕組みを構築してきた。
そして今日、この路上において見てきた課題は、社会全体に広がった。ハウスレスは経済的困窮として、ホームレスは社会的孤立の問題として認識されている。なかでも社会的排除や無縁社会、弧族時代、独居高齢者が社会における課題・問題となって久しい。震災後「絆」が強調されたことも、そのような無縁化する社会、孤立化する個人に対する危惧が前提にはあったように思う。
「絆」が大事であることは皆が知るところである。「人はひとりでは生きていけない」という認識も多くの人が共有している。しかし、問題は、「では、それに対してこの社会をどのように再構築するのか」ということへの対応が追いついていないということである。
本書は、経済的困窮と社会的孤立に対応するために「伴走型支援」を提唱しつつ、すでに行われている実践事例を紹介している。先述のとおり、北九州においては「伴走型支援」の原型は、すでにホームレス支援において実践されてきたが(このことについては、本書の前提となる前作、明石書店『ホームレス自立支援――NPO・市民・行政協働による「ホームの回復」』2006年を参照)、生活困窮者全般に対して早急に新しい仕組みやそのことに対応できる社会を構築するためのヒントを示したと思っている。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。