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ファクター5
エネルギー効率の5倍向上をめざすイノベーションと経済的方策
原書: FAKTOR FÜNF: Die Formel für nachhaltiges Wachstum
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年3月
- 書店発売日
- 2014年3月25日
- 登録日
- 2014年3月25日
- 最終更新日
- 2014年10月9日
紹介
地球温暖化や人口増加により危機にある地球環境の中で人類が繁栄を維持するためには、環境負荷を今の5分の1に軽減する必要がある。各産業分野で5倍の資源生産性を向上させる既存の省エネ技術を紹介しながら、これら技術の普及による経済発展のために欠かせない政治・経済の枠組みを含めた社会変革を提案する。
目次
「ファクター5」は魔法の言葉――日本語版刊行に寄せて
監修者はしがき
はじめに
岐路に立つ人類――地球環境との共生
経済的要求と環境秩序のバランス
○エコロジカル・フットプリントの挑戦
グローバル・グリーン・ニューディール
コンドラチェフサイクル
新しいサイクルは「グリーン」でなければならない
グリーン・コンドラチェフサイクルの特性
○バイオミミクリー
労働生産性から資源生産性へ
早急に、円滑に――まず始めることである
Part Ⅰ ファクター5への全体的システム・アプローチ
第1章 産業全体のファクター5
出発点はファクター4
資源生産性への全体的な取り組み
・戦略1:エネルギー効率
・戦略2:ゼロエミッション燃料への移行
・戦略3:熱と電力の回収と再利用
・戦略4:再生可能エネルギー
・戦略5:リサイクル
・戦略6:製品改良による環境負荷の低減
・戦略7:材料効率の向上
・戦略8:CO2以外の温室効果ガスの削減
分野別記述の概要
・建築
・重工業
・農業
・食品と外食産業
・交通
第2章 建築
個人住宅
パッシブハウスとは
・住宅建築のファクター5的考察
・資源効率の向上――水資源
・開発途上国の家庭におけるファクター5
商業建築
・新築ビルでの例
・第1次オバマ政権の5000億ドル(50兆円)計画
・既存建築の改築――優秀な事例のケーススタディー
・商業建築におけるファクター5の全体的アプローチ
第3章 鉄鋼とセメント
鉄鋼
・技術的側面
・事例研究――ニューコア(Nucor)
・システム改善
セメント
・オーストラリアのジオポリマー先駆者
・セメント産業全体での改善
第4章 農業
効率と再生可能エネルギーの同時効果
・システムの最適化
・農地における再生可能エネルギー
・バイオ燃料
・環境と共生できる農業への政策的枠組み
農業における水資源生産性
・全体改善スタートへの各段階
第5章 交通
乗用車と小型商用車
・燃費のファクター5の可能性
・「革命」と名付けられたハイパーカー
・乗用車以外の燃費の問題
トラック
・トラックのファクター5?
・2つの事例
・長距離輸送のモーダルシフト
航空機
・航空機の燃費の向上
・航空機による出張をやめてテレビ会議を
・航空機に代わる最新型高速鉄道
Part Ⅱ 「足るを知る」は人類の知恵――競争から共生へ、経済のパラダイム変革が持続可能な開発を可能にする
序論
第6章 法的規制
有害物質の規制――規制法の歴史的成果
エネルギー効率の規制法
水資源の規制法
手段としての公的調達
循環経済――ゴミに関する法律化の現代的手法
求められる規制法からのパラダイムシフト
第7章 経済的手段
環境マネジメントシステム
具体的な経済的手段
コースの定理から排出量取引制度(ETS)まで
コペンハーゲン気候サミット
・開発途上国の取り込み
・補償措置の悪用を防ぐ
環境税
水資源の価格
再生可能エネルギー固定価格買取り制度(FIT)
今後の見通し
第8章 環境リバウンド
カッシューム・ブルックスの仮説
2008年の金融危機に至るまで――エネルギーの低価格策と都市のドーナツ化
エネルギーを超えたリバウンド効果
産業革命と新石器革命
リバウンド効果の克服
第9章 長期的環境税
・埋もれたままの多くの発明
・持続可能な消費と生産
・国際的な配分ツール――排出量取引
・成果を上げたドイツの環境税
過去200年間で下落した天然資源価格
・資源価格が下がる理由
・枯渇する天然資源への対応策
長期的な環境税制改革――価格引き下げ対策としての環境税
国際的なCO2取引と国内の環境税――排出量取引でCO2を削減
求められる社会のコンセンサス――環境税導入で資源保護
環境税の歴史
社会政策的・雇用政策的な視点からの批判
経済界と投資家からの異論
労働生産性が20倍向上するパラダイム
市場経済はこのダイナミズムを突き動かせるか?
第10章 国家と市場のバランス
この四半世紀に弱体化した国家
どうして共産主義は崩壊したのか?
70年間の国家支配
市場の勝利
グローバルな規制と市民社会
第11章 足るを知る
IPAT方程式と間断なき成長
目標としての生活の質(QOL)
幸福の数量化
競争ではなく協調する人間像
政策としての最終考察
・先進国(北)では――失業者数の増加を伴わない「足るを知る」の実践
・南北関係――万人に平等な公共財の使用権の付与
・開発途上国(南)では――自然破壊と開発のデカップリング(分離)
参考文献
索引
謝辞
日本とアジアの環境問題とファクター5システム変革――監修者あとがきにかえて
日本語版刊行に際しての謝辞
前書きなど
「ファクター5」は魔法の言葉――日本語版刊行に寄せて
(…前略…)
エネルギー生産性と資源生産性が5倍になるという意味の「ファクター5」という言葉は、持続可能な社会への魔法の言葉になる可能性を秘めている。日本を含む豊かな国は、生活の豊かさを損なうことなく資源消費を20%削減し、貧しい国は資源消費を増やすことなく、生活の豊かさを400%向上させる必要がある。現実はその中間にある。日本などは地下資源消費を削減し、同時に生活の豊かさを増やすことも可能であろう。
しかしなぜ、実際にはわずかのことしか起きていないのだろうか? 理由は簡単で、ほとんどの国が産業競争力を維持するためと国民を喜ばせるために、資源価格を低く抑えているからである。しかし、これには持続可能性はない。もし70億の人たちが米国人と同じ資源消費を行う生活様式を行うとすると、5つの地球が必要となる。とまれ、地球は一つしかないのである。
本書は、エネルギーと資源の価格を、前年度に達成されたエネルギーや資源の生産性が向上した分、次の年度から引き上げるということを提言している。そのようにしても家庭の毎月の支出にはほとんど変化はない。もちろん生活困窮世帯などの弱者と直接影響を被る産業に対する措置は考慮する必要がある。この基本的な考え方は、恒常的なエネルギー効率上昇への意欲を消費者と産業界に持たせるところにある。
この面でも日本は手本となる素質を備えている。1970年代後半から1980年代にかけての日本のエネルギー価格は、世界でも最も高かった。しかし、それが日本の産業を後退させるどころか、新製品の波を起こさせた。デジタルカメラ、新型新幹線車両と新幹線網の拡張、セラミック新素材、第5世代コンピュータなど、80年代の日本発の花形商品が創造され、日本は地球上で最も競争力のある国となったのである。高いエネルギーコストが技術革新を起こすばねとなったのである。
我々には過去の栄光に浸っている暇はなく、次の革新への努力を進めなければならない。次なる革新の波は、エネルギーと資源の生産性の革命的な向上により、自然環境と我々の孫の世代に寄与できるものでなければならない。
上記内容は本書刊行時のものです。