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中国都市化の診断と処方 林 良嗣(編) - 明石書店
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中国都市化の診断と処方 (チュウゴクトシカノシンダントショホウ) 開発・成長のパラダイム転換 (カイハツセイチョウノパラダイムテンカン)

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発行:明石書店
A5判
192ページ
上製
定価 3,000円+税
ISBN
978-4-7503-3984-9   COPY
ISBN 13
9784750339849   COPY
ISBN 10h
4-7503-3984-9   COPY
ISBN 10
4750339849   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2014年2月
書店発売日
登録日
2014年3月14日
最終更新日
2014年3月14日
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紹介

中国の急激な都市化・経済発展は、PM2.5の問題も含め、さまざまな環境破壊・都市問題をもたらしている。本書はこのテーマに対し、日中の研究者が、観光を通じた「持続可能な発展」をはかる湯布院に集い議論した成果をまとめたもの。

目次

多様性と協働――シンポジウムに際して[ハンス=ペーター・デュール]
はじめに――中国の都市化と湯布院を架橋するもの[黒田由彦]

序章 シンポジウムを貫く視点――ダイナミック・スタビリティ[林 良嗣]
 1.中国の発展の行き詰まりと「東北モデル」の可能性
 2.ダイナミック・スタビリティを考慮した診断と治療
 3.発展の先を見たビジョン


第1部 中国における都市化の現在

第1章 南京市の開発とその課題[翟 国方]
 1.南京市の概要
 2.南京市における都市化の傾向
 3.南京市の開発における新しい段階

第2章 江南の異変――蘇南地域の開発とその問題[張 玉林]
 1.はじめに
 2.蘇南地域の都市化という大変動
 3.都市化という大変動のリスク

第3章 「都市‐農村」遷移地域における社区での階層構造および管理のジレンマ――長春市郊外を例に[田 毅鵬]
 1.中国における都市化と「都市‐農村」遷移地域の問題
 2.「都市‐農村」遷移地域の特殊な状況
 3.「都市‐農村」遷移地域の「治療」

第4章 東豊県の経済社会発展と直面する環境問題およびその対策[単 聯成]
 1.東豊県の経済社会発展状況
 2.東豊県の都市と農村の発展状況
 3.東豊県における都市化にともなう問題

第5章 中国農村部におけるゴミ問題の診断と治療[李 全鵬]
 1.〈背景〉:近代化のインパクト
 2.〈問題の診断〉:中国農村部のゴミ問題から見る「伝統」と近代」の衝突
 3.〈治療〉:政策の立て直しと公共精神の再建
 4.教育という処方箋
 5.おわりに――近代の超克に向けて

第6章 上海市田子坊地区再開発に見るコントロールされた成長[徐 春陽]
 1.はじめに
 2.再開発の優等生としての新天地
 3.田子坊の再開発
 4.田子坊の成功要因
 5.田子坊と湯布院――両者の比較と直面する共通の課題

第7章 中国農村の都市化――多系的発展の道筋[黒田由彦]
 1.はじめに
 2.改革開放政策と中国の都市化
 3.都市における農民工問題
 4.都市化の新しい局面と新農村建設
 5.農村の都市化(1)――上海大都市圏周縁部に位置するK村の事例
 6.農村の都市化(2)――長春大都市圏周縁部に位置するT県における3村の事例
 7.考察


第2部 成長の制御(コントロール)

第8章 岐路に立つ癒しの里・由布院温泉[王 昊凡]
 1.はじめに
 2.「緑・静けさ・空間」のまちづくり
 3.「緑・静けさ・空間」を守るまちづくり
 4.「緑・静けさ・空間」を活かし、守る人々とその社会関係
 5.岐路に立つ由布院
 6.「診断」から「治療」へ

第9章 市町村合併がもたらした「問題」[石橋康正]
 1.はじめに
 2.温泉地としての「由布院」、自治体としての「湯布院」
 3.由布院/湯布院をめぐる市町村合併問題
 4.市町村合併がもたらした「問題」とは?
 5.おわりに――由布院温泉の今後

第10章 鼎談「由布院温泉に見るコントロールされた成長と前向きな縮小という課題」[中谷健太郎氏×桑野和泉氏×高野雅夫]
 1.村で暮らすということ
 2.「盆地性」を守る
 3.「興奮」できる町――問題をエネルギーに変える

第11章 由布院が示唆するもの[林 良嗣]
 1.Dynamic Stability(動的な安定性)という発想
 2.由布院というまち
 3.ダイナミック・スタビリティのモデルとしての由布院
 4.由布院が示唆するもの

 コラム① Sustainable Development of Tourism in Yufuin: Analysis of Tourists’ Perspective[王 倩]

 コラム② 湯布院観光業と農業の現状と農業観光開発可能性[高 安栄]

終章 鼎談「日本社会への提言」[林 良嗣×黒田由彦×高野雅夫]
 1.はじめに――転換期を迎える日本社会
 2.居住空間に見る「クオリティストック」
 3.制度を変えるための「知」の集積
 4.おわりに――「しなやかな制御」に向けて

あとがき

前書きなど

はじめに――中国の都市化と湯布院を架橋するもの

 本書は、名古屋大学グローバルCOEプログラム「地球学から基礎・臨床環境学への展開」(2009~13年度)の一環として、2013年3月1~4日に九州・由布院において開催された「日中臨床環境学国際ワークショップ in 由布院:『成長』と『開発』のパラダイム転換――規制なき成長と『コントロールされた成長』そして『前向きの縮小』」のうち、中国の都市化の診断と処方に関する報告をもとに、その後の編者3名のディスカッションを加えてまとめたものである。このワークショップが開催されることになった経緯について、その企画に関与した者のひとりとして触れておきたい。
 臨床環境学は、名古屋大学グローバルCOEプログラム「地球学から基礎・臨床環境学への展開」を基礎環境学とともに支える柱のひとつであるが、その中心となる学習プログラムはOn-site Research Training(ORT)である。ORTは、国内外の特定の地域を対象に、多分野の院生と教員がチームを組み、その地域の自然と社会の持続可能性を脅かす問題を特定し、住民や行政とも連携して、解決策の探索やそれらの実施にともなう影響の予測を行うことを目的とする。
 ORTのフィールドは、伊勢湾、ラオス、北東アジア(中国)の3つからなる。そのなかで中国ORTは、経済成長にともなう都市化が環境負荷をどのように高めているか、そしてその解決のためにはどうすればいいかという問題設定のもと、2010年度には上海市およびその郊外、2011年度には上海市、上海市近郊の村(呉江市開弦弓村)、南京市近郊の村(南京市江寧区青龍村)においてフィールドワークを行った。
 この2回のフィールドワークの過程において、現代中国の都市化の実態と問題に関して、われわれ中国ORTチームは多くのことを学んだ。しかし、中国は広い国土をもち、地形・気候・産業・民族・文化などさまざまな点で多様性に富む。大都市上海、あるいは開発先進地である江南地域の経験は中国全体でどう位置づけられるのか。
 その手掛かりを得るために、2012年度は中国東北地方、具体的には長春市近郊の村をフィールドにする計画を立てた。周知のように、東北地方は改革開放政策のなかでは発展の「遅れた」地域だと見られている。中国語の言い方を借りて表現するならば、進んだ「南方」と遅れた「北方(東北)」を比較することで、中国の都市化の実態と問題に関してより正確な見取り図を描くことができるだろうと考えたわけである。

 (…後略…)

著者プロフィール

林 良嗣  (ハヤシ ヨシツグ)  (

(名古屋大学大学院環境学研究科教授、交通・都市国際研究センター長)
1951年三重県生まれ。1979年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。東京大学工学部助手、講師、名古屋大学工学部助教授、教授などを経て、2001年より現職。名古屋大学総長補佐(国際担当)、環境学研究科長等を歴任。世界交通学会(本部:リヨン)会長、土木学会副会長。主著に、『Land Use, Transport and the Environment』(Kluwer)、『Urban Transport and the Environment』(Elsevier)、『巨大都市と地球環境』(岩波書店)、『都市のクオリティ・ストック――交通・緑地・土地利用の統合戦略』(鹿島出版会)。土木学会論文賞、世界交通学会オレンジ賞など受賞多数。

黒田 由彦  (クロダ ヨシヒコ)  (

(名古屋大学大学院環境学研究科教授)
1958年愛媛県生まれ。1984年名古屋大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程中退。博士(社会学)。名古屋大学文学部助手、椙山女学園大学人間関係学部講師、名古屋大学情報文化学部助教授などを経て、2010年より現職。専門は地域社会学・都市社会学。主著に『ローカリティの社会学――ネットワーク・集団・組織と行政』(ハーベスト社)、「名古屋圏――東アジアにおける位置とその競争力」(『東海社会学会年報』第1号)、『分断社会と都市ガバナンス』(共著、日本経済評論社)、『中国における住民組織の再編と自治への模索――地域自治の存立基盤』(共著、明石書店)など。

高野 雅夫  (タカノ マサオ)  (

(名古屋大学大学院環境学研究科准教授)
1962年山口県生まれ。1994年名古屋大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻博士後期課程修了。博士(理学)。名古屋大学大学院理学研究科助手、助教授を経て、2001年より現職。地下資源が枯渇した後にも成り立つ暮らしや社会のあり方を追求する「千年持続学」を構想している。ピコ水力発電、バイオガス、地中熱利用、木質バイオマスなど自然エネルギー技術の開発と、その導入可能性について研究。愛知県豊田市の中山間地をフィールドに、住民、NPO、行政と協働して持続可能な山間地域づくりに取り組む。著書に『人は100Wで生きられる』(大和書房)、『千年持続社会』(共著、日本地域社会研究所)など。

上記内容は本書刊行時のものです。