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現代アメリカ移民第二世代の研究
移民排斥と同化主義に代わる「第三の道」
原書: LEGACIES: The Story of the Immigrant Second Generation
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年1月
- 書店発売日
- 2014年1月1日
- 登録日
- 2014年1月22日
- 最終更新日
- 2014年7月18日
紹介
現代アメリカ移民研究の第一人者による、中南米・アジア等からの現代アメリカ移民の子どもたちとその親を対象とした大規模な縦断調査をまとめたもの。世代を経た移民のアイデンティティを分析し、選択型文化変容とバイリンガリズムの可能性を探る。
目次
表と図
序文
謝辞
第一章 一二のストーリー
一 マイアミのストーリー
(1)マリア・デ・ロスアンへレスとイベット・サンタナ(一九九三年八月)
(2)メラニー・フェルナンデス-レイ(一九九三年九月)
(3)アリスティド・マイヨール(一九九三年八月)
(4)アルマンド・エルナンデスとルイス・エルナンデス(一九九五年七月)
(5)メアリー・パターソン(一九九五年二月)
(6)エフレン・モンテホ(一九九四年五月)
二 サンディエゴのストーリー
(1)ホルヘ、オルガ、ミゲル・アンヘルとエステラ・カルドーソ(一九九四年一月)
(2)キィ・グエン(一九八七年一二月)
(3)ベニー・モントーヤとジェニファ・モントーヤ(一九九五年一〇月)
(4)ソフィー・ケン(一九八七年一一月―一九八八年六月)
(5)ヨランダ・ムニョスとカルロス・ムニョス(一九九四年三月)
(6)ボア・チャ(一九八八年―一九九〇年)
第二章 新来のアメリカ人――概観
一 移民の過去と現在
二 移民第二世代の規模と集中
三 新第二世代の研究――移民子弟の縦断的研究(CILS)
四 新第二世代の概観
(1)国勢調査の結果
(2)CILSの結果
第三章 誰もが選ばれているわけではない――分節化された同化とその決定要因
一 移民はどのように受け入れられているか――移民の編入様式とその帰結
二 文化変容と役割逆転
三 子どもたちの成長の場――第二世代の適応に伴う困難
(1)人種
(2)労働市場
(3)対抗文化
四 困難に立ち向かう――移民の社会関係資本
(1)親の地位、家族構造、ジェンダー
(2)移民のコミュニティ
五 結論
第四章 アメリカで成功する
一 初期の適応と達成
(1)一般的傾向
(2)出身国と達成
(3)親の経済的達成の決定要因――相加効果
(4)親の経済的達成の決定要因――相互効果
二 出身国と家族構成
三 結論
第五章 移民はアメリカでの生活にどのような展望をもっているか
一 アウラ・リラ・マリン、キューバ出身、五三歳、シングルマザー(一九九四年)
二 パオ・ヤン、ラオス出身のモン族、五七歳、父親(一九九五年)
三 楽観論
四 放任主義
五 向上意欲
六 コミュニティと誇り
七 結論
第六章 ロスト・イン・トランスレーション――言語と新第二世代
一 バイリンガリズム――その過去と現在
二 シャドー・ボクシング――言語変容の神話と現実
(1)一般的傾向
(2)出身国による格差
三 強行軍的文化変容
四 どうすればバイリンガルになれるのか
五 ミラーゲーム――言語教育と文化変容の型
第七章 状況を定義する――移民子弟のエスニック・アイデンティティ
一 帰属の場――移民子弟の複雑な忠誠心
(1)自我の発達
(2)先行研究
二 私は何者なのか――エスニック自己同一化のパターン
(1)エスニック・アイデンティティのシフト
(2)安定性と重要性
(3)出身国でみたエスニック・アイデンティティ
三 私の出自はどこにあるのか――民族・家族・アイデンティティ
四 自己アイデンティティと相関する変数
(1)家族の地位、家族構成、言語
(2)親の自己アイデンティティの影響
(3)地域、学校、差別
五 人種問題
六 エスニック・アイデンティティと人種的アイデンティティの決定要因
七 結論――翻訳の達人から生けるパラドクスへ
第八章 内なるルツボ――第二世代の家族、学校、心理
一 サンディエゴの家族
二 家族の結束、葛藤、変化
三 学校環境と仲間集団
四 心理的健康―自尊感情と抑鬱感情
五 学業重視と学習努力
六 教育目標達成見込み
七 心理社会的適応結果の決定要因
(1)自尊感情と抑鬱
(2)向上意欲
八 結論
第九章 学業の達成と失敗
一 思春期前期の学業成績
(1)予備的考察の結果
(2)ジュニア・ハイスクールにおける学業成績の決定要因
二 思春期後期の学業成績
(1)シニア・ハイスクールにおけるGPAのグレード
(2)時間の経過に伴う変化
(3)学校からのドロップアウト
三 学業成績にみられる二つのパラドクス
(1)東南アジア系アメリカ人
(2)キューバ系アメリカ人
四 結論
第十章 結論――メインストリームのイデオロギーと移民コミュニティの長期展望
一 メインストリームの二つのイデオロギー
二 第三の道――選択型文化変容とバイリンガリズム
三 メキシコ系アメリカ人のケース
四 理論的再検討
(1)時間と文化変容
(2)反発型エスニシティとその影響
訳者による解説
訳者あとがき
付属資料A 移民子弟の縦断的研究――追跡調査質問票
付属資料B 移民子弟の縦断的研究――親を対象とした質問票
付属資料C 多変量解析で用いられた変数――第6章‐第9章
原注
訳注
参照文献
索引
前書きなど
訳者あとがき
本書は、Alejandro Portes and Rubn G. Rumbaut, Legacies: The Story of the Immigrant Second Generation, University of California Press, 2001の全訳である。本書の共著者、アレハンドロ・ポルテスとルベン・G・ルンバウトの履歴と研究業績、ならびに本書の概要については「訳者による解説」を参照していただきたい。
本書は、一九九二年から二〇〇二年にかけて実施された大規模研究プロジェクト「移民子弟の縦断的研究(Children of Immigrants Longitudinal Study)」の成果に基づいている。ただし、本書では初回調査(一九九二年)とその三年後に実施された二回目調査(一九九五年―一九九六年)までの調査結果が分析の対象となっている。調査対象者である思春期の若者たち――サンディエゴとマイアミのジュニア・ハイスクールに通う五〇〇〇名を超える生徒たち――がハイスクールを卒業(あるいはドロップアウト)し、その七年後の青年期を迎えた頃に実施された三回目の調査(二〇〇二年)の分析結果については、「訳者による解説」の注11に挙げた文献を参照されたい。およそ一〇年間におよぶこの大規模研究プロジェクト(以後CILSと略称)の主な対象となったのは、二〇世紀末から二一世紀初頭にかけて、アジア、ラテンアメリカ、カリブ海諸国から毎年アメリカ合衆国に押し寄せてきている大量の新来移民(newcomers)とその子どもたちである。新第二世代(the new second generation)と呼ばれるこれらの若者たちの同化に関する本格的な研究としては、ポルテスとルンバウトのCILSが初めての試みであり、その意味でも本書は合衆国における新来移民第二世代の同化に関する画期的な研究成果として高い評価を受けている。
本書の共著者であるポルテスとルンバウトは、この新第二世代と呼ばれる若者たちの同化が、アメリカ社会の将来にとってきわめて重大かつ実践的な意味をもつと考えていることは、本書の序文にある次の文章から明らかであろう。「この新しいエスニック・グループからなるモザイクが国を活気づけてくれるか、それとも社会問題を劇的に拡大させることになるかは、これら若い移民たちが社会的、経済的にどのような形の適応を経験するかにかかっている。(中略)新しい移民の子どもの数は多く、多様性にも富んでいるため、かれらがどのような適応のプロセスをたどるかによって、アメリカ社会に重大な影響がもたらされることは確実である」(本書二〇頁参照)。
本研究で著者たちがもっとも力を入れて取り組んでいるのは、移民第二世代の子どもの学業達成と教育面での成功の見込みに影響する諸要因は何かという問題である。かれらの学校における適応と学業成績をみれば、かれらが将来二極化された「砂時計型」労働市場で職業機会に恵まれ上昇移動に成功するか、それとも下降同化のプロセスをたどりインナーシティの新たなアンダークラスを形成する結果になるかを予想することは難しくない。本研究によって、学業達成の成功と失敗については明確にパターン化された結果が出されており、さまざまな文化変容の型から移民の親世代が受け入れられた文脈にいたる初期の諸要因が、子ども世代の学業達成に累積的な効果をもっていることが統計学的分析によって見事に明らかにされている。本研究の成果のなかにわれわれは実に多くの示唆に富んだ知見を見出すことができる。その意味で、本書は今後移民子弟の同化と学業達成にかかわる問題を検討する際に欠くことのできない文献となることは間違いない。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。