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オーストラリア先住民の土地権と環境管理 友永 雄吾(著) - 明石書店
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オーストラリア先住民の土地権と環境管理 (オーストラリアセンジュウミンノトチケントカンキョウカンリ)

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発行:明石書店
四六判
264ページ
上製
定価 3,800円+税
ISBN
978-4-7503-3747-0   COPY
ISBN 13
9784750337470   COPY
ISBN 10h
4-7503-3747-1   COPY
ISBN 10
4750337471   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0336  
0:一般 3:全集・双書 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2013年2月
書店発売日
登録日
2013年2月26日
最終更新日
2014年2月4日
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紹介

オーストラリアの先住民集団のひとつ「ヨルタ・ヨルタ」を中心に、彼らが居住・生活する土地権の回復、先住民権原の獲得、その地域の資源・環境管理をめぐる先住民運動の歴史、実情を、現地に居住経験のある著者が調査。先住民以外の地域住民や環境NGOを取り込んだ新しい形の先住民運動の活動を詳細に報告する。

目次

 はじめに

序章
 第1節 本書の目的
 第2節 オーストラリア先住民の研究
 (1)ヨルタ・ヨルタの研究史
 (2)オーストラリアの先住民運動とヨルタ・ヨルタ
 第3節 先住民の土地の権利に関する状況
 (1)アボリジナル土地権
 (2)先住権原
 (3)先住民土地利用協定

第1章 マレー・ゴールバーン地域の小史
 第1節 マレー・ゴールバーン地域の特徴
 第2節 植民のなかのヨルタ・ヨルタ
 (1)ヨルタ・ヨルタをめぐる先住民政策
  a.コランダーク・ステーション
  b.マロガ・ミッション
  c.クメラグンジャ・アボリジナル・リザーブ
  d.リバーサイド・フラット
 第3節 ヨルタ・ヨルタの現状
 (1)ヴィクトリア州北部の地方町とヨルタ・ヨルタ
  a.バルマとクメラグンジャ・アボリジナル・コミュニティ
  b.シェパトンとムループナ
  c.エチューカとニューサウスウェールズ州のモアマ

第2章 ヨルタ・ヨルタの闘争史
 第1節 ヨルタ・ヨルタ権利回復運動
 (1)土地権回復運動のはじまり
 (2)先住民代表機関の形成とヨルタ・ヨルタの役割
  a.オーストラリアン・アボリジニーズ・リーグ
  b.ヴィクトリアン・アボリジニーズ・アドバンスメント・リーグ
  c.クメラグンジャ・ランド・トラストとヨルタ・ヨルタ・ランド・カウンシル
 第2節 ヨルタ・ヨルタ先住権原訴訟
 (1)ヨルタ・ヨルタの土地管理組織
  a.ヨルタ・ヨルタ・トライバル・カウンシル
  b.ヨルタ・ヨルタ・マレー・ゴールバーン河クラン法人
  c.ヨルタ・ヨルタ・ネイション・アボリジナル法人
 (2)16家族集団内での人びとの対立
 (3)ヨルタ・ヨルタと地域住民の調停
 (4)先住権原の消滅
 (5)先住権原訴訟の成果
 第3節 河川流域の資源に関する州政府との共同管理協定
 (1)マレー河流域の資源管理の歴史的背景
  a.ヴィクトリア環境評価委員会の『答申案』と利害関係者からの意見書
  b.環境評価委員会の『審議案』と『答申案』ならびに『答申』にかかわる報道と人びとの語り

第3章 運動の実践とヨルタ・ヨルタの知識
 第1節 バルマ森林における森林管理方法
 第2節 ヨルタ・ヨルタの「文化地図」作成
 (1)先住民ネイションズ
 (2)文化地図の作成目的とその方法
 (3)作成結果とその活用

第4章 資源管理のための先住民運動
 第1節 ネットワークの形成とその展開
 (1)運動を推進する2つの主体
  a. ヨルタ・ヨルタと環境NGO
  b. バンガロンと地域住民
 (2)ヨルタ・ヨルタの運動ネットワークの形成
  a. 広域的ネットワーク
  b. 局地的ネットワーク
 (3)親族の系譜と運動イデオロギーの系譜
  a. エイダ・クーパー家族集団と社会関係資本
  b. バゴット・モーガンとエリザベス・アトキンソン家族集団と社会関係資本
  c. エドガー・アトキンソン家族集団と社会関係資本
 (4)ネットワーク形成からみえてくる先住民運動
 第2節 ヨルタ・ヨルタの伝統知と運動
 (1)文化地図における意味

終章 普遍性の主張と差異の承認をめぐる先住民運動

 参考文献
 あとがき

前書きなど

はじめに

 (…前略…)

 この本は、次のような構成をなしている。まず序章では、オーストラリア先住民と非先住民の関係に関する先行研究を整理し展望する。ここではこれまでの先住民と非先住民の関係に関する研究では一方がもう一方に取り込まれたり、または対抗するといった二項関係のみに焦点が当てられ、双方が相互に変化する関係を取り扱った研究がほとんどないことを指摘する。さらに土地に関する権利状況を説明し、1970年代からの立法措置の時代から1998年以降の交渉による制度改革の時代へと移行するなかで、そこに生じる現代的課題が変化していることを明らかにする。そして、その交渉を進める先住民の代表組織について整理検討を加え、先住民と非先住民との相互に変化する関係について考察することの重要性を指摘する。
 つづく第1章「マレー・ゴールバーン地域の小史」では、ヨルタ・ヨルタの被植民化の歴史を概観した後、彼/彼女らが現在おかれている実態、ことに就労形態と住宅状況から生まれる地域格差、さらに地域内での相互扶助と地域外との交流について、国勢調査資料やフィールドワークのデータにもとづいて検討する。
 第2章「ヨルタ・ヨルタの闘争史」では、運動の担い手であるヨルタ・ヨルタの土地権回復や先住権原承認のための闘いの経緯を記述する。さらに、1970年代はじめから活発化するバルマ森林と湿地を含むマレー河流域の環境管理についてのオーストラリア社会の側の動向を、ヴィクトリア州政府より出された森と川の生態系を調査した報告書によって明らかにする。同時にヨルタ・ヨルタについては、1999年に結成された水域資源の利用や管理のためのマレー河とダーリング河下流域における先住民ネイションズ(Murray Lower Daring Rivers Indigenous Nations)、2004年にヨルタ・ヨルタとヴィクトリア州政府の間で結ばれたマレー河流域の資源に関する共同管理協定(Cooperative Management Agreement between the Yorta Yorta Nation Aboriginal Corporation and the State of Victoria)とヴィクトリア環境評価委員会(Victorian Environment Assessment Council)より提出されたリバー・レッド・ガム森林の状態を調査した『答申案』と『答申』にもとづいて、ヨルタ・ヨルタとその他のさまざまな利害関係者との間の関係を検討する。その際ヨルタ・ヨルタ、地域住民、環境NGOからの意見書、さらに州政府からの報告書、また地方新聞に掲載されたさまざまな立場からの多様な意見によりつつ、森と河川流域の環境管理をめぐるそれぞれの考え方や人びとの関係を分析する。それはすなわち、ヨルタ・ヨルタの土地をめぐる運動が環境管理をとりこむことによって、複数の個人や集団の相互作用のなかで展開される運動となっていることを明らかにすることである。
 こうした運動プロセスとその参加者の相互関係に関するこの章での考察に加え、つづく第3章「運動の実践とヨルタ・ヨルタの知識」ではヨルタ・ヨルタの運動の実践を「森林管理方法モニタリング」と「土地利用と占有に関する地図」の作成を事例に詳述する。
 第4章「資源管理のための先住民運動」では、まずヨルタ・ヨルタの運動を推進する2つの様態、1)地域住民との連携、2)都市知識人と国際・国内環境NGOとの連携を明らかにする。ついで、その運動を推進するヨルタ・ヨルタの組織が、社会的、政治的、経済的にどのような効果をオーストラリア社会にもたらしているかを考察する。そこで立ち現れるのは、ヨルタ・ヨルタの出自にもとづくそれぞれの系譜が、これら2 つの運動を推進するヨルタ・ヨルタのイデオロギーの系譜に歴史的、構造的に重なり合うあり方である。その要因を「社会関係資本」という概念を用いて考察する。
 最終章では、これまで論じてきたことを総括し結論を述べる。
 こうしてこの本では、土地にかかわる正義の回復をめざしたヨルタ・ヨルタの環境管理のための運動が、いわゆる先住民運動の枠組みを超えた運動であることが明らかになる。そのことによって、ヨルタ・ヨルタのこの運動が先住民と非先住民の二項対立ではなく、地域住民や環境NGOをもとりこんだあたらしい構造をもつものへと変化してきたことが立証されることになる。

 (…後略…)

著者プロフィール

友永 雄吾  (トモナガ ユウゴ)  (

1975年生まれ。現在、国立民族学博物館・外来研究員。総合研究大学院大学文化科学研究科にて地域文化学を専攻、博士(文学)を取得。佛教大学・大阪産業大学・大阪学院大学ほか兼任講師。
論文に、「オーストラリア先住民における教育実践:南東部アボリジナルの先住民特別教育プログラムを事例に」(『研究紀要』17号、世界人権問題研究センター、pp.259-277、2012年)。「オーストラリア南東部の資源管理をめぐる歴史的変容:マレー川流域の先住民ヨルタ・ヨルタの先住民運動を事例に」(『オーストラリア研究』24号、オーストラリア学会、2011年)。‘The Yorta Yorta Movement for the Land and Water Management in the South East Australia’『オーストラリア研究紀要』36号、追手門学院大学オーストラリア研究所、2010年ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。