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肉声でつづる民衆のアメリカ史 上巻 ハワード・ジン(編) - 明石書店
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肉声でつづる民衆のアメリカ史 上巻 (ニクセイデツヅルミンシュウノアメリカシジョウカン)
原書: Voices of a People's History of the United States

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発行:明石書店
四六判
720ページ
上製
定価 9,300円+税
ISBN
978-4-7503-3617-6   COPY
ISBN 13
9784750336176   COPY
ISBN 10h
4-7503-3617-3   COPY
ISBN 10
4750336173   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0322  
0:一般 3:全集・双書 22:外国歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2012年6月
書店発売日
登録日
2012年6月26日
最終更新日
2012年8月31日
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紹介

支配する側からではなく民衆の視点に貫かれた名著『民衆のアメリカ史』の元になった民衆の肉声を伝える手紙、演説、文学作品……。ときに権力の横暴や戦争に対して怒り、ときに民衆同士の心温まる交流を語る珠玉のアンソロジー。コロンブスから1930年代まで。

目次

 序文

第1章 コロンブスとラス・カサス
第2章 初期の奴隷制と奴隷の反乱
第3章 植民地における年季奉公人の、隷属と反乱
第4章 アメリカ独立革命への道
第6章 初期の女性解放運動
第7章 インディアン強制移住
第8章 奴隷州を拡大するためのメキシコ戦争
第9章 奴隷制にたいする抵抗と反乱
第10章 南北戦争と階級闘争
第11章 南北戦争後のうわべの繁栄、貧困化に反撃する民衆、そして人民党の結成
第12章 帝国の拡大は神から与えられた「明白なる使命」
第13章 社会主義者と世界産業労働者組合
第14章 第一次世界大戦にたいする抵抗と反戦運動
第15章 ジャズ・エイジと一九三〇年代の民衆蜂起

 出典一覧
 索引

前書きなど

序文

 (…前略…)

 一九七〇年代後半に『民衆のアメリカ史』を書こうと決心したときには、私はすでに二〇年も歴史を教えていた。前半の一〇年間は、ジョージア州アトランタにある黒人女性の大学スペルマン・カレッジで教鞭をとり、そのとき南部の公民権運動に参加した。後半の一〇年間は、ベトナム戦争に反対して活動した。このような経験から学んだことは、歴史を教えたり書いたりする際に、中立などというものはないということであった。
 しかし、私の党派心が形成されたのは、それより前のことだった。私はニューヨークの労働者階級の家庭で育ち、一八歳から三年間、造船労働者として働いた。第二次世界大戦が始まると、爆撃手としてイギリスから飛び立ち、フランスの大西洋岸をふくむヨーロッパ各地の目標に爆弾を投下した。そうした経験が私の党派心を形成した。
 戦後、私は復員軍人援護法で大学に入った。それは、何百万人もの退役兵士を授業料なしで大学に通えるようにした戦時立法のひとつである。そのおかげで、ふつうなら大学教育を受けることができないような、労働者階級の出身者でも、大学教育が受けられた。
 そして、コロンビア大学で歴史学の博士号を取得したが、私自身のそれまでの経験と学習から、大学で教わった歴史には、決定的要素が欠けていることを発見した。
 教育と著述を始めたときから、視点をはぐらかす「客観性」という幻想を拒否しようと思った。歴史家であれジャーナリストであれ、歴史を語るひとなら誰でも、無限にある事実のなかから、何を提示し、何を省略するかを、選択せざるをえない。しかもその決定は、意識的であろうが無意識であろうが、その歴史家の関心を不可避的に反映する。
 アメリカの教育者や政治家のなかには、学生は事実を知らなければならないと主張するものがいる。私はチャールズ・ディケンズの本『困難な時代』に出てくる冷酷な校長のトマス・グラッドグラインドのことを思い出す。彼は若い教師にこう諭さとす。「おい、事実だけを教えてやってくれ。この学校の子どもらに『事実』以外のことは教えてくれるな。この世で必要なのは事実だけだからな」
 しかし、解釈と無縁の純粋な事実などというものは存在しない。教師や著作家などが世間に提示したあらゆる事実の背後には、判断がある。この事実は重要だという判断を下し、ほかの事実は重要でないから省くという判断を下しているのである。
 私にとってはきわめて重要な話題が、アメリカ文化を支配している正統的な歴史書に欠落していることに、あるとき私は気づいた。このような欠落の結果、過去についての歪んだ見方が与えられる。さらに重要なことには、現在について、我々を誤った方向に導く。

 (…中略…)

 本書『肉声でつづる民衆のアメリカ史』に結実したこの仕事を五年前に始めたとき、私は、わが国の歴史書に書かれていない「もがき」と苦闘、「あがき」と肉声が、しかるべき場を与えられるべきだと思った。何十年も、何世紀にもわたって、人間の尊厳を求めて前進する闘いの場となった労働運動史を、歴史の前面に押し出したいと願った。また、最も勇敢でかつ最も効果的な政治行動が歴史上の決定的瞬間を迎えたとき、それは人間の声そのものの、高らかな響きであったことを、読者の皆さんに実感していただきたいと願った。ジョン・ブラウンが裁判の場で、自分の反乱は「間違いどころか、正しいことだ」と言明したとき、また、選挙人登録をしようとした黒人に襲いかかった危険について、ファニー・ルー・ヘイマーが一九六四年に証言したとき、さらに、一九九一年の第一次湾岸戦争中に、アレックス・モルナールが息子とすべてのひとのために大統領に公然と抗議したとき、この人々のことばは、多くの人々に巨大な影響と希望を与えた。そのことばは、単なることばではなく、行動そのものであった。
 このような抵抗の声を無視したり見くびったりするのは、「権力とは、銃をもつひと、富をもつひと、新聞社やテレビ局をもつひとの自由のことだ」という考え方をつくりだすのに等しい。私が指摘したいのは、権力を全くもたないように見える民衆が、労働者・有色人・女性を問わず、ひとたび組織をつくり、抗議の声をあげ、運動を創造し、発言権をもつと、どんな政府であろうと、抑えこむことなどできないということである。

著者プロフィール

ハワード・ジン  (ジン,ハワード)  (

ボストン大学名誉教授.歴史学者,社会評論家,劇作家として活躍.2010年1月27日に死去(87歳).『民衆のアメリカ史』(明石書店,2005)は世界中で200万部を超えるベストセラーになった.同書および本書『肉声でつづる民衆のアメリカ史』をもとにして作成されたドキュメンタリー映画The People Speakは,ケーブルテレビ局HISTORYで放映され,各紙からも賞賛を浴びた.邦訳書としては他に,『爆撃』(岩波書店,2010),『学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史』(あすなろ書房,2009),『テロリズムと戦争』(大月書店,2003),『アメリカ同時代史』(明石書店,1997),『甦(よみがえ)れ独立宣言』(人文書院,1993),戯曲『ソーホーのマルクス』(こぶし書房,2002)などがある.

アンソニー・アーノブ  (アーノブ,アンソニー)  (

作家,活動家,フリーの編集者で,ノーム・チョムスキーやハワード・ジンの著作権代理人としても知られている.著作には,Iraq: The Logic of Withdrawal,編著にはIraq Under Siege およびThe Essential Noam Chomsky がある.またハワード・ジンと一緒に本書『肉声でつづる民衆のアメリカ史』を編集しただけでなく,ハワード・ジンやクリス・ムーアと協力して,ドキュメンタリー映画The People Speak を制作した.

寺島 隆吉  (テラシマ タカヨシ)  (

東京大学教養学部教養学科(科学史・科学哲学)卒業.元岐阜大学教育学部(英語教育講座)教授.現在,英語教育応用記号論研究会(JAASET,略称「記号研」)代表および国際教育総合文化研究所所長.岐阜大学在職中に,コロンビア大学,カリフォルニア大学バークリー校,サザンカリフォルニア大学客員研究員,カリフォルニア州立大学ヘイワード校日本語講師などを歴任.『英語教育が亡びるとき』(明石書店,2009),『英語教育原論』(明石書店,2007)など多くの著書があり,『チョムスキーの教育論』(明石書店,2006),『チョムスキー21 世紀の帝国アメリカを語る』(明石書店,2004),『衝突を超えて――9・11後の世界秩序』(監修・共訳,日本経済評論社,2003)などの訳書がある.

寺島 美紀子  (テラシマ ミキコ)  (

津田塾大学学芸学部国際関係論学科卒業.朝日大学経営学部教授.『ロックで読むアメリカ――翻訳ロック歌詞はこのままでよいか?』(近代文芸社,1996),『英語学力への挑戦――走り出したら止まらない生徒たち』(三友社出版,1987),『英語授業への挑戦――見えない学力・見える学力・人間の発達』(三友社出版,1990),『英語「直読直解」への挑戦』(あすなろ社,2002)など多くの著書があり,共訳書に『チョムスキーの教育論』(明石書店,2006),『衝突を超えて――9・11後の世界秩序』(日本経済評論社,2003年度日本図書館協会選定図書)などがある.

上記内容は本書刊行時のものです。