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持続性学
自然と文明の未来バランス
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2010年3月
- 書店発売日
- 2010年3月24日
- 登録日
- 2010年5月12日
- 最終更新日
- 2010年5月12日
紹介
名古屋大学で行われたシンポジウム「私たちは人間生活と環境の未来を構想できるのか?」をもとに、国内外第一線の研究者たちが理科系・人文社会系の枠を超えた「持続性学」の確立へ向け、地球環境の問題と持続可能な社会について考察した論集。
目次
本書の刊行によせて(平野眞一:前名古屋大学総長/現独立行政法人大学評価・学位授与機構長)
序章:私たちは人間生活と環境の未来を構想できるのか?(林良嗣:シンポジウム実行委員長)
〈第1部「持続可能な自然人間関係」〉
第1章:20世紀型文明の行方「脱石油戦略」を考える(石井吉徳)
有限の地球
石油文明の翳り
ゴミも資源、ではない
石油発見量の歴史的変遷
石油ピーク
石油減耗のインパクト
資源とは
プランB:脱石油戦略
第2章:持続可能なエネルギー利用(ハンスペーター・デュール)
地球・太陽・宇宙
利用可能なエネルギー、シントロピー
資源を「強盗する」人間
不安定なバイオシステム
バイオシステムの動的な持続
価値の創造:自然vs経済
有限な資源、エネルギー
エネルギースレイブ
不平等な分配
許されるエネルギー使用量
進むべき道:高次の精神性に立った協力
資源
利用効率
満ち足りた生活
第3章:環境考古学からみた持続可能性(安田喜憲)
花粉分析
何を食べるかが運命の別れ道
森を破壊し尽くした畑作牧畜民
森と水の循環系を守った稲作漁撈民
山を崇拝する心
利他の心と慈悲の心を醸成
生命の連鎖をつなぐ
森を破壊して崩壊したモアイの文明
稲作漁撈民の日本モデル
地球と人類を救う愛の形
第4章:伝統的自然観・倫理観の再評価(川田稔)
はじめに:日本人の生活圏
環境を守る自然観・倫理観
伝統的な世代間倫理
自然観、倫理観と信仰
氏神信仰と先祖、子孫
子孫を見守る生きがい
神のいる山、神が憑依する自然
近代化に伴う価値観の変化
伝統的地域村落の「冷たい」循環型社会
資源消費型生活の問題点
豊かな生活とは
〈第2部「国家間の環境コンフリクト」〉
第5章:アジアにおける黄砂と大気汚染(岩坂泰信)
日本における黄砂の研究
トレーサーとしての黄砂、反応する黄砂
黄砂の観測・追跡
ライダーで観測された黄砂
地球環境変動と黄砂
新たなステージ:国際共同研究への展開
黄砂の現地採集
黄砂採集地と化学的な成分
アジア国家協力体制の構築
第6章:EUにおける自動車への環境課金(ウェルナー・ローテンガッター)
はじめに
国ごとに異なる通行料金の徴収方法
通行料金徴収システム
環境に配慮した料金制度の設計
EUの自動車排出ガス規制
ドイツの事例
課金政策の決定プロセス
国家間のコンフリクト
〈第3部「21世紀における環境バランスとコンフリクト」〉
パネルディスカッション
座長:中西久枝
指定討論者:ヤン・ドンユェン、リー・シッパー、児玉逸雄
パネリスト:石井吉徳、ハンスペーター・デュール、安田喜憲、川田稔、岩坂泰信、ウェルナー・ローテンガッター、林良嗣
指定討論者報告1(ヤン・ドンユェン)
指定討論者報告2(リー・シッパー)
指定討論者報告3(児玉逸雄)
質疑応答
おわりに(黒田達朗:名古屋大学大学院環境学研究科教授・元研究科長)
付録 英文要旨
執筆者紹介
前書きなど
本書の刊行によせて(平野眞一:前名古屋大学総長・現独立行政法人大学評価・学位授与機構長)
本書は、私が総長を務めていた2005年8月6日に名古屋大学大学院環境学研究科が開催した、万博記念・環境学シンポジウムをもとに編集されたものです。
伝統的な学問領域に対応した研究科のみならず、環境と国際開発に関する教育研究組織が充実していることが、名古屋大学の大きな特徴です。環境関係では、大気水圏環境科学研究所(現地球水循環センター)、環境医学研究所、太陽地球環境研究所、大学院環境学研究科、エコトピア科学研究所を設立してきました。
環境学研究科は、わが国で最も初期の文理融合型研究科として2001年4月に設立されました。理学、工学、人文科学の分野から約130名の教員と約500名の大学院生が集まって、地球環境科学専攻、都市環境学専攻、社会環境学専攻の3つの専攻を構成しています。研究科設立理念の下に、これらの分野が融合することによって初めて成り立つ新しい横断的学問分野として、「持続性学」と「安全安心学」を両輪に据え、その学理構築に取り組んでいます。
環境学研究科の「持続性学プロジェクト」には、オゾンホール・黄砂などの大気環境グループ、太陽・地球・生命圏相互作用系の変動学グループ、メコンデルタ流域の環境災害モニタリンググループ、中国黄河流域の環境管理グループ、土地利用・交通と環境政策グループ、土壌汚染対策グループ、市民参加・合意形成グループなど、日本および世界の研究の中心として活動しているグループがあります。「安全安心学プロジェクト」では、地震・津波など災害の解明、被害調査、市民参画に関する教育研究を進めています。国際的な活動とともに、地元地域の災害対策を市民と連携して推進しています。
本書のもととなった万博記念・環境学シンポジウムは、「私たちは人間生活と環境の未来を構想できるのか?」をメインテーマに、国内外第一級の学者を招聘して、持続性について討論を行ったものです。ご登壇いただいた先生方から、持続性の理念確立と実現に向けた卓越した知見をいただきました。また、ご講演をもとに、持続可能な社会、人間と環境の未来について、参加くださった皆様とともに議論を行いました。
本書が、今世界の必要としている持続性学構築のマイルストーンとなることを祈念してやみません。
上記内容は本書刊行時のものです。