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現代の理論 09春号[vol.19]
特集 強欲資本主義からの訣別
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2009年4月
- 書店発売日
- 2009年4月14日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2012年1月20日
紹介
資本主義はなぜ自壊したか。サブプライムローンの金融商品化とは、居酒屋のつけを祝儀袋にまとめて売りさばくような錬金術だった。結果がわかってしまえばあまりにバカげたゲームに、なぜ世界が狂奔したのか。どのような回復の道筋があるのかを多角的に論じる。
目次
特集のことば
特集○強欲資本主義からの訣別
日本再生の道はこれだ(榊原英資:早稲田大学教授)
グローバルにみた政権交代後の政策課題(住沢博紀:日本女子大学教授)
対談◎民主党の政治構想力を問う(山谷由人:民主党元政調会長×山口二郎:北海道大学教授)
グリーン・ニューディール政策は世界を救えるか(松下和夫:京都大学教授)
非正規労働者をどう救うべきか(濱口桂一郎:労働政策研究・研修機構統括研究員)
格差拡大と「新しい階級社会」(橋本健二:武蔵大学教員)
相互扶助と自治の復権を(千本秀樹:筑波大学教授)
「知の持続可能性」への不安(後藤邦夫:NPO法人学術研究ネット)
世界同時不況の突破口(叶芳和:帝京平成大学教授)
誰が犠牲羊に?(朴権一)
ある視角○世界金融危機の顛末と余波(宮原卓一:ジャーナリスト)
警世閑話○日本よ、世界の「新しい現実」に直面せよ(久保孝雄:アジア・サイエンスパーク協会名誉会長)
メディア時評○政権交代が試されている(喜多村俊樹:ジャーナリスト)
この一冊○『東京裁判 第二次世界大戦後の法と正義の追求』戸谷由麻著(橘川俊忠:神奈川大学教授)
○『ハリウッドの密告者――1950年代アメリカ』V・S・ナヴァスキー著(黒田貴史:本誌編集委員)
○『障害者はどう生きてきたか――戦前・戦後障害者運動史』杉本章著(小林敏昭:「そよ風のように街に出よう」副編集長)
深層○揺れる立命館大学(本誌編集部)
発信○今こそ若者たちに労働・社会教育を(笹尾達朗:NPOあったかサポート常務理事)
連載○労働者の明日を探る・第一回 結成二〇年――連合に未来はあるか
社会運動としての連合再生を(笹森清:前連合会長)
連合よ、正しく強かれ(要宏輝:元連合大阪副会長)
国際比較の視点から見た連合運動
「中東和平」は絶望ではない(金子敦郎:国際問題ジャーナリスト)
グラムシの恐慌論と新市民(片桐薫:グラムシ研究)
このままでいいのか裁判員制度(石田省三郎:弁護士)
なぜ食の安全を脅かす事件が続出するか(榊田みどり:農業ジャーナリスト)
09夏号(VOL.20)予告
編集後記
前書きなど
特集のことば 文明史的視野を
今、世界は大恐慌の恐怖におののいている。アメリカの金融危機に端を発し世界同時不況の波は、比較的影響が小さいといわれていた日本をも例外とすることなく、大波となっておそいかかってきた。生産は縮小し、失業は増大する状況は、一向に改善する兆しをみせない。
この危機の元凶は、アメリカの金融業界を発信源とするマルチ商法まがいの金融マネーゲームとアメリカ的市場原理主義の地球的拡大を狙うグローバリゼーションにあることは間違いない。人間にとって有能な財・物を生産し、流通させるという本来のあり方を忘れ、マネーゲームの中で利益の極大化を追求する強欲資本主義が横行することになったのだ。その結果、格差は拡大し、新たな貧困が生まれ、社会の紐帯すらも破壊されるにいたった。この強欲資本主義がもたらした未曾有の危機に、どう立ち向かうべきか。
一九三〇年代、世界恐慌から脱出するために様々な試みがなされた。しかし、結局、世界は第二次世界大戦という人類史上最悪の悲惨を避けることができなかった。今、同じ轍を踏むことはできない。それは人類の完全なる破滅を意味するからだ。かつて試みられた景気回復のための金融・財政政策は、どれも効果は限定され、決定打とはとはなりえないことが明らかになった。強欲資本主義が荒らし回った廃墟からの回復には、小手先の政策対応ではなく、文明史的視野に立った根本的な社会の再建策が求められている。
本号では、世界同時不況からの脱出策として、また、貧困・格差問題への対応策として、緊急の政策課題を提起すると同時に、より根本的な改革のヴィジョンを示そうとした。さらに、あまりに低劣な政治の現状に対して、政治の構想力を回復させる可能性がどこにあるかを探ろうとした。未だ明確な筋道を体系的に提示するまでに至っていないとしても、日本再生のために進むべき方向性は明らかにしえた。
どんなに暗い予兆にさいなまれようとも、後戻りはできない。方向を見定め、前進あるのみ。危機をチャンスに変える知性を奮い起こそうではないか。
上記内容は本書刊行時のものです。