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現代の理論 08夏号 vol.16
特集 境界線と現代政治の再構成
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2008年7月
- 書店発売日
- 2008年7月9日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2012年2月1日
紹介
国境、民族、エスニシティ、ジェンダー、世代…。現代政治をめぐって、さまざまな境界線が引かれ、あちらとこちらに分けられた集団をめぐる綱引きが続く。現代日本でいかなる境界線が引かれ、どのような対立、駆け引き、対話、融和があるのか。その行方を探る。
目次
特集のことば
特集 境界紀と現代政治の再構成
政治と境界線をめぐって(杉田敦:法政大学教授)
対談 国境線を越えた新たな連帯の可能性(姜尚中:東京大学院教授×杉田敦)
デモクラシーと差異(山口二郎:北海道大学教授)
小沢民主党と政権交代への権力論的アプローチ(住沢博紀:日本女子大学教授)
現代日本の平等と政治(宇野重規:東京大学準教授)
欧州近隣諸国政策における「暖昧性」の役割(蓮見雄:立正大学教授)
境界線を越えた“後”の政治学(大賀哲:九州大学準教授)
ジェンダーと政治(江原由美子:首都大学東京大学院教授)
境界線上の沖縄(比屋根照夫:琉球大学名誉教授)
境界をまたぐ人びと(金敬黙:中京大学准教授)
求められる発想の柔軟性(橘川俊忠:神奈川大学教授)
[ある視角]
辱めを雪ぐ~日本最大の冤罪〈大逆事件〉からまもなく百年(西村秀樹:ジャーナリスト)
[世界の定点観測]ワシントンから
「政権交代」と「移民政策」で復元力を維持するアメリカ(若林秀樹:CSIS客員研究員)
[文化時評]
フットボールと小説の「根源的愉しみ」(陣野俊史:批評家)
[深層]
宮中晩餐会報道がかすみはじめた?! (千本秀樹:本誌日集委員)
[現代と思想家]
「女」を「言語化」しつづけた羅◆錫という朝鮮女性(朴宣美:筑波大学講師)
[警世閑話]
若者へ、協同組合への誘い(小塚尚男:生活クラブ生協神奈川顧問)
[想うがままに]
忘れがたき人②山六さん、原全さん、そしてお雪さん(小寺山康雄:本誌編集委員)
[この一冊]
『中国の社会階層と貧富の格差』李強著(王維亭:千葉大学大学院生)
『正義の労働運動ふたたび』要宏輝著(小畑精武:本誌編集委員)
『南京大虐殺記憶の暗殺』内山薫著(先代俊三:本誌編集委員
済州島一九四八、地の底の記憶に触れる(金石範:作家)
マルチチユードは「代表=表象」されうるか(谷本純一:法政大学非常勤講師)
「日本の伝統・文化」理解教育の持つ問題性(田中恵:大学非常勤講師)
市民自治と団体自治(井下田猛:姫路獨協大学名誉教授)
スラム共同体から市民共同体へ(原田金一郎:大阪経済法科大学教授)
08秋号(VOL.17)予告
編集後記
(◆=草冠に恵)
前書きなど
特集のことば
一年前の二〇〇七年七月、参議院選挙で与野党が逆転してから、日々の政治は政権交代を前提にさまざまな均衡状態が生まれている。ふと考えてみることがある。現在の小沢民主党がマニフェストに掲げる三つの約束、「税による基礎年金の保障」「二万六〇〇〇円の児童手当」「農家の個別所得保障制度」、これらは自民党単独政権時代では不可能であったのだろうか。
小沢一郎は、一九九一年海部内閣総辞職のあと、首相になろうと思えばなれたといわれる。もちろんこれらの政策は、年金だけ見ても非常に大事業であり、一内閣の命運を左右するだろう。しかし社会党村山党首を首相に担いだ自民党である。派閥抗争とその権力へのエネルギーを振り返ると、できたかもしれないと思う。するとこの一五年間の政治改革は何であったのだろうか。
もちろん政治の世界において、権力の交代が無意味なはずがない。そうであれば、それ自体で目的とされる政権交代とは何か、という問いを私たちは今こそ立てなければならない。それは、境界線を新しく設定し、自らの権力構造を新しく規定するという、政治の核心に迫る問題である。政権交代との関連でいえば、政策体系選択アプローチと区別される、権力論的アプローチといえる。
本号の特集は、『現代の理論』編集委員会と、『境界線の政治学』を著した杉田敦の共同作業といえる。境界線をめぐる「現代思想」のさまざまなディスコースから刺激を受けつつ、本誌にふさわしく現実政治の領域でテーマを設定した。EU統合と境界線、グローバル化と主権国家の現在、東アジアにおけるナショナリズム、沖縄と朝鮮半島、デモクラシー、市民社会やジェンダーの境界線の新しい課題、そしてもちろん政権交代の権力論そのもの。おそらく政治的権力と境界線をこのような多様な視点から議論する初めての試みであると自負している。本号の特集では山口二郎、姜尚中、宇野重規、蓮見雄、大賀哲、比屋根照夫、金敬黙のかたがたに初めて寄稿していただいた。『現代の理論』はその名にふさわしく、左翼リベラル誌として評価できる、優れた執筆者に新しく寄稿していただくことが、この雑誌の使命であると考えている。
上記内容は本書刊行時のものです。