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グローバル化時代を生きる世代間交流
原書: LINKING LIFETIMES: A Global View of Intergenerational Exchange
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2008年5月
- 書店発売日
- 2008年5月21日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
高齢化と都市化の世界的な浸透によって焦眉の問題として認識され出した「世代間交流」について、その概念や課題、また各国の状況を論じた英書の翻訳。ヘルスケア、教育、財政、社会的支援システム、文化の継承など多岐にわたり、世代間の社会協約を脅かす要因と国の対策、支援プログラムなどを追究している。
目次
日本語版に寄せて
刊行にあたって
執筆者
謝辞
序文
第1部 概念的問題
第1章 世代間交流イニシアチブの異文化間比較の概念的枠組み(マシュー・S・カプラン、ナンシー・Z・ヘンケン、草野篤子)
第2章 東西文化を超えた世代間の固定観念への挑戦(ハワード・ガイルズ、ロバート・M・マッキャン、太田浩司、キンバリー・A・ノエルズ)
第3章 ボランティア活動を通じ世代間の絆を強める:グローバルな視点より(アン・オサリヴァン)
第4章 諺を使って文化を超えた世代間のつながりを探る(マシュー・S・カプラン)
第2部 国家、地域的概観
北アメリカ
第5章 アメリカにおける世代間交流の課題を進めて(ナンシー・ヘンケン、ドナ・バッツ)
第6章 カナダ先住民族パートナーシップ・プログラムにおける世代間交流の指導と学習(ジェシカ・ボール、アラン・ペンス、マルティナ・ピエール、ヴァレリー・ク-ン)
第7章 ハワイにおける世代間交流プログラムとその可能性(マシュー・S・カプラン、ジョセフ・W・ラピリオ3世)
太平洋・アジア地域
第8章 シンガポールにおける世代間交流イニシアチブ:地域共同体と家族形成への関心(リン・リン・タン)
第9章 マーシャル諸島における世代間交流のプログラムその実践:文化継承とのかかわり合い(ヒルダ・C・ハイン)
第10章 日本における世代間交流プログラム:家族統合の象徴的拡大(マシュー・S・カプラン、リン・リン・タン)
ヨーロッパ
第11章 オランダにおける世代間交流地域共同体の構築(キース・ペニンクス)
第12章 イギリスにおける世代間の協約:包括的地域共同体創設の枠組み(ジリアン・グランヴィル、アラン・ハットン-イオ)
第13章 ドイツ人学生とユダヤ人高齢者:歴史を癒す枠組みとしての世代間の対話(大迫俊夫)
中南米諸国
第14章 中南米諸国とカリブ人にみられる世代間のつながり(マーサ・ペレーズ)
第15章 キューバ:世代間交流芸術運動の豊かな下地(スーザン・パールスタイン)
南アフリカ共和国
第16章 南アフリカ共和国における世代間交流のイニシアチブ:過渡期にある社会を考え、それを支援する(キャシー・ガッシュ)
第3部 組織すべき時
第17章 国家レベルでの組織:アメリカと日本から学ぶ教訓(ドナ・M・バッツ、草野篤子)
第18章 国際世代間交流プログラムコンソーシアムの創設(サリー・ニューマン)
訳者あとがき
参考文献
索引
前書きなど
日本語版に寄せて
世代間交流の動きは、成長期に達しつつある。私たちは世代間交流のプログラムと実践が、高齢者と子供のケアの必要性、教育システムの強化、退職者の生活を豊かなものにすること、祖父母と孫の関係の改善、環境に対する意識と関心の向上、人々の文化に対するプライドとその継承感を強固なものにすることといった広範囲にわたる目的に取り組むために案出される大きな改革を目撃し続けることになるのである。
私たちはまたこの動きの国際的な結びつきが深まっていくのを目撃するのである。多くの国々では、政府機関は、子供、大人、家族、コミュニティーに対するサービスを創出し、それらを実行するのに世代間交流のアプローチを必要とする政策を確立している。例えばアメリカでは、多世代にわたって地域共同体が関与する子供のケアと若者デイ・ケア、図書館や学校における活動を実施する非営利組織に対して、実施許可を認める条項が、最近、高齢アメリカ人法Older Americans Act(2007)に加えられている。シンガポールでは、地域社会開発、若者とスポーツ省the Ministry of Community Development, Youth and Sports が、全国的に世代間交流の概念を促進し、革新的なプログラムに資金提供を行うのに重要な仕事を担う祖父母の役割を果たし世代間をつなぐGrandparenting and Intergenerational Bonding(2002-2006)活動に関するプロジェクトチームを立ちあげた。そして日本では、2002 年に導入された総合的学習の時間(Period of Integrated Study)のような文部科学省の最近の政策によって、高齢者が学校を基盤としたカリキュラムに貢献し、放課後活動に参加する新しい機会を創出している。
国連もまた世代間の関係について世界規模の関心を促進するのに、大きな役割を果たしてきている。国連が1999 年を国際高齢者年the International Year of Older Persons とした時、多世代の関係が4 つの基本概念の1 つであり、また「すべての世代のための社会へ向けてToward a Society for All Ages」が、多くの地域レベルにおける集まりのサブテーマとして選ばれたのである。世代間のテーマはまた、「加齢に関する第2 回世界大会Second World Assembly on Ageing」(2002 年4 月、マドリードにおいて)、国際若者の日International Youth Day(2004 年のテーマは、「世代間が交流する社会における若者Youth in an Intergenerational Society であった」)、そして2007 年、「世代間の連帯:経済的、社会的結びつきを強めるIntergenerational Solidarity: Strengthening Economic and Social Ties」と題されてニューヨークで開催された専門家グループの集まりなどのような国連のその他の集まりにおいても、中心となるテーマとなってきた。
確かに、それぞれの国の世代間交流の試みは、固有の文化的価値観、社会的関心、公共政策の方向性を反映するものである。しかしまた、地理的なものと文化背景を越えて捉えられ、理解され、そして認められるような世代間交流立案の試みを越えたいくつかの基本的なテーマがあるのである。
国家の枠を越えて、世代間交流の立案と実践を眺めると、それらが力点をおくものの中に、共通したものがあることがわかる。これらは参加者が、
1. それぞれの生活経験と知識を分かち合い、
2. 関係を作り出し、それを維持し、
3. 共同体の関心を分かち合い、それに従って行動し、
4. 文化継承の意識を分かち合い、それを強固なものにする
といった点である。
世代間交流のプログラムは、それがどんな場所のものであろうと、人々の生活において意義ある関係を築くことに関したものなのである。文化を越えて、人間は社会的動物であること、そして他の人間とつながりを持つという中心となるニーズを持つものであるという事実にかわりはない。勿論、「意義ある」とされるものには、文化的、社会的背景によって違いがある。例えば祖父母と孫の関係は、ケアの受給、「家族」というものを定義したり賛美したりすること、また一緒に過ごしたりするのに、規範、伝統、儀式に応じて種々様々なものがある。
世代間交流プログラムの試みが、地理的、文化的背景を越えてどう捉えられ、理解され、評価されるのかという点にもっと関心を引きつけることで、本書が世代間の対話とまとまりを促進するために、私たちそれぞれの試みを周知させる一助となり、一般的な理解を得るのに寄与するものとなることを願うものである。
マシュー・カプラン/ナンシー・ヘンケン
上記内容は本書刊行時のものです。