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現代ドイツ企業の管理層職員の形成と変容
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2008年2月
- 書店発売日
- 2008年2月27日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
現代ドイツ企業変革史を、ドイツ企業と組織変革運動の関係をもとに鋭く分析。先進工業国における資本主義経済の変化が、企業レベルで具体的にどう進展したのかを深く考察した力作。
目次
まえがき
序章
1 研究の対象――管理層職員(Fuhrungskrafte)
2 研究史の主な動向
(1)法律学の立場からの管理層職員研究
(2)社会学の立場からの管理層職員研究
(3)経営学の立場からの管理層職員研究
(4)我が国における管理層職員研究
3 課題――ドイツ企業の組織変革と管理層職員の形成・変化
4 本書の構成
第1部 ドイツ企業の変質と管理層職員の形成
第1章 ドイツ企業の組織変革運動と管理層職員の形成
はじめに
1 管理層職員とは何か
(1)指導的職員概念の検討
(2)協約外職員概念の検討
(3)管理層職員という把握概念の特徴
2 新しい企業内管理層としての管理層職員の形成
(1)管理層職員概念の形成
(2)管理層職員という従業員層の形成
むすび
第2章 管理層職員の雇用システム
はじめに
1 労働契約にみる雇用管理政策
2 雇用慣行上の新しい動向
(1)管理層職員候補としての学生に起きた変化
(2)入社、昇進、退社のあり方の変化
むすび
第3章 管理層職員と利益代表との関係
はじめに
1 利益代表の構造
(1)労働組合組織
(2)集権的労使交渉との関わり
(3)管理層職員の職場グループ
(4)指導的職員代表委員会(SpA)
(5)管理層職員の従業員代表委員会
2 歴史的な発展
(1)発生
(2)戦後の再生と発展
3 企業・事業所レベルでの労働条件形成
むすび
第2部 事業再構築のもとでの管理層職員
第4章 化学企業の事業再構築が管理層職員に与えた影響
はじめに
1 事業再構築の性質
(1)基本的な傾向
(2)労働市場への影響
2 管理層職員の雇用環境の変化
(1)管理層職員の労働市場の動向
(2)具体的な雇用条件の変化
3 旧東独地域の管理層職員の雇用条件
(1)東西両ドイツ統合以降の化学産業
(2)旧東独地域の管理層職員の形成
(3)雇用条件上の特徴
むすび
第5章 事業再構築への管理層職員の対応
はじめに
1 産業レベルでの対応
(1)協約政策
(2)組合組織強化政策
(3)社会的パートナーシップ政策
2 企業・事業所レベルでの対応
(1)対応の主な形態
(2)BASF社の職場グループの対応
むすび
終章
あとがき
略語
参考文献
索引
前書きなど
序章
1 研究の対象――管理層職員(Fuhrungskrafte)
本書では、現代のドイツ企業内部において、企業経営陣(Unternehmensleitung)を除く上層マネジメントを構成する、管理層職員(Fuhrungskrafte)を研究の対象とする。管理層職員とは、企業内部のラインおよびスタッフ部門において、指導的な地位と事業運営上の決定責任を委ねられているか、あるいは、研究・開発などの高度な専門知識を要求される分野において専門的業務に従事する職員の総称である。管理層職員は、経営陣を除く企業内官僚組織における昇進の対象であると同時に、多くの場合、将来における経営陣メンバーの候補とみなされる。そして、大部分において、具体的には、大学における学位に代表されるような、高度な資格あるいは学歴を有する。
管理層職員は、管理層でありながら経営陣には属さないことから、雇用関係上は被用者に分類される。しかしながら、同職員層は、企業内部における上層のマネジメントを構成し、しばしば経営陣の候補とみなされている。このことから、他の従業員層、具体的には、現業に直接従事するいわゆる現業労働者(gewerblicher Arbeitnehmer)、および一般的な事務労働や技術サービスを提供する通常職員(Angestellter)とは区別して把握される。また、同職員層がドイツの全就業人口数において占める比率は、極めて低い。
本書では、この管理層職員をひとつの従業員層としてとらえ、ドイツ企業の企業組織変革運動との関係のもと、その形成、雇用システム、労使関係、およびドイツ企業が行った事業再構築にたいする対応と調整を扱う。対象とするのは、主に第2次世界大戦後から2000年代初めにいたる時期とする(一部に第1次世界大戦後の時期を含む)。このため、比較的近い時代の歴史を扱うこととなる。
管理層職員という研究対象を、とくにこの時期に限定して扱う理由は、この従業員層が、第2次世界大戦後におけるドイツ企業による企業組織変革運動の興隆の過程で誕生・定着したためである。また、この従業員層の形成と変化を考察することで、現代ドイツ企業の変質が有する特徴の一面を描き出せると考える。
先進工業諸国の資本主義経済を支える諸要素は、各国にそれぞれ特徴的な発展を遂げてきた。このため、企業組織において上層の管理業務を担う従業員層の把握概念と名称は、各国において様々である。例えば、我が国においては、「大卒ホワイトカラー」が、上層の管理業務を担い、また将来の経営陣の候補となる従業員層としてとらえられることが多い。しかしながら、この「大卒ホワイトカラー」で想起される従業員層のイメージとこの概念が前提とする従業員としての条件は、ドイツの「管理層職員」のそれと、完全に一致するとは言い難い。
このようなことは、ドイツと日本との間のみならず、全ての先進工業国の企業組織で上層の管理業務を担う従業員層を比較する際にあてはまる。この現実のもと、本書において管理層職員の形成、雇用システム、労使関係、そしてひとつの従業員層としていかなる変容を見せてきたかを集中的に探りその正しい像を示すことで、我が国における企業内管理層についての国際比較研究の進展に資することをねらう。
なお、本書で1945年におけるドイツ敗戦から1990年における東西両ドイツ統一までの時期について「ドイツ」という政治的空間の範囲について言及した場合、とくに断りがない限り、旧西ドイツ地域(ドイツ連邦共和国:BRD)のみを指すこととする。
(…後略…)
(版元注:管理層職員「Fuhrungskrafte」の最初の u と a にはウムラウト)
上記内容は本書刊行時のものです。