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最重度・重複障害児かなこちゃんの暮らし
地域で、普通学級で生きるということ
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2006年2月
- 書店発売日
- 2006年2月7日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2010年11月12日
紹介
普通学級で過ごす重度障害児のかなこちゃん。学校生活における彼女の存在自体が,健常児に「障害とは何か」「障害者にどのように接すれば良いのか」を学ばせる。幼少時代から高校生の現在までの写真とエッセイ,インタビューで綴る,障害児と共に育つということ。
目次
まえがき
第1章 たくさんの人に支えられて(北村惠子)
第2章 かなこを一番大事に思ってるんは、4年3組の俺らや!(中谷静香・酒井けい子)
第3章 命の重さを見つめ、そしてやさしさへ(平野西小学校のみんな《当時の作文より》)
第4章 インタビュー
1 私も学んでいます(酒井けい子さん)
2 せめてしゃべれたら……(竹内悠紀さん)
3 一番の思い出は文化祭(中森亜紀さん)
4 かなこはすごいパワーの持ち主(岩橋倫子さん)
5 お気に入りの授業は水泳(山崎秀子さん)
第5章 感謝をこめて……(北村惠子)
あとがき
前書きなど
まえがき
僕が初めて障害のある子どもたちと出会ったのは16歳のときで、きっかけは、偶然出会った男性が職員として勤めている障害児の通園施設へ遊びに行ったことでした。
その場所は、大阪市生野区にある「生野こどもの家」という、障害児と健常児が共に学ぶ統合保育施設です。
そこは、ひとりひとりが大切にされるなかで、人や物にふれあいやすい環境が整えられていて、自分自身とほかの人を知りながら付き合い方を学ぶことができ、大きくなっても通用する「生きていく力」をつちかえるような育ち合いをしたいという考えのもとでつくられた、オープンシステムによる「自由保育」の場です。
子どもたちは施設の中を自由に走り回り、僕に「お兄ちゃん!」と言ってやさしく接してくれました。僕はその無邪気な子どもたちの姿に癒されたのでした。僕は彼ら・彼女らとの出会いに衝撃を受けながら、何かに惹かれるようにそこへ足を運ぶようになっていました。
「生野こどもの家」の子どもたちと出会ったあと、そこから近くにある障害者が働く福祉作業所で仕事をすることになり、ときどき仕事をさぼっては、子どもたちとトランポリンをしたり、輪投げをしたりして、一緒に遊びました。人前で何かをすることが苦手な僕でしたが、クリスマス会やお誕生日会などで、子どもたちを前にして、劇などの見せ物をすることが一番の楽しみでした。
僕がカメラマンをこころざしたのは2年間勤めていた福祉作業所を退職した20歳のときでした。自分の周囲の環境における障害者の現状をより多くの人に伝えたいという気持ちからです。
けれど、最初はどうすればカメラマンになれるのか分からず、撮影スタジオで助手として働き、ひと通りの技術を学び、その後アルバイトをしてお金を貯め、海外を旅しながら子どもたちの姿を撮影する日々を過ごしました。
やがて小さな雑誌社でカメラマンとしての仕事をするようになった頃、大阪市平野区にある学童保育所「子どもジグソー」と出会いました。
ここは、小中学校に通う障害児たちが、学校を終えた放課後に過ごす民間の学童施設で、かつて「生野こどもの家」で出会った卒園児たちの姿も見かけ、なつかしい気持ちと、もっと仲良くなりたいという思いでそこへ通い、子どもたちの姿をカメラのフィルムに収めました。
同時期に、「いくの障害児(者)家族地域支援センター『ほっと』」で、障害児のヘルパーとしての仕事にも関わりました。僕は、カメラマンとして、そしてヘルパーとして子どもたちと過ごすことで、それぞれ違う視点で障害児と関わることができたと思います。
そのかかわりのなかで、ひとりの少女と出会いました。彼女の名前は北村佳那子ちゃん。彼女は「ウイルス感染後遺症」による重い障害のある女の子です。養護学校から地域の小学校へ転校し、中学校も地域の学校の普通学級で、クラスのお友だちとともに過ごしてきました。
彼女の魅力と同時に、彼女をとりまく人びとや環境に惹かれ、小学校、中学校、そして現在、夜間の定時制高校に通う彼女の姿を――断片的ではありますが――、写真とビデオに収め、当時の学校の先生やお友だち、また、現在彼女に関わっている人びとの取材を通して、かなこちゃんや、かなこちゃんのような障害のある人が、地域で、そして普通学級で過ごす姿を伝えたいと考えました。
今回の作業で、かなこちゃんの魅力を改めて感じることになり、障害児と健常児が共に過ごし、学ぶことの重要性を再認識しました。
なお、本書の構成として、僕が撮影した、障害のある子どもたちの写真のなかから、かなこちゃんの写真をピックアップし、それを時系列に並べ、以下の文章を添えました。
第1章の「たくさんの人に支えられて」は、当時、小学校の授業で使用するために、かなこちゃんのお母さんが子どもたちに向けて執筆されたものです。
第2章は、小学校の担任の先生が、当時、大阪市教職員組合大会報告のために執筆されたものです。
第3章では、小学生のときに子どもたちが書いた、かなこちゃんと過ごした感想文のいくつかを掲載しています。
第4章では、「学校でのかなこちゃんのエピソード」として、小学校時代の担任の先生、小・中学校時代、特に仲の良かった、個性の違う2人のお友だち、そして、現在のかなこちゃんについては、ヘルプセンター「じゃんぷ」所属のヘルパーさん、高校の非常勤講師(主にかなこちゃんの支援のための教員)で「子ども情報研究センター」のスタッフの方にインタビューをし、それをもとに文章化しました。
第5章では、かなこちゃんのお母さんに現在の状況を書き下ろしていただきました。
武壮隆志
上記内容は本書刊行時のものです。