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語りと祈り 姜信子(著/文) - みすず書房
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語りと祈り (カタリトイノリ)

哲学・宗教
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発行:みすず書房
四六判
重さ 430g
328ページ
定価 4,000円+税
ISBN
978-4-622-09569-9   COPY
ISBN 13
9784622095699   COPY
ISBN 10h
4-622-09569-6   COPY
ISBN 10
4622095696   COPY
出版者記号
622   COPY
Cコード
C0095  
0:一般 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2023年1月16日
書店発売日
登録日
2022年12月9日
最終更新日
2022年12月28日
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書評掲載情報

2023-04-01 東京新聞/中日新聞  朝刊
評者: 松村洋(音楽評論家)
2023-03-18 朝日新聞  朝刊
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紹介

かつてこの世の物語の多くは、土地に息づく小さな神々の声をもって語られていた。世界を語る言葉は「風土を生きる身体」によって紡がれ、人や鳥獣虫魚草木のいのちが宿っていた。そして、人びとは近代の到来とともにそれをあっけなく忘れた。
近代の前と後の断絶。たとえば村共同体の核にあった「神」や「仏」が国家神道によって追放された歴史。あるいは折口信夫が来訪神の祝言に「この世にあらわれたはじめての文学のことば」を聴き、祈りの所作に「芸能の発生」を見た、人びとの暮らし。風土の神々と共にあった民の記憶、民の物語も忘れられていった。
この列島は太古からずっと「ひとつの日本」だったのか。声を奪われつづけた世界のなれの果ての時代に、取り戻した声を手がかりにして再生の道を拓くことはできないか。
説経、山伏祭文、貝祭文、説経祭文、瞽女唄、浄瑠璃、浪曲、パンソリ……、「語り」の声に耳澄まし、失われた声を追い、名残の声に引かれて、足尾銅山、水俣、八重山諸島、済州島をゆく。来るべき「声」の場、そして反旗を翻す詩の可能性を眼差して。

目次

前口上  名残の声に耳を引かれて

第一部 語り
第一章 この世の物語は命の記憶をつなぐためにある
1 山伏、比丘尼、一切成就カンマンボロン
2 近代という仕組みは、きわめて高機能の忘却装置である

第二章 「説経」と「祭文」──千年の時間の流れを早送り
1 山、野、道にある芸能
2 大道の傘の下に広がる異界からの声、「ささら説経」
3 京都・四条河原 説経操り「阿弥陀胸割」
4 忘れられた時代の声、説経「弘知法印御伝記」
5 貝祭文、上州祭文は別名デロレン祭文。江州音頭はいまでもデロレン
6 説経祭文は江戸で起こって武蔵国多摩の村々へ。村の陰陽師は芸能者
7 語りは世につれ、人につれ

第三章 なぜ「瞽女」は消えたのか?
1 語りの近代
2 前近代と近代の交わる道を越後瞽女はゆく
3 「場」、小さな声たちの共同体

第四章 浪曲! 解放奴隷の魂はビヨーンと震える
1 空気を震わせ、この世を揺らがせること
2 語りの最新型 浪曲
3 近代文学百五十年の孤独
4 近代の荒れ野を野生の説教祭文語りがゆく

第五章 なもあみだんぶーさんせうだゆう外伝

残響 壱 「記憶喪失の安寿と靴の話」

第二部 祈り
第六章 語りつぐ声、歌いつがれる祈り──近代的な私たちが忘れて生きているもの

第七章 反旗を翻す歌
1 詩人、あるいは反旗を翻す者
2 詩する者/死する者──詩人金時鐘との出会いから
3 ここに生きる──詩人谺雄二と千年ブルース
4 植民地、水俣、苦海浄土
5 若き死者からの手紙

第八章 滅びゆく水の世──足尾鉱毒事件の跡を訪ねて渡良瀬川源流、松木渓谷

第九章 来たるべきアナキズム──近代を潜り抜けた「アニミズム」と「異人」をめぐって

第十章 旅するカタリとじょろり
1 近代の彼方には「じょろり」でゆく
2 不知火浄瑠璃「トヨコ桜」
3 石牟礼道子の「じょろり(浄瑠璃)」とは何なのか?

第十一章 「ひとり」たちのための祈り

残響 弐 満月の夜の狼のように〝水俣異聞〟

納口上  私はケモノで、声で、カビで

あとがき

著者プロフィール

姜信子  (キョウノブコ)  (著/文

(きょう・のぶこ/カン・シンジャ)
1961年横浜生まれ。作家。路傍の声に耳傾けて読む書く歌う旅をする日々を重ねてきた。近年は「口先案内人」と称して、歌や語りの芸能者と共に小さな「語りの場/声が解き放たれる乱場」を開く試みも。『生きとし生ける空白の物語』(港の人)『声 千年先に届くほどに』『現代説経集』(ぷねうま舎)『平成山椒大夫 あんじゅあんじゅさまよい安寿』(せりか書房)『はじまれ、ふたたび』(新泉社)『忘却の野に春を想う』(山内明美との共著 白水社)など著書多数。訳書に詩集『海女たち』(ホ・ヨンソン 共訳 新泉社)『あなたたちの天国』(李清俊 みすず書房)『京城のモダンガール』(徐智瑛 共訳 みすず書房)『モンスーン』(ピョン・ヘヨン 白水社)『たそがれ』(ファン・ソギョン 共訳 CUON)、編書に『死ぬふりだけでやめとけや 谺雄二詩文集』(みすず書房)等がある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

上記内容は本書刊行時のものです。