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出版者情報
嗅ぐ文学、動く言葉、感じる読書
自閉症者と小説を読む
- 初版年月日
- 2021年6月16日
- 書店発売日
- 2021年6月18日
- 登録日
- 2021年4月23日
- 最終更新日
- 2021年6月10日
書評掲載情報
2021-07-24 |
毎日新聞
朝刊 評者: 伊藤亜紗(東京工業大学准教授・美学) |
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紹介
「この卓越した本を読む者は、真に読むということの驚異を感じずにはいられない。……本書は読書についての本だが、私がこれまで出会ったどんな本とも違う。」(S・クーシスト「本書に寄せて」より)
◆文学教授を生業にする著者が、『白鯨』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『心は孤独な狩人』などの名作を6人の自閉症者とともに読んだ読書セッションの記録。自閉症者は「心の理論」を持たない、想像による遊びができないといった偏見は早々に覆されるが、それだけではない。自閉症者がカテゴリー化される以前の「感覚」を通して物語と関わることで、鮮烈な小説体験をしていることが明らかになる。
◆おのおの独特の症状や経歴をもつ彼らの、物語への感受性はときに痛切とも言えるほど鋭敏だ。たとえば『白鯨』を読む第一章では、言葉を話さない自閉症の青年ティトが、どの登場人物よりも鯨に自分を重ねながら小説世界を「泳ぎ」、その感覚を詩に綴りはじめる。『白鯨』のモチーフはやがて、ティトと著者の生活全体を呑み込んでいく。
◆著者は近年の脳科学的知見にもとづいて、「神経多様性(ニューロダイバーシティ)と読書」というテーマをかつてないほど掘り下げている。そこでは、自閉症者と定型発達者、双方の読み方の特性が互いを逆照射し合い、読むという行為の尽きせぬ可能性が浮かび上がる。だからこそ、本書の読後に強く体感されるのは、多様な脳と交感する文学の力の無辺さだ。
目次
本書に寄せて(スティーブン・クーシスト)
はじめに
プロローグ──言葉の大河に浮かぶ私たちの神経の筏
DJ・サヴァリーズと読書
第一章 海のように揺らめく世界から
ティト・ラジャーシ・ムコパディエイ×『白鯨』
第二章 脳の天空
ジェイミー・バーク×『儀式』
第三章 アンドロイドと自閉症
ドーラ・レイメイカー×『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
第四章 自分の足を見つけ出す
ユージェニー・ベルキン×『心は孤独な狩人』
第五章 当たり前を疑うために
テンプル・グランディン×『ミート』『ジ・エクスタティック・クライ』
エピローグ
謝辞
引用出典
原注
日本語版への注記
索引
上記内容は本書刊行時のものです。