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出版者情報
それでも。マキァヴェッリ、パスカル
- 初版年月日
- 2020年6月16日
- 書店発売日
- 2020年6月18日
- 登録日
- 2020年4月22日
- 最終更新日
- 2020年6月16日
書評掲載情報
2020-07-12 |
読売新聞
朝刊 評者: 山内志朗(慶應義塾大学教授、倫理学者) |
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紹介
近代的な「統治の技術」を理論化したマキァヴェッリ。「永遠の空間の無限の沈黙」を畏怖した信仰者パスカル。ふたりは離れた位置にありながら、緊密につながっていた。歴史家ギンズブルグは細部を凝視することで浮かび上がる徴候を手がかりに、政治神学の隠れた歴史へと近づいていく。
解読はアリストテレスに由来する中世神学の「決疑法」から始まる。規範や規則を示したのち、nondimanco(それでも)という接続詞を置くことで、例外が優先される場合を提示する論法である。「それでもnondimanco」は、神学においては奇蹟を、政治においては例外状態をひらく。
ルネサンス期、「統治の技術」を編み出した行政官マキァヴェッリは『君主論』等で決疑法を利用した。パスカルは対抗宗教改革期にイエズス会士たちが実践していた決疑法の容赦ない批判者でありながら、マキァヴェッリの熱心な読者、見えざる後継者だった。
父の蔵書、検邪聖省の議事録、ガリレオの手紙、草稿への書き込み、ミケランジェロの工房、修道院の文書庫、図書館──著者は書物の時空をこえ、埋もれた資料と当事者たちの関係を発見する。見えないインクで行間に書かれていることに目をこらす。
本書が照らし出すのは、権力と宗教の言論において制約を可能性に変えようとした者たちの営為である。最後に、現実に歴史を変えようとした者たちにかんするランペドゥーサの小説『山猫』を論じ、星辰の永遠性と人間の歴史が省察される。
目次
序言
第一章 マキァヴェッリ、例外、規則
第二章 マキァヴェッリになること──「ソデリーニ宛て気まぐれ者たちの書簡」の新たな読解のために
第三章 ポンターノ、マキァヴェッリ、思慮分別
第四章 絡まり合った読解――マキァヴェッリ、アリストテレス、聖トマス
第五章 人民を造形する――マキァヴェッリ、ミケランジェロ
第六章 マキァヴェッリと古遺物研究家たち
第七章 マキァヴェッリ、ガリレオ、検閲
第八章 ヴィルトゥ、正義、力――マキァヴェッリと彼の何人かの読者について
第九章 遠回しの言葉――『プロヴァンシアル』の工房で
第十章 皮肉めいて曖昧なエウクレイデス――ベールをめぐる二つの注
補論 行間を読む――『山猫』にかんする覚え書き
注
訳者あとがき
人名索引
上記内容は本書刊行時のものです。