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漁業と国境 濱田武士(著/文) - みすず書房
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漁業と国境 (ギョギョウトコッキョウ)

社会科学
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発行:みすず書房
四六判
重さ 495g
384ページ
定価 3,600円+税
ISBN
978-4-622-08870-7   COPY
ISBN 13
9784622088707   COPY
ISBN 10h
4-622-08870-3   COPY
ISBN 10
4622088703   COPY
出版者記号
622   COPY
Cコード
C1033  
1:教養 0:単行本 33:経済・財政・統計
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2020年1月10日
書店発売日
登録日
2019年11月9日
最終更新日
2020年1月6日
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書評掲載情報

2020-02-29 日本経済新聞  朝刊
評者: 山下東子(大東文化大学教授)
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紹介

北方水域、日本海、東シナ海、南洋──日本とロシア・中国・韓国・北朝鮮・台湾などの国境水域と島々では、漁船の不法侵入や不法操業が収まらない。国連海洋法条約や二国間の漁業協定は締結されていても、海の国境線に関する合意は存在していないのだ。
線を引くことも壁を立てることもできない海を舞台とする漁業は、繰り返される紛争と交渉で成り立ってきた。日本は領土問題では一歩も引けないが、国際関係の維持も優先せねばならず、漁業外交では不利な譲歩が続く。主権の及ぶ近海でさえ他国の漁船が許可なしに操業している。
海は、かつては軍事、そして今も資源と領土ナショナリズムの最前線である。漁民は、戦前は植民地拡大の尖兵となり、戦時中は船とともに徴用され、戦後の食糧難の時期にはたんぱく源の供給を担った。外貨獲得・高度経済成長を支えたのも、世界の海に出漁した遠洋漁船であった。しかし現在は漁業人口・漁船数・漁獲量の減少が止まらず、労働力を外国人船員に依存する。国境水域での漁業は補助金なしには立ちいかない。
本書は国際漁業関係史をふまえ、日本周辺水域の「海の縄張り」争いの政治・経済的な原理を明らかにする。領土問題が固定化して動かない現実のなかで、現場からの知見に立ち、漁業の未来への抜け道を示す。

目次



第一章 外洋漁業の近現代史
1 外国漁船の到来と水産政策の始まり
2 日露戦争による漁業権益の拡大
3 膨張する日本漁業と敗戦による崩壊
4 マッカーサー・ライン──戦後ただちに封じ込められた日本漁業
5 海洋分割の時代

第二章 北方水域──各国混戦の北太平洋漁場とロシアが重点化する北方領土
1 北方水域の覇権漁業国はどこか
2 「北方領土」の日本人漁業とロシアの開発
3 縮小する日本漁業

第三章 日本海──竹島=独島と日・韓国・北朝鮮の攻防
1 日本海水域の国際漁業紛争
2 国連海洋法条約批准後の日本海
3 カニ産業──境港市と韓国・北朝鮮

第四章 東シナ海──失われた日本漁業の独擅場と尖閣諸島問題
1 漁業交渉にみる日中の攻防
2 高まる台湾の存在感
3 軍事化する南シナ海

第五章 南洋──アメリカの海は「中国の海」になるのか
1 日本漁業の足跡
2 カツオ・マグロ資源の世界的な争奪戦

終章 領土問題が固定化するなかで
1 領土と資源ナショナリズム
2 「漁民」に残された未来への抜け道

おわりに

主要参考文献

著者プロフィール

濱田武士  (ハマダタケシ)  (著/文

1969年大阪府吹田市生まれ。1999年北海道大学大学院水産学研究科博士課程修了。東京海洋大学海洋科学部准教授をへて現在、北海学園大学経済学部教授。水産庁「漁獲証明制度に関する検討会」座長。専門は漁業経済学・地域経済論・協同組合論。著作に『伝統的和船の経済──地域経済を支えた「技」と「商」の歴史的考察』(2010年、農林統計出版、漁業経済学会奨励賞)『漁業と震災』(みすず書房、2013年、漁業経済学会賞・日本協同組合学会学術賞)『福島に農林漁業をとり戻す』(共著、みすず書房、2015年、日本協同組合学会学術賞)、『日本漁業の真実』(ちくま新書、2014年)『魚と日本人──食と職の経済学』(岩波新書、2016年、水産ジャーナリストの会大賞・辻静雄食文化賞)『漁業と国境』(共著、みすず書房、2020年)など。

佐々木貴文  (ササキタカフミ)  (著/文

1979年三重県津市生まれ。2006年北海道大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。鹿児島大学大学院水産学研究科准教授を経て、現在、北海道大学大学院水産科学研究院准教授。農林水産省 水産政策審議会委員。専門は近代産業史・漁業経済学・職業教育学。著作に『近代日本の水産教育──「国境」に立つ漁業者の養成』(北海道大学出版会、2018年、漁業経済学会賞)「日本漁業と「船上のディアスポラ」──“黒塗り”にされる男たち」(『産業構造の変化と外国人労働者』共著、明石書店、2018年)「漁業からみた普天間基地移設問題──襞に埋没する名護の海人」(『現代思想』共著、青土社、2016年)「普通教育としての水産教育を構想する」(『技術教育の諸相』共著、学文社、2016年)「明治日本の遠洋漁業開発と人材養成」(『帝国日本の漁業と漁業政策』共著、北斗書房、2016年)『漁業と国境』(共著、みすず書房、2020年)など

上記内容は本書刊行時のものです。