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失われた子どもたち タラ・ザーラ(著/文) - みすず書房
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失われた子どもたち (ウシナワレタコドモタチ) 第二次世界大戦後のヨーロッパの家族再建 (ダイニジセカイタイセンゴノヨーロッパノカゾクサイケン)

歴史・地理
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発行:みすず書房
四六判
重さ 610g
488ページ
定価 6,000円+税
ISBN
978-4-622-08868-4   COPY
ISBN 13
9784622088684   COPY
ISBN 10h
4-622-08868-1   COPY
ISBN 10
4622088681   COPY
出版者記号
622   COPY
Cコード
C1022  
1:教養 0:単行本 22:外国歴史
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2019年12月19日
書店発売日
登録日
2019年10月24日
最終更新日
2019年12月21日
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書評掲載情報

2021-05-08 朝日新聞  朝刊
評者: 保阪正康(ノンフィクション作家)
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紹介

第二次世界大戦によって、ヨーロッパでは前例のないほど多くの家族が引き裂かれた。ナチ帝国の崩壊後、何百万人もの人びとが、愛する家族を探して大陸をさまようことになる。他方で、この惨状を前にして、避難民の子どもたちの生を再建しようと努力した人びとも大勢いた。
国連諸機関と人道主義組織による「失われた子どもたち」の救済活動は、いわば、個人主義、普遍主義、そして国際主義に彩られた新時代の幕開けの宣言となった。その象徴が「子どもの最善の利益」というスローガンだった。
しかし著者ザーラは、多様な人びとの証言などを含む膨大な一次史料をもとに、彼らが子どもの最善の利益を、結局は国民主義的な観点から定義し、その枠組みで子どもと家族を処遇したことを実証してゆく。
また本書では、家族という普遍的な概念がいかに多様なかたちで理解されたかが明らかにされると同時に、家族の再建過程が、冷戦イデオロギー、子ども期、国民意識という概念をどのように形づくったかが、鮮やかに示される。戦後デモクラシーのもとで、家族の再建はヨーロッパ文明の再建と同一視されていたのであった。
本書で描かれる、戦争による破壊と再建に翻弄される家族の物語は、今日の戦争難民とその子どもたちの問題や、国際養子縁組、基本的人権と人道主義、難民政策といった喫緊の課題についても、大きな示唆を与えてくれるであろう。

目次

序文

序章 混乱のさなかの文明世界
一 家族の崩壊と「失われた子どもたち」
二 政治化された家族の離別
三 ヨーロッパ再建における家族と子ども

第1章 戦争の真の犠牲者
一 新しい救済の萌芽
二 子どもを「取り戻す」こと
三 東西文化対立の教訓と再家族化
四 スペイン内戦下の子ども
五 政治化された本国送還

第2章 子どもの救済
一 子ども嫌いの街
二 集団か家族か
三 イギリスにおける児童疎開と精神分析
四 アメリカにおける難民の子どもたち
五 アメリカにおけるソーシャルワークと精神分析
六 テレジエンシュタット強制収容所と集団主義教育

第3章 「心理学的マーシャルプラン」
一 家族の離別
二 連合国国際復興機関(アンラ)とソーシャルワーカー
三 里親か施設か
四 権威とジェンダー

第4章 避難民の子どもたちの再国民化
一 ジェノサイド条約と人権宣言
二 国際主義の潮流のなかの再国民化
三 子どもの「最善の利益」――本国への強制送還
四 再家族化と再国民化をめぐって

第5章 フランスにおける戦争の戦利品としての子ども
一 戦利品としての子ども
二 混合婚(インターマリッジ)から生まれた子どもの処遇

第6章 チェコスロヴァキアにおける民族浄化と家族
一 国民の境界と家族の境界
二 チェコスロヴァキアにおける民族浄化
三 「雑婚」と民族浄化
四 国民と家族をめぐる二律背反の要求

第7章 本国送還と冷戦
一 再建と本国送還
二 「もっとも子どもを失った国」ポーランド
三 家族と民主主義

第8章 分断された家族から分断されたヨーロッパへ
一 国民の「融和」/家族の回復/ヨーロッパの再建
二 失われた子どもたちの経験
三 子どもの最善の利益としての家族の絆
四 分断と序列化

訳者解題
原註および訳註
文書館史料および略語
索引

著者プロフィール

タラ・ザーラ  (タラザーラ)  (著/文

1976年、アメリカ生まれ。スワースモア大学卒、ミシガン大学Ph.D(歴史学)。シカゴ大学歴史学部准教授を経て、現在、同教授。専門は近現代中東欧史。単著として、Kidnapped Souls: National Indifference and the Battle for Children in the Bohemian Lands, 1900-1948 (Ithaca, 2008), The Lost Children: Reconstructing Europe’s Families after World War II (Cambridge, MA, 2011〔『失われた子どもたち』三時・北村監訳、みすず書房〕), The Great Departure: Mass Migration from Eastern Europe and the Making of the Free World (New York, 2016) がある。最初の本は、ローラ・シャノン賞をはじめとして5つの賞を受賞。二作目となる『失われた子どもたち』もジョージ・ルイス・ベア賞などを受賞。

三時眞貴子  (サントキマキコ)  (監修 | 翻訳

1974年生まれ。広島大学大学院教育学研究科博士課程後期課程満期退学、博士(教育学)。専門はイギリス教育史。主な業績に『イギリス都市文化と教育』(昭和堂、2012)、「『労働の訓練/教育』による浮浪児への支援」三時眞貴子ほか編『教育支援と排除の比較社会史』(昭和堂、2016)所収、「一九―二〇世紀転換期マンチェスタにおける『適切な養育を受けていない』子どもの包摂と教育」『九州歴史科学』第45号(2017)ほか。監訳書にザーラ『失われた子どもたち――第二次世界大戦後のヨーロッパの家族再建』(共監訳、みすず書房、2019)。

北村陽子  (キタムラヨウコ)  (監修 | 翻訳

1973年生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士課程後期課程満期退学、博士(歴史学)。専門はドイツ近現代史。主な業績に「障害者の就労と『民族共同体』への道」三時眞貴子ほか編『教育支援と排除の比較社会史』(昭和堂、2016)所収、「第二次世界大戦下の戦争犠牲者問題」『歴史と経済』239号(2018)、「ドイツにおける世界大戦と福祉」『軍事史学』53巻4号(2018)ほか。監訳書にザーラ『失われた子どもたち――第二次世界大戦後のヨーロッパの家族再建』(共監訳、みすず書房、2019)。

岩下誠  (イワシタアキラ)  (翻訳

1979年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得済退学、博士(教育学)。専門はイギリス教育史・アイルランド教育史。主な業績に『福祉国家と教育』(共編著、昭和堂、2013)、「19世紀前半アイルランドにおける教育改革と国民統合」『西洋史学』264号(2017)、’Politics, state and Church: forming the National Society 1805-c.1818’, History of Education 47(1)(2018) ほか。訳書にザーラ『失われた子どもたち――第二次世界大戦後のヨーロッパの家族再建』(共訳、三時・北村監訳、みすず書房、2019)。

江口布由子  (エグチフユコ)  (翻訳

1974年生まれ。九州大学大学院比較社会文化研究科博士課程後期課程満期退学、博士(比較社会文化)。専門はオーストリア近現代史。主な業績に「近現代オーストリアにおける子どもの遺棄と保護」沢山美果子ほか編『保護と遺棄の子ども史』(昭和堂、2014)所収、「『福祉を通じた教育』による包摂、選別、『排除』」三時眞貴子ほか編『教育支援と排除の比較社会史』(昭和堂、2016)所収、「国境と家族」『東欧史研究』41号(2019)ほか。訳書にザーラ『失われた子どもたち――第二次世界大戦後のヨーロッパの家族再建』(共訳、三時・北村監訳、みすず書房、2019)。

上記内容は本書刊行時のものです。