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ショパンの詩学 松尾梨沙(著/文) - みすず書房
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ショパンの詩学 (ショパンノシガク) ピアノ曲《バラード》という詩の誕生 (ピアノキョクバラードトイウシノタンジョウ)

芸術
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発行:みすず書房
四六判
重さ 625g
408ページ
定価 4,600円+税
ISBN
978-4-622-08759-5   COPY
ISBN 13
9784622087595   COPY
ISBN 10h
4-622-08759-6   COPY
ISBN 10
4622087596   COPY
出版者記号
622   COPY
Cコード
C0073  
0:一般 0:単行本 73:音楽・舞踊
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2019年2月8日
書店発売日
登録日
2018年12月19日
最終更新日
2019年2月4日
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紹介

ショパンはその生涯に多くの歌曲を書いた。古典主義からロマン主義への過渡期にあった同時代6人の詩人の詩にショパンが付曲したものが主であるが、生前には刊行されず、ショパン作品群の中での位置づけは低い。一方で文学ジャンル「バラード」と共通する詩的な題名をもつ作品を、ショパンは4つ残した。ピアノを弾く人、聴く人に愛され続けてきた《バラード》1番から4番である。ピアノ独奏曲にバラードの語を用い始めたのはショパンが最初だが、その意図については、特定の詩作品との関連説が根拠なく有力視されてきた。ショパンの死後150年以上ものあいだ、なぜそのような解釈が許容されてきたのか。
これまで軽視されていたショパンの歌曲について、本書はまず詩の精緻な分析を行った上で、ショパンの付曲がいかに見事に各詩に対応しているかを明らかにする。つまりショパンには、文学作品を構造的・理論的にとらえる高度な能力と、それを音楽で表現する技量があった。その発見を梃子に著者は、《バラード》の構造を詩学と音楽学を駆使してつぎつぎに、よどみない筆致で紐といてゆく。そして浮かび上がるショパンの《バラード》は、特定の詩にインスピレーションを得て思いつくままに書かれたようなものではない、壮大な芸術的営みである。
ショパンは感傷的なサロン音楽の作者と目されがちで、そのような意味で「ピアノの詩人」と呼ばれてきた。しかし本当は、まったく別の意味でそう呼ばれるべきだったのではないか。作曲家の真髄を研究史の死角から救い出した、若手研究者の快挙。

目次

凡例

第1章 ショパンと文学――新たな視座から
1 本書の射程
2 本書の目的と背景――先行研究と問題点
3 ショパンを取り巻いた言葉

〈第1部〉
6人の詩人から読み解くショパンの歌曲――その詩の構造と作曲技法との関わり

第2章 19世紀初頭ポーランドの文学と音楽――〈第1部)導入として
1 1815-1830年のポーランド文壇
2 1815-1830年のポーランド楽壇

第3章 オシンスキ――屈折した最後の啓蒙主義詩人
1 栄光の人生
2 さまざまな顔
3 ショパンとオシンスキ
4 分析――《リトアニアの歌》
5 まとめ――「翻訳詩人」と「歌曲作家」の共鳴

第4章 ミツキェヴィチ――「開かれた形式」の誕生へ
1 ミツキェヴィチの生涯と作風概観
2 直接的発話からドラマティック抒情詩へ
3 ショパンとミツキェヴィチ
4 楽曲分析
5 まとめ――伝統の「同化」から「淘汰」へ

第5章 ヴィトフィツキ――生涯の友となった田園詩人
1 ヴィトフィツキの生涯
2 郷里と民衆を謳う――『田園詩集』と『バラードとロマンス』
3 ショパンとヴィトフィツキ
4 楽曲分析
5 まとめ――「民謡詩」と「芸術詩」を的確に読み取った作曲家

第6章 ポル――国土を愛した蜂起歌人 
1 生い立ち
2 ポルの両親――過程刊行から窺えるショパンとの共通性
3 ポルの作風
4 分析――《墓からの歌》
5 まとめ――時空間の転換と調性

第7章 ザレスキ――ウクライナの小夜啼鳥
1 ザレスキの生涯
2 3つの詩とウクライナ民謡のリズム
3 ショパンとザレスキ
4 楽曲分析
5 まとめ――ウクライナとポーランドの「交差点」

第8章 クラシンスキ――望郷の「匿名詩人」
1 生い立ち、代表作とその特徴
2 「十字を負いし山より」と『旧約聖書』
3 『最後の人』に見られるクラシンスキ的思想
4 ショパンとクラシンスキ――デルフィナ・ポトツカをめぐって
5 分析――《十字を負いし山より》
6 まとめ――詩学的な客観視と楽曲構造

〈第2部〉
《バラード》の条件――ショパンが生んだ新ジャンルをめぐって

第9章 ポーランド文学の「バラード」に対峙するショパン
1 ポーランド文学史における「バラード」
2 ショパンの《バラード》に共通する拍子とリズム
3 ポーランド「バラード」構造概観

第10章 叙事詩的特徴――バラードを支えるトリニティ(1)
1 叙事詩の定義と歴史
2 19世紀ポーランドにおける叙事詩とバラードのとらえ方
3 「バラード」における叙事詩の要素
4 ショパンの《バラード》に見られる叙事詩的バラード構造
5 まとめ――叙事詩的特徴から抒情詩・戯曲的特徴へ

第11章 抒情詩的特徴――バラードを支えるトリニティ(2)
1 抒情詩の定義と歴史
2 19世紀ポーランドにおける抒情詩とバラードのとらえ方
3 「バラード」における抒情詩の要素
4 バラードにおける「音楽的構造」と「言語的・視覚的表現」
5 ショパンの《バラード》に見られる抒情詩的バラード構造
6 まとめ――「聴覚化」と「視覚化」の矛盾が生む固有性

第12章 戯曲的特徴――バラードを支えるトリニティ(3)
1 戯曲の定義と歴史
2 「バラード」における戯曲の要素
3 ショパンの《バラード》に見られる戯曲的バラード構造
4 まとめ――「混合物」としての独創性

終章 ピアノの「詩人」――ショパンがポーランドの言葉から得たもの


詩学用語一覧
音楽用語一覧
参考文献一覧
初出一覧
あとがき
索引

著者プロフィール

松尾梨沙  (マツオリサ)  (著/文

1983年、福岡県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。2010-2013年、ワルシャワ大学音楽学研究所へ留学、同大学ポーランド文学研究所でも学ぶ。日本学術振興会特別研究員DC1を経て、2018年3月、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、日本学術振興会特別研究員PD(一橋大学)。専門は音楽学、比較芸術。ピアノを迫昭嘉氏に師事。第53回全日本学生音楽コンクール福岡大会ピアノ部門第2位。著書『ショパンの詩学――ピアノ曲《バラード》という詩の誕生』(みすず書房、2019)。

上記内容は本書刊行時のものです。