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試行錯誤に漂う 保坂和志(著/文) - みすず書房
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試行錯誤に漂う (シコウサクゴニタダヨウ)

文芸
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発行:みすず書房
四六判
312ページ
定価 2,700円+税
ISBN
978-4-622-08541-6   COPY
ISBN 13
9784622085416   COPY
ISBN 10h
4-622-08541-0   COPY
ISBN 10
4622085410   COPY
出版者記号
622   COPY
Cコード
C0095  
0:一般 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2016年8月25日
最終更新日
2016年10月17日
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書評掲載情報

2016-12-04 日本経済新聞  朝刊
評者: 佐々木敦(批評家)
2016-12-04 朝日新聞
評者: 大竹昭子(作家)
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紹介

「私がこの“試行錯誤”ということを最初に思ったのは、パブロ・カザルスの、バッハの『無伴奏チェロ組曲』を弾いているときに聞こえる、弦の上を指が動いてこすれる音と弓が弦に触れる瞬間の音楽になる一瞬間の音だった。どちらもノイズということだが、私はこれを最高級の蓄音機でSPレコードを再生してもらって聴くと、奏者と楽器が自分がいまいるまったく同じこの空間にいると感じられるほどリアルという以上に物質的で、その音からブルースが聞こえた。
弦の上を指が動いてこすれる音や弓が弦に触れる瞬間の音はだからノイズではない。その音が弦楽器を弦楽器たらしめ、チェロをチェロたらしめる。カザルスが弾いた音の中にブルースの響きまであったのではなく、そのこすれる音の中にカザルスの演奏がありブルースもあった。弦楽器が譜面=記号で再現可能な行儀のいい音の範囲を出るときに、奏者の指も体もそこにあらわれ、肉声もあらわれる。(…)
表現や演奏が実行される前に、まずその人がいる。その人は体を持って存在し、その体は向き不向きによっていろいろな表現の形式の試行錯誤の厚みに向かって開かれている」
(本書「弦に指がこすれる音」より)

「私」をほどいていく小説家の思考=言葉。
芸術の真髄へといざなう21世紀の風姿花伝。

目次

1 弦に指がこすれる音
2 方向がない状態
3 果てもなくつづく言葉の流れ
4 書き手の時間・揺れ
5 小説という空間
6 未整理・未発表と形
7 ランボーのぶつくさ
8 一字一句忘れない
9 読者の注意力で
10 作者の位置から落ちる
11 素振りについて
12 小さい声で書く
13 そのつど映るラストの場面
14 意識と一人称
15 読者と同じである作者
16 そこにある小説
17 小説は作者を超える(1)
18 小説は作者を超える(2)
19 書きながら生まれる感じ
20 『朝露通信』通信
21 神に聞かれないように祈る
22 奥の奥の光景
23 おせち料理の絵
24 出会い三題
25 ナットとボルト
26 ザワザワしてる
27 ラカンに帰郷した
28 言葉はいつ働き出すのか
29 論理、自我、エス、スラム
30 全くそうであり全くそうでない
31 下から上に向かって読む
32 運命と報酬

あとがき

著者プロフィール

保坂和志  (ホサカカズシ)  (著/文

1956年山梨県生まれ。鎌倉で育つ。早稲田大学政治経済学部卒業。1990年『プレーンソング』でデビュー。1993年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、1995年「この人の閾(いき)」で芥川賞、1997年『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞、2013年『未明の闘争』で野間文芸賞を受賞。その他の小説に、『猫に時間の流れる』『残響』『カンバセイション・ピース』『朝露通信』『地鳴き、小鳥みたいな』など。小説論・エッセイに『書きあぐねている人のための小説入門』『小説の自由』『小説の誕生』『考える練習』『遠い触覚』『試行錯誤に漂う』など。絵本に『チャーちゃん』(画 小沢さかえ)がある。

上記内容は本書刊行時のものです。