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歌う民衆と放歌高吟の近代
放歌民衆から唱歌・軍歌を歌う国民へ
- 書店発売日
- 2022年5月31日
- 登録日
- 2022年4月20日
- 最終更新日
- 2022年5月9日
書評掲載情報
2022-09-25 |
読売新聞
朝刊 評者: 金子拓(東京大学准教授・歴史学者) |
2022-06-18 | 日本経済新聞 朝刊 |
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紹介
万葉時代に若い男女が愛を歌い交わした「歌垣」、船唄や木遣り歌などの仕事唄など、古来日本人の生活は歌とともにあった。
しかし、明治になり、文明開化の流れの中で、卑猥な歌詞の俗謡、乱酔放歌などの暴行事件などが多発したことにより、放歌―辺りかまわず大声で歌うこと―は野蛮な行為と見なされ、処罰の対象となった。
日常生活のありふれた行為であるがゆえに、意識されず、記録に残されることの少なかった「放歌」の歴史を、犯罪記録として残った資料、多数の図版とともに丹念に紐解く。
明治の民衆の「歌う文化」を見つめなおす格好の一冊!
目次
序章 「歌う行為」の歴史と「放歌」という視点
第一部 明治の路上放歌と歌う民衆の世界
第一章 「路上で歌う行為」が犯罪となった時代―放歌罪の成立過程と展開
一 放歌高吟は「開けぬ国」の旧弊
二 前史(明治三―五年)―「乱酔放歌」の禁止
三 違式詿違条例(明治五―十四年)―道府県単位での放歌罪
四 旧刑法の違警罪―放歌罪の全国化(明治十五―四十年)
五 街路取締規則と放歌規制
六 放歌罪目の消失―現行刑法と警察犯処罰令(明治四十一年―)
第二章 路上放歌をめぐる民衆と巡査の市中攻防戦
一 警察統計と五百人の放歌犯
二 放歌犯の実態
三 侮辱放歌による民衆の反撃
第二部 生活や労働の中に根付く「歌う文化」
第三章 湯屋という放歌空間
一 湯屋取締規則と湯屋の構造
二 湯屋での放歌と「芸尽し」
三 汽車・人力車や花見、監獄での放歌
第四章 仕事唄を歌う明治の労働者―来日西洋人による「歌う民族」の発見
一 仕事唄と来日西洋人の見聞記
二 西洋人を驚かせた歌う船乗りと馬方
三 地搗きと木遣りの工夫も歌う
四 工場内で放歌する女工たち
第三部 放歌世界から教育訓練型の歌の世界へ
第五章 放歌世界と唱歌・軍歌の導入
一 俗謡と放歌世界の特徴
二 唱歌教育の導入と俗謡改良
三 軍歌を歌う兵士の誕生
四 兵士と放歌
第六章 学生の放歌高吟文化の形成過程
一 明治十年代の学生生活と放歌高吟の禁止
二 明治二十年代の寮生活と「花は桜木」の誕生
三 一高的伝統の始まりと寮歌の誕生
四 放歌高吟文化の制度化
結び 路上の歌声の変貌―明治から大正へ
終章 デモ行進歌の誕生と展開―政治・社会運動と歌の利用
一 民権運動と歌と行進の利用
二 デモ行進歌の誕生
三 「社会主義の歌」と「革命歌」
四 大正以降の展開―普選歌とメーデー歌の高唱
おわりに
上記内容は本書刊行時のものです。