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一八世紀の秘密外交史 カール・マルクス(著/文) - 白水社
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一八世紀の秘密外交史 (ジュウハッセイキノヒミツガイコウシ) ロシア専制の起源 (ロシアセンセイノキゲン)

社会科学
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発行:白水社
四六判
264ページ
定価 2,500円+税
ISBN
978-4-560-09494-5   COPY
ISBN 13
9784560094945   COPY
ISBN 10h
4-560-09494-2   COPY
ISBN 10
4560094942   COPY
出版者記号
560   COPY
Cコード
C0033  
0:一般 0:単行本 33:経済・財政・統計
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2023年1月30日
最終更新日
2023年3月16日
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書評掲載情報

2023-06-24 朝日新聞  朝刊
評者: 福嶋亮大(立教大学准教授・批評家)
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紹介

「ロシアが欲しいのは水である」

 資本主義の理論的解明に生涯を捧げたマルクス。彼はこの『資本論』に結実する探究の傍ら、1850年代、資本の文明化作用を阻むアジア的社会の研究から、東洋的専制を発見する。
 他方、クリミア戦争下に構想された本書で、マルクスはロシア的専制の起源に東洋的専制を見た。ロシア社会の専制化は、モンゴル来襲と諸公国の従属、いわゆる「タタールの軛」(1237-1462)によってもたらされたと分析したのである。
 このため、マルクスの娘、エリノアの手になる本書は歴史の闇に葬られ、とりわけ社会主義圏では一切刊行されなかったという。
 とはいえ、東洋的専制という問題意識は、その後、本書の序文を書いたウィットフォーゲルによって深められた。
 フランクフルトの社会研究所で頭角を現した彼は、『オリエンタル・デスポティズム』(1957年)に収斂していく研究で、専制の基底に大規模灌漑を要する「水力世界」を見出し、さらに、ソ連・中国の社会主義を東洋的専制の復活を見た。
 ウクライナ戦争が長期化する中、ロシアの強権体質への関心が高まっている。本書は今こそ読まれるべきだ。

目次

序(ウィットフォーゲル)
 Ⅰ ロシア―どこへ? 人類―どこへ?
 Ⅱ マルクスのロシアに関する発見をめぐる深くかつ矛盾だらけの根源
 Ⅲ ピョートル大帝への再評価と世界史の新しい視点への切り口
 Ⅳ ロシア政治に関するある新しい歴史草案──大掴みで不安を煽るようなもの
 Ⅴ マルクスの『一八世紀の秘密外交史』を超えて──「アジア的復古」
 Ⅵ 「偶然」と「自由」──マルクスが残した最高の遺産
第一章 資料と批判 一七〇〇年代のイギリス外交とロシア
第二章 北方戦争とイギリス外交──『北方の危機』
第三章 イギリスのバルト貿易
第四章 資料と批判 イギリスとスウェーデンの防衛条約
第五章 近代ロシアの根源について 
第六章 ロシアの海洋進出と文明化の意味
 解説(福本勝清)
 あとがき(石井知章)
 人名索引/関連年表

著者プロフィール

カール・マルクス  (カール マルクス)  (著/文

(Karl Marx, 1818‒1883)
プロイセン王国(ドイツ)出身の哲学者、経済学者、歴史学者であり、社会主義革命、労働運動に大きな影響を与え、近代資本主義的政治経済の理論的解明に生涯を捧げた。他方、『資本論』に結実する研究の傍ら、1850年代、資本の文明化作用を阻むアジア的社会の研究から、東洋的専制主義を発見する。クリミア戦争下に構想された本書は、ロシア的専制の起源に東洋的専制を見たため、マルクス主義者によって忌避された幻の論考である。

カール・アウグスト・ウィットフォーゲル  (カール アウグスト ウィットフォーゲル)  (著/文

(Karl August Wittfogel, 1896‒1988)
ドイツ出身の歴史家。フランクフルト大学を卒業後、フランクフルトの社会研究所で中国研究に従事し、1920年代以降、コミンテルンの中国専門家として知られるようになる。ナチスの政権掌握後、アメリカへ亡命。その後、マルクス主義から距離を置く。『オリエンタル・デスポティズム』(1957年)は、専制の基底に大規模灌漑を要する「水力世界」を見いだし、ソ連、中国などの社会主義を東洋的専制の復活と見た。

石井 知章  (イシイ トモアキ)  (編集 | 翻訳

1960年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。政治学博士。(社)共同通信社記者、ILO(国際労働機関)職員を経て、現在、明治大学商学部教授、早稲田大学大学院政治学研究科兼任講師。コロンビア大学客員研究員(2017‒2018年)、スタンフォード大学客員研究員(2007-2008年)。主な著作として、『中国社会主義国家と労働組合――中国型協商体制の形成過程』御茶の水書房、2007年、『現代中国政治と労働社会――労働者集団と民主化のゆくえ』御茶の水書房、2010年(日本労働ペンクラブ賞受賞)、石井知章編著『現代中国のリベラリズム思潮』藤原書店、2015年、石井知章・緒形康・鈴木賢編著『現代中国と市民社会』勉誠出版、2016年、石井知章・及川淳子共著『六四と一九八九――習近平帝国とどう向き合うのか』白水社、2020年など。

福本 勝清  (フクモト カツキヨ)  (編集 | 翻訳

1948年生まれ。明治大学文学部史学地理学課東洋史専攻卒。明治大学名誉教授。主な著作として、『中国革命への挽歌』亜紀書房、1992年、『中国共産党外伝――歴史に涙する時』蒼蒼社、1994年、『中国革命を駆け抜けたアウトローたち――土匪と流氓の世界』中公新書、1998年、『アジア的生産様式論争史――日本・中国・西欧における展開』社会評論社、2015年、『マルクス主義と水の理論――アジア的生産様式論の新しき視座』社会評論社、2016年、福本勝清編著『中西功尋問調書』亜紀書房、1996年など。

上記内容は本書刊行時のものです。