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井上哲次郎と「国体」の光芒
官学の覇権と〈反官〉アカデミズム
- 書店発売日
- 2023年3月25日
- 登録日
- 2023年1月30日
- 最終更新日
- 2023年3月14日
書評掲載情報
2023-06-17 |
朝日新聞
朝刊 評者: 保阪正康(ノンフィクション作家) |
2023-06-03 |
毎日新聞
朝刊 評者: 橋爪大三郎(社会学者) |
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紹介
学者たちの戦争、そして帝国の崩壊
加藤弘之が創り上げ、井上哲次郎に継承された官学アカデミズムは、煩悶青年が社会問題化した日露戦後、生命主義に傾倒していく。
しかし、国体論に「無意識」を取り入れる試みは、東京帝大の心理学者、福来友吉の念写実験が巻き起こした社会的混乱によって絶たれ、官学アカデミズムは歴史へと回帰することになる。
他方、大正デモクラシーの潮流のなかで国体を語る裾野は広がっていく。
早稲田の漢学を中心とした私学勢は、南北朝正閏問題や宮中某重大事件、大東文化学院の運営をめぐって、官学アカデミズムが彫琢した国体論に揺さぶりをかける。
とりわけ、大東文化学院の覇権を争う戦いは熾烈をきわめた。漢学教育の再興を目指す早稲田と、それを封じようとする官学アカデミズムの争いは、「暴力専門家」も動員しながら、井上の不敬事件やテロをも誘発していく。
あとの時代から見ると、「国体」と聞くだけで、狂信的な雰囲気が漂うが、そこには「国体論的公共性」とも呼ばれる広範な討議空間もあった。暴力に覆われる前の思想空間を辿り直す稀有な試み。
目次
序章
一 「国体」の時代
二 井上哲次郎の生涯
三 Cheapなvillain ―― 同時代の評価と先行研究
四 本書の構成
第1章 官学アカデミズムの舞台転換
一 進化と道徳法律
二 井上哲次郎の“世界観”
三 井上哲次郎 vs 加藤弘之
第2章 生命主義の蹉跌
一 心理学者、福来友吉
二 時代の病とその処方箋
三 福来友吉の追放
第3章 歴史への回帰
一 “宗教”の新しい語り方
二 宗教(性)利用論の展開
三 歴史への回帰
第4章 デモクラシーの時代へ
一 新時代の模索
二 第一次世界大戦
三 国民道徳の改造
第5章 青史と稗史の交錯
一 松平康国と牧野謙次郎
二 反官的国家主義
三 学院紛擾と不敬著書事件
補 章
一 東亜協会の概要
二 東亜協会の活動
三 東亜協会の参加者
終 章 井上哲次郎の死
あとがき/参考文献/索引
上記内容は本書刊行時のものです。