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MMT講義ノート
貨幣の起源、主権国家の原点とは何か
- 書店発売日
- 2022年6月2日
- 登録日
- 2022年3月29日
- 最終更新日
- 2022年5月26日
紹介
長期停滞を解明する、新たな経済学へ
経済学において「異端派」とされるMMT(現代貨幣理論)が、現実を説明する新たな理論として幅広く受け入れられつつある。
「財政赤字や国債残高を気にするのは無意味である」というMMTの主張をめぐって、もはや「極論」や「暴論」と片付けられる段階ではない。
経済学におけるパラダイム・シフトをしっかりと見定める時期が来ているといえよう。
とりわけ、「失われた30年」とも言われる長期停滞にあえぐ日本経済を分析する「武器」として、MMTはなくてはならない道具立てである。
本書は、ランダル・レイ『MMT現代貨幣理論入門』(東洋経済新報社)を監訳し、『MMTとは何か』(角川新書)を執筆して、この新たな経済学を日本に紹介した第一人者による人気講義を書籍化したものである。
MMTが多く人を惹きつけたのは、貨幣の起源をめぐる根源的問いと時事的な現代経済論を結び付ける、その理論の全体性にある。
制度化が進み、学説や理論がますます断片化していく状況下、歴史も視野に入れてトータルに現実を説明するMMTは、経済学というディシプリンを超えて、人文・社会科学に幅広く訴える。
目次
まえがき
第一章 イントロダクション――なぜ、今MMTなのか
はじめに/経済学界におけるMMTの立ち位置/MMTはなぜ注目されているのか/日本はMMTの実証例?
第二章 貨幣とは何か――MMTの貨幣論
一 商品貨幣論と債権貨幣論――貨幣の本質をめぐる論争
貨幣の定義/主流派経済学は「商品貨幣論」/商品貨幣論は欠陥だらけ(その一)/商品貨幣論は欠陥だらけ(その二)/商品貨幣論は欠陥だらけ(その三)/MMTは「債権貨幣論」/銀行預金も債権貨幣――「貨幣創造」のメカニズム/主流派は外生的貨幣供給論、MMTと実務家は内生的貨幣供給論
二 表券主義――通貨の流通メカニズムとその起源
租税が貨幣を動かす――通貨の本質は政府に対する債務の支払手段/租税が貨幣を動かした歴史的事例/表券主義とは何か/債務のピラミッド構造/表券主義に基づく債務ピラミッドの形成――英国の事例/表券主義の理論的基礎は非現実的?/貨幣と税の起源は神への供物/本源的債務論から公益的債権貨幣論へ/中世日本での渡来銭流通は表券主義の反証例?/渡来銭流通を説明する二つの表券主義メカニズム
コラム 民間銀行はなぜ預金を集めるのか
第三章 政府はなぜ財政破綻しないのか――MMTの通貨主権論
通貨主権と主権通貨/「税金は財源ではなく、国債は資金調達手段ではない」は論理的な帰結/典型的な通貨主権国のオペレーション(その一)――「国債は資金調達手段ではない」の実際/典型的な通貨主権国のオペレーション(その二)――「税金は財源ではない」の実際/赤字財政支出は金利を引き下げる/「財政の持続可能性」は問題ではない/財政収支は赤字が正常/財政収支は非政府部門の貯蓄意欲と釣り合っている/ユーロ危機から何を読み取るべきか
第四章 政府は何をなすべきか――MMTの経済政策論
一 MMTの租税政策論
「MMT=無税国家論」はあり得ない/租税は実物資源を動員する手段/租税が達成すべき四つの目的/望ましくない三つの税
二 機能的財政論
完全就業と物価安定――政府が目指すべき公共目的/政府はなぜ完全就業を目指すべきなのか/機能的財政と二つのルール/表券主義から機能的財政論へ――MMTの原型を作ったラーナー/変動為替相場制以外での機能的財政
三 就業保証プログラム
自動安定装置 対 裁量的財政政策/就業保証プログラムとは何か/就業保証プログラムの三つの意義/ベーシック・インカムや最低賃金制度などとの違い/就業保証プログラムの問題点/就業保証プログラムの「実例」への違和感/MMT主唱者も裁量的財政政策に軸足を置きつつある?
第五章 何が長期停滞の原因か――MMTで読み解く日本経済
日本経済に関する二つのテーマ/政府債務をめぐるケルトン= クルーグマン論争/現代の日本はMMTの「実証例」/財政赤字は「インフレの原因」ではなく「デフレ圧力の結果」/一九九七年度がターニングポイント/需要不足のスパイラルは今も続いている/企業の投資意欲低下がもたらした就業環境の悪化/需要不足以外の要因では長期停滞を説明できない/金融緩和か財政拡張か――主流派経済学とMMTの対立/金融政策はほとんど無効/緊縮財政こそ長期停滞の真因/日本経済を抑圧する消費税増税/財政拡張トレンドに水を差したアベノミクス/長期停滞脱却の展望は開けつつある?
コラム 終戦直後のハイパーインフレはなぜ起きたのか
第六章 日本経済をどう立て直すべきか――MMTの応用と発展
本章における二つのテーマ
一 経済政策の基本方針はどうあるべきか
その一 財政拡張路線を強化し、公的支出を長期安定的に拡大する/その二 当面の目標は「デフレ脱却」や「インフレ率」ではなく、「需要不足の解消」そして「完全就業の達成」とする/その三 政府債務残高対GDP比を政策指標から除外する/その四 消費税は廃止または減税する/その五 公的年金保険料を引き下げ、マクロ経済スライドは廃止する/その六 財政支出の世代間配分を是正し、少子高齢化に歯止めをかける/その七 公共投資を安定的に拡大する/その八 過剰な金融緩和は徐々に解消する
二 経済の長期循環と投資の社会化
内生的景気循環論――もう一つの非主流派理論/現実的なのは内生的景気循環論/乗数=加速度モデル――乗数理論と内生的景気循環論の融合/国際金融循環としてのクズネッツ・サイクル/日本経済に多大な影響を及ぼすクズネッツ・サイクル/「投資の社会化」とは何か/コンドラチェフ・サイクルとスタグフレーションのメカニズム/商品スーパーサイクル――もう一つのインフレ要因/コンドラチェフ・サイクルによる不均衡をどう緩和するか/スタグフレーションを緩和するエネルギー政策/脱・緊縮を前提としたエネルギー政策の見直しを
あとがき
参考文献
索引
上記内容は本書刊行時のものです。