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戦争の谺
軍国・皇国・神国のゆくえ
発行:白水社
四六判
321ページ
定価
2,800円+税
- 書店発売日
- 2015年8月22日
- 登録日
- 2015年8月29日
- 最終更新日
- 2015年8月27日
書評掲載情報
2015-11-22 |
東京新聞/中日新聞
評者: 池田浩士(ドイツ文学者) |
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紹介
復興という幻影
本書は気鋭の文芸評論家が「戦後年間」を振り返り、その時期を少し別な視角、視点から眺めながら、歴史のもう一つの断面を多くの具体的事象から探ろうとする一冊である。
戦後の歴史とは、一口に言えば「平和」か「復興」か、「慰霊」か「繁栄」かの選択だったともいえよう。
例えば長崎にはなぜ広島のような原爆ドームが残されなかったのか。また広島の復興計画はどのように変遷したのか。沖縄の慶良間諸島で住民に集団自決を命じた日本軍兵士がなぜ七割も生き残ったのか。
原爆ドーム以外に、日本が「二度の被爆国」であった証拠となるようなものはほとんど残っていない状況とは何を意味するのか。
何が変わって、何が変わらなかったか。「戦後空間」が何を隠蔽し、どんな共同幻想のなかで形成されてきたのか……。
他にも戦時中の「鬼畜米英」や「八紘一宇」といったキャッチコピーの意味、戦時下の植民地教育などを、戦後思想に通底するものとして論じながら、著者は戦後日本の復興や復帰の言説がいかにいかがわしいものであったかを明らかにしていく。
福島原発事故処理の流れが、あのときと不思議と似ていることに読者は気づかされるだろう。
目次
Ⅰ 「トカトントン」と「ピカドン」 復興ヒロシマ論
Ⅱ ああ、長崎の鐘が鳴る 復興ナガサキ論
Ⅲ 沖縄のユーリー 敗戦後オキナワ論
Ⅳ 「鬼畜米英」論
Ⅴ 「八紘一宇」論
Ⅵ 天皇と植民地の子供たち
Ⅶ 天皇とセヴンティーン 天皇小説の周辺
Ⅷ 国家は鎮魂することができない 「靖国の思想」批判
Ⅸ ゴジラが来た! “冷たい”核戦争
Ⅹ 戦後文学者のアジア体験
XI 事変下の“戦争文学” 戦争と文学の言説を検証する
XII 軍旗と勲章
あとがき/初出一覧/参考文献
上記内容は本書刊行時のものです。