書店員向け情報 HELP
書店注文情報
日中関係史
1500年の交流から読むアジアの未来
- 書店発売日
- 2019年12月19日
- 登録日
- 2019年10月31日
- 最終更新日
- 2019年12月12日
書評掲載情報
2020-12-19 |
毎日新聞
朝刊 評者: 橋爪大三郎(社会学者) |
2020-03-07 |
日本経済新聞
朝刊 評者: 川島真(東京大学教授) |
2020-02-16 |
毎日新聞
朝刊 評者: 橋爪大三郎(社会学者) |
MORE | |
LESS |
紹介
GDP世界二位の中国と、三位の日本の関係は、米中関係に次いで世界で二番目に重要な二国間関係だと言える。だが、日中関係は「緊迫」「危険」「難解」「複雑」という言葉が当てはまる。尖閣諸島周辺では、いまなお両国が日常的に対峙し、危険な衝突が起きる可能性が高い。もし二国間関係の取り扱いを間違えば、両国は軍拡競争に走り、二国間、地域、グローバルな問題での協力は行き詰まり、最終的には紛争になるだろう。
だが、日中関係を適切に取り扱うことができれば、両国は国際秩序と地域の協力枠組みを守るために協力し合える。貿易、経済建設、研究開発、平和維持、自然災害対応などの分野で、両国は力を合わせていけるはずなのである。
日中の指導者たちは、両国関係を発展させていくには、相手国が歴史に対して真摯に向き合うべきだと発言している。日中関係は1500年にわたる長い歴史を持ち、両国国民は過去の歴史に対する深く複雑な感情を有している。そのため、両国の研究者が集まって歴史観をすり合わせようとしても、新たな緊張関係を生みだし、重要な問題についてはほとんど合意が得られない。
しかし、両国の協力関係と友好関係のためには、歴史問題の超克は不可避の課題だ。本書は、日中両国の研究者であるエズラ・ヴォーゲルが、7世紀の遣隋使以来の1500年間におよぶ日中関係を網羅し、第三国人の視点から客観的な日中関係史を提供するものである。
目次
まえがき
凡例
第1章 中国の日本文化への貢献――六〇〇~八三八年
推古天皇以前の日中接触と日本の学びの基盤
六〇〇年以降、日本はいかに中国から学んだか
言語、文学、音楽
仏教
建築
通貨、そして商業経済の始まり
中国からの学びの遺産
第2章 革新的な学びを伴わない貿易関係――八三八~一八六二年
港湾管理官、商人、僧侶――八三八~一四〇三年
日中間の二度目の衝突――一二七四年および一二八一年の元軍の九州侵攻
朝貢使節の復活――一四〇三~一五四七年
倭寇、そして中国でのその永続的イメージ
日中間の三度目の衝突―─一五九二~一五九七年、豊臣秀吉の朝鮮侵攻
江戸時代・清朝期の地域情勢
江戸幕府の対外関係
明朝の遺臣の台湾・日本逃亡
江戸時代の日本と清朝期中国の貿易
清に対する徳川家の三つの見方―─国家主義者、漢学者、貿易商人
第3章 西洋諸国への対応と関係再開―─一八三九~一八八二年
西洋諸国の要求に対する日本の強み
一八六〇年代の転換点
中国と日本の外交管理
「千歳丸」の訪問―─一八六二年
条約交渉─―一八七〇~一八七三年
台湾と琉球をめぐる交渉―─一八七三年
中国公使館の東京開設─―一八七七年
外に向かう日本─―一八六九~一八七九年
日本の軍事的野心─―組織的な計画か、予想外の展開か?
第4章 朝鮮をめぐる競争と日清戦争―─一八八二~一八九五年
壬午軍乱と日清両国の派兵
金玉均による甲申政変の失敗―─一八八四年
福澤諭吉、中国文化との決別を唱える
日本国民の海外進出への支持の拡大
日本による清国情報の収集―─一八八〇~一八九四年
日清戦争の前兆―─一八九四年
日清戦争―─一八九四~一八九五年
下関条約―─一八九五年
三国干渉
日本勝利の衝撃
第5章 日本に学ぶ中国の近代化――一八九五~一九三七年
日本の勝利を分析
戊戌の変法と日本モデル
近衛篤麿と「アジア人のためのアジア」外交
日中協力関係のための基礎づくり
過激な排外主義から新たな親日政策へ
中国人官僚の日本視察
中国で顧問、教師として活動した日本人
教員養成と大学の発展
治安部隊の構築
新たな共和国への新たな法的枠組みの構築
中国人学生と日本人教師
日本で教育を受けた学生と中華帝国の終焉
学んだ教訓と先送りの協力関係
第6章 台湾と満洲の植民地化――一八九五~一九四五年
日本統治下の台湾――一八九五~一九四五年
日本統治下の満洲――一九〇五~一九四五年
日露戦争――一九〇四~一九〇五年
日本軍による満洲侵略
南満洲鉄道と関東軍による支配――一九〇五~一九三一年
満鉄
関東軍
張作霖、張学良と日本
満洲事変――一九三一年
満洲国――一九三一~一九四五年
満洲と中国のナショナリズム
台湾および満洲における植民地化の遺産
第7章 政治的混乱と戦争への道――一九一一~一九三七年
中国の混乱と辛亥革命
明治天皇崩御とその後の日本の混乱
混乱から軍部の支配へ――一九一一~一九三七年
中国の弱い政府と強い主張――一九一五~一九三七年
対華二十一カ条要求、パリ講和会議、中国ナショナリズムの噴出
ワシントン会議、原敬、幣原喜重郎
長江デルタの混乱と中国ナショナリズムの高揚
田中義一、蒋介石、済南での失敗
張作霖爆殺
濱口内閣とさらなる暗殺
満洲での不服従
日中の敵対化
蒋介石による日本融和政策の最後の試み
蒋百里と、中国による日本打倒計画
融和政策から統一戦線へ
戦争前夜
第8章 日中戦争――一九三七~一九四五年
戦争前夜の軍事バランス
華北と上海での軍事行動――一九三七年七月~一一月
南京大虐殺――一九三七年一二月
徐州と武漢の会戦――一九三八年
傀儡の国民政府
日本占領地域の統治
戦時の中国に在留した日本人
非占領地域
一号作戦
日本本土
戦争の遺産
第9章 大日本帝国の崩壊と冷戦――一九四五~一九七二年
大日本帝国の崩壊
大移動と日本人アイデンティティの縮小
満洲における日本資産の奪い合い
中国内戦と再統一――一九四五~一九四九年
連合国による占領と日本の再編成――一九四五~一九五二年
朝鮮戦争と日中関係の凍結――一九四八~一九七二年
植民地から通商パートナーに転じた台湾――一九四七~一九七二年
国交正常化前の日本と中国の接触チャネル――一九四九~一九七二年
周恩来と鳩山一郎の関係改善の努力――一九五三~一九五六年
中国の政治的締め付けと岸信介首相――一九五七~一九六〇年
貿易関係の改善とLT事務所――一九六〇年代
内向き中国と文化大革命――一九六六~一九六九年
朝海の悪夢と田中角栄内閣――一九七〇~一九七二年
第10章 協力――一九七二~一九九二年
限定的な開放
中国「改革開放」に向けた日本の全面的支援の始動
中国の財政緊縮――一九七九~一九八一年
日本の経済的助言、援助、協力
一九八〇年代の文化交流
一九八〇年代の政治的摩擦
天安門事件後、日本はすぐに制裁を解除
第11章 日中関係の悪化――一九九二~二〇一八年
天皇の中国訪問
一九九二年以降の日中関係緊張の原因
中国の愛国主義教育の推進
アジアで優勢に立つ中国
尖閣諸島問題
中国優位への転換――一九九三~二〇一二年
最悪の日中関係――二〇一〇~二〇一四年
習近平、安倍晋三、そして日中関係の安定化
持続する経済関係
二〇一四年以降の日中関係の緊張緩和
米中関係の緊張が高まる中での日本――二〇一七年
第12章 新時代に向かって
二〇一四年以降の日中関係
中国指導者の懸念と歴史の利用
日本との交流経験が少ない中国指導者
将来に目を向けつつ、歴史と向き合う
日中が歴史を直視するためにできること
新しいビジョン――政温経熱
日中協力のためのアジェンダ
主要人物の経歴
謝辞
訳者あとがき
原註
参考文献とさらなる読書リスト
上記内容は本書刊行時のものです。