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人は囚われてこそ
囚われで読み解く現代ストレス社会そして瞑想
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年4月24日
- 書店発売日
- 2020年4月24日
- 登録日
- 2020年3月11日
- 最終更新日
- 2020年6月26日
書評掲載情報
2020-07-05 | 北海道新聞 朝刊 全道版 |
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紹介
「ほどほどに囚われる」べし――
でも、このストレス社会でどうやって?
読んで気づきたい、読んで備えたい、読んで生かしたい
ストレス研究で知られる著者が伝授する目からウロコの一冊!
目次
はじめに/第一章 囚われは人の天性/第二章 現代ストレス社会の生みの親/第三章 だからこそ瞑想が効果的/第四章 ストレス再考/おわりに
前書きなど
はじめに
街の本屋で、「囚われ」がタイトルに含まれた本を見かける。多くは仏教的な考え方に立ち、迷い・苦しみ・悩みなどといった陰性感情から解放されるには、囚われない生き方が大切だと説く(例えば、『囚われない練習 人生を変える禅の教え』平井正修、宝島社)。
だが、「光強ければ、影もまた濃し」(ゲーテ)。
何事にも、光と影がある。囚われもまた然りで、囚われたからこそ、人は壮大な文明を創り上げ、時代と共にその光をますます強めてきた。しかし同時に、その影をますます濃くもしてきたのである。本書は、現代ストレス社会を問題とする。そのため、ますます濃くなってきた影に焦点を当てがちだが、ますます強まってきた光のことも折に触れて指摘したい。そうして初めて、囚われのダイナミックな姿が、分かろうというものだ。
ちなみに、辞書的な意味で言えば、囚われとは、敵に捕らえられること。そこから広がって、固定した価値観や考え方などに拘束されること、である。これらを踏まえた上で、かつ、仏教的な考え方も斟酌した上で、本書がどう考えるかといえば、
囚われとは、心理社会的欲求に突き動かされること。
このように定義すれば、人は寝ても覚めても囚われの身、ということになる。確かに、性的欲求は多分に本能的であろう。だが、相手に認めてもらいたいとか(承認欲求)、相手を意のままにしたいとか(支配欲求)、さまざまな心理社会的欲求が貼り合わさっているものだ。純粋に本能的だとしたら、人以前の動物レベルなわけで、囚われとは無縁だ。
こうした囚われの定義を踏まえ、筆者の考えるところを凝縮して表現したのが、本書のタイトル『人は囚われてこそ 囚われで読み解く現代ストレス社会そして瞑想』。具体的には、囚われは人の天性、現代ストレス社会の生みの親、だからこそ瞑想が効果的、と三つの側面から分析している。
先ず、『囚われは人の天性』(第一章)。囚われは、天性と言うのだから、死ぬまで変わらない生まれつきの性質。排除する必要はなく、できるものでもない。ほどほどである限り、善いだの悪いだの、ましてや美しいだの醜いだの、と言ってみても始まらない。
次いで、『現代ストレス社会の生みの親』(第二章)。なるほど、囚われは人の天性。だが、これの高じた現代人は、強く囚われる生き方に陥っている。その結果、現代ストレス社会が到来した。この因果関係を得心することが、きわめて重要である。
そして、『だからこそ瞑想が効果的』(第三章)。瞑想は、まったく囚われない生き方を希求する(動物レベル、とは逆の極端を目指す)修行法。瞑想の練習を通して、凡人の我々にもほとんど囚われない意識状態が感得できる。束の間の意識状態、でよいのだ。まったく囚われない生き方が希求された日には、禅の修行に励む僧侶でもない限り、そのことでかえって囚われる。果ては、人らしい生臭さまで失ってしまう。
総じて、囚われは人の天性。そう見極めた上で、一方では、囚われと現代ストレス社会との因果関係を得心する。いま一方では、瞑想の練習を通して、ほとんど囚われない意識状態を感得する。これら両者に後押しされながら、「ほどほどに囚われる生き方」へと、登り路を歩み出そうというのである。
本書の内容をイメージするには、簡単すぎる紹介だ。だが、ほどほどに囚われる生き方への登り路は、山あり谷ありの複雑な造作であるため、本書へ分け入って一歩ずつ進んでいただくしかない。いささか自己宣伝めくが、登り路にはさまざまな話題が仕掛けられているから、飽きずに歩を進めていただけることであろう。
ただし、留意されたい。本書は心理学者に限らず、ストレス研究の専門家が展開する従来のストレス論(本書末尾の第四章を参照)と、内容を異にする部分が少なくない。とくに、現代ストレス社会の成り立ちに焦点を当て、しかも囚われで読み解くあたりは、本書に独自のものである。ストレス研究とはこういうものだと、読者が誤解されても困るので、あらかじめお断りしておきたい。
上記内容は本書刊行時のものです。