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取引情報
ラストアイヌ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年3月24日
- 書店発売日
- 2020年3月24日
- 登録日
- 2020年1月9日
- 最終更新日
- 2020年6月26日
紹介
「アイヌ文化を見世物にするな!」
反骨の歌人森竹の魂魄の声が聞こえる。
アイヌ民族の復興を目指し、その怒りを文学に込めて闘い続けた歌人の叫び。
自らを和人に虐げられ、民族の誇りをなくした“最後のアイヌ”と呼ぶ、誇り高き反骨のアイヌ歌人、森竹竹市。
アイヌ民族にとって、明治以降およそ百年の歴史はつねに、屈辱にまみれたものだった。
しかしアイヌ三大歌人の一人と目される森竹の、その鋭い眼差しの先には、つねに未来があった。
激動の時代にアイヌを生きたその生涯を、彼の詩と、掛川源一郎氏の写真から紐解くノンフィクション。
目次
序 章 語るに落ちる
第1章 少年の肩
第2章 鉄道員
第3章 若きウタリに
第4章 『原始林』
第5章 アイヌを生きる
第6章 レラコラチ―風のように
終 章 「ラストアイヌ」の矜持
前書きなど
あとがき
筆者が最初に企画の印象を伺い、書きかけの原稿を見ていただいたのは、お付き合いの永い蕎麦店「春別」の安ヶ平文子女将でした。浦河町の町はずれ、「春別」という名の小さな小川の傍らで小さな蕎麦屋を営んでいた。十勝や道東へと峠越えする道すがら、行きと帰りの骨休めに必ず立ち寄っていた。店の女将は平取を故郷とするアイヌ人。心優しく言葉をかけてくれる温かな心遣いについあまえて常連客の一人となった。爾来十数年、現在は小樽市銭函で同名の店を家族とともに営む。
新鮮なマツブを細切り昆布と包み揚げにした具材を乗せる「ツブ昆そば」を看板メニューとして振る舞う人気店になっている。蕎麦の原料は幌加内産。毎朝、長男が粉を曳いて練り上げたそばを、注文を受けてからゆで上げる手法は、創業以来一貫している。
平取町出身の女将は、半世紀以上前に実家で行われたという北大によるアイヌの人たちからの血液採取にも協力した一人。
「アイヌの血を調べて本当にどんな人種なのか分かったのなら納得いきますが、学術調査に名を借りた行為には、いまも憤りを覚えます」と、十代の頃の疵が今も残るという。
叔父の川上勇治は『サルウンクル物語』の著者。女将自身も読書大好きで、知識欲旺盛で行動的な女性で、温かな人柄の持主である。
筆者が森竹竹市の存在を知らされたのは、文中でも紹介した庁立白老病院院長で、″コタンの赤ひげ″と呼ばれて愛された高橋房次の取材途中であった。現在は森竹竹市研究会会長でもある伊東稔さんが、房次の自宅傍に在住されていた折に訪ねて、存在を聞かされていた。同町職員の武永真氏の薦めと協力を得て、森竹竹市研究会が整理した資料の提供等を賜り、なんとか四月の「ウポポイ」発足に間に合わせることが出来た。
同研究会の皆様、とりわけ武永真、伊東稔、山本融定、大須賀るえ子の各氏。また「白老ペン」同人の加藤平八郎氏。そして森竹家の森竹ミエ子氏には、大変お世話になりました。
本書の刊行に際しては、創業二○周年という節目にご尽力を賜りました株式会社柏艪舎山本光伸代表、編集の青山万里子担当に心よりお礼申し上げます。
二〇二〇年一月 川嶋康男
上記内容は本書刊行時のものです。