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曙に咲く
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2018年11月16日
- 書店発売日
- 2018年11月15日
- 登録日
- 2018年10月9日
- 最終更新日
- 2018年11月15日
紹介
北海道命名150年!
振り向いてはいけません。前だけ向いて生きなさい。
北海道における畜産業発展に大きく貢献したエドウィン・ダンとその妻、鶴の愛の物語。
津軽の商家に生まれた鶴は、教育熱心な両親と双子の兄とともに何不自由なく暮らしていた。
やがて戊辰の役が終わり、母を病で失った鶴は北海道に渡る決心をする。
外国人技術者や政府の要人向けの、七重村郊外の峠下ホテルで働きはじめた鶴は、そこで
開拓使御雇農業方のアメリカ人エドウィン・ダンと知り合う。互いに惹かれ合い結婚し一児を
もうけるも、そんな二人に向けられる世間の目は冷たかった。時代の荒波に翻弄されながらも
一途な思いを貫いた一人の女性の物語。
目次
第一章 ねぷた囃子
第二章 暁天の星
第三章 翼ひろげて
第四章 ミセス・ダン
終章 玉響の
あとがき
前書きなど
【あとがき】
この物語の終盤を綴っていた二〇一八(平成三十)年九月六日、北海道胆振東部地震が起きました。
緑美しい山々は抉られ、大地は歪み、四十一名もの方々が尊い命を奪われたのです。重軽傷を負われた方も、七〇〇名近くに上りました。
相次ぐ台風に続く大地震は、実りの秋を目前にした北の大地に、深く鋭い傷痕を残しました。北海道全土が停電に見舞われたブラックアウトや、各地で発生した断水も、道民のみならず多くの観光客をも苦しめました。苦しんだのは、人間たちだけではありません。
飲み水がたりず切なげに鳴く子牛、搾乳の回数が減って乳房炎に罹った乳牛、物音に怯える放牧馬、骨折してしまった種牡馬、脚を洗う水がなくなって皮膚病になりそうな競走馬……。
テレビに映し出されたのは、泉下のエドウィン・ダンが目にしたら、激しく心を痛めるに違いない光景でした。
北海道の酪農と競馬の父、エドウィン・ダン。彼は、最初の妻である鶴が亡くなった翌年に、アメリカ公使館の参事官となり、さらにその翌年には代理公使、一八九三(明治二十六)年には、駐日アメリカ公使の座に就きました。鶴との間に設けたヘレンのほか、二番目の妻となったヤマとの間には、四人の男子に恵まれます。一八七三(明治六)年に来日して以来、八十二歳で亡くなるまで約五十八年間、つまり人生の三分の二以上を日本で過ごしました。青山霊園外人墓地の一角には、エドウィン・ダンの墓と鶴、ヤマの墓が並んでいます。
私がエドウィン・ダンの妻、鶴に一目惚れしたのは、六年前の一月でした。短い新聞記事に添えられた写真を見るなり、鶴の虜になったのです。
資料の少なさに音をあげそうになった日もあれば、新聞に掲載された写真が別人のものだったとわかって、言葉も出ないほどがっかりした日もありました。
それでも、多くの方から御力添えをいただいて、本作を書き上げることができました。
殊に、エドウィン・ダン記念館の園家廣子さんは、長年の御研鑽の成果を惜しみなく御教示くださいました。また、七飯町歴史館で学芸員をお務めの山田央さんは、資料の精査をした際に御懇切にお付き合いくださいましたし、清藤次郎盛秀の御子孫でいらっしゃる清藤盛正さんは、数々の貴重なお話を聞かせてくださいました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
処女作『煌浪の岸』が刊行されてから、今年で二十年を数えます。私は、二十年間にわたって、ずっと小説に片思いしてきたのかもしれません。この片思いを楽しく続けて来られたのは、温情あふれる周囲の方に恵まれたおかげです。中でも、淺原千代治さんや井上由美子さん、上田恭弘さん、柴田剛さん、立花奈緒さん、八木由起子さん、和田由美さんには、そっと背中を押していただいたり、ときにはお尻を叩いていただいたり、大変お世話になりました。これまでのお支えに、心から感謝しております。
このたびも気韻のある装画を描いてくださった安里英晴先生、そして、本作でも「伴走」してくださった編集者の青山万里子さん、本当にありがとうございました。
二〇一八年 九月
蜂谷 涼
版元から一言
北海道の歴史をつくった人々が激動の時代のなかで生き抜く姿が感動的に描かれています。
とくに、終章のラストは秀逸です。
上記内容は本書刊行時のものです。