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サノクス令夫人
コナン・ドイル・ストーリーズ2
原書: The Conan Doyle Stories Tales of terror
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2018年8月
- 書店発売日
- 2018年8月24日
- 登録日
- 2018年7月27日
- 最終更新日
- 2018年10月2日
紹介
シリーズ〈世界の文豪〉第6弾。ドイル自選集、恐怖篇!
人間にとって最も恐ろしい存在は、人間自身にほかならない。
名探偵シャーロック・ホームズの生みの親、コナン・ドイル。
彼はまたボクシング、キツネ狩り、そして 恐怖小説の卓越した著者でもあった。
彼が晩年に自ら編みなおした短編集『コナン・ ドイル・ストーリーズ』より、恐怖を題材にした
6短編を収録。
人間心理に通暁しているドイルの手にかかると、恐怖小説は単なる恐~い物語ではすまなくなる。
(株)柏艪舎学校事業部 インターカレッジ札幌 第5回翻訳コンクール最優秀者翻訳作品。
目次
高空の恐怖 3
革の漏斗 35
新しい地下墓地 59
サノクス令夫人 89
紫ホタル石の洞窟の怪 111
ブラジル猫 145
訳者あとがき 185
前書きなど
【訳者あとがき】
コナン・ドイル(一八五九年~一九三〇年)は「シャーロック・ホームズ」シリーズで知られていますが、
ほかにも長編小説や短編小説など数多くの著作があり、その中から恐怖にスポットを当てて再編したのが、
この短編集「サノクス令夫人 コナン・ドイル・ストーリーズ2」です。現代風に言えばSFから超常現象
まで、医師であり、自ら飛行機の操縦も行ない、心霊現象への興味も深かったドイルの幅広い人生経験の反
映された六編が集められています。
「高空の恐怖」は、一九一三年にイギリスのストランド誌に掲載されました。ライト兄弟が初の有人動力
飛行に成功したのが一九〇三年ですから、飛行機のごく黎明期の作品ということになります。
現代に比べればごく低い高度までしか飛ばなかった時代に、ドイルの想像力は、まさに現代のわたしたち
が飛行機で行く高度である三万フィートから四万フィートの世界に読者を誘い、雲や風の状態、高空で見
た景色を、詳細に生き生きと描き出しています。そして、そこに生息するかもしれない怪物までも……。
また、「革の漏斗」では、現代では超常現象の一つとして考えられている〝残留思念〟を取り上げていま
す。一人のフランス人骨董品収集家の所有する古い革の漏斗に残るパワーを通じて、中世に実際に起こっ
た女性侯爵による連続毒殺事件の取り調べ室をわたしたちの前に再現してくれます。
「新しい地下墓地」は古代ローマ時代、キリスト教がまだ非公認の宗教であったとき、キリスト教徒たち
を密かに埋葬したカタコンベを舞台に、そこに仕組まれた罠を描いた作品です。
「サノクス令夫人」では、華やかなロンドン社交界を背景に、ロンドン屈指の外科医と美しい貴族の令夫人
との間に起こった一つの事件を、「紫ホタル石の洞窟の怪」では、イングランド中部の美しい丘陵地帯に転
地療養に来ていた病弱な男性が、村人たちの間で不気味な噂のある巨大洞窟で行なった冒険を記しています。
最後の「ブラジル猫」は、大富豪の貴族を親戚に持ってはいるものの、自身は借金で首の回らない貧乏青年
が、「ブラジル猫」という猛獣を使った陰謀にはめられる事件を著しています、この猫は実際には存在せ
ず、おそらくは南米に生息する黒ジャガーかなにかの一種だと思われます。
このように、物語の舞台はイギリス国内にとどまらず、パリやローマにも飛び、そして高空から地下まで、
さらには古代ローマ時代からドイルの生きていた時代までといった具合に、四次元にわたる広がりを見せて
います。
あくまでもフィクションではありますが、登場する地名、歴史的背景などは事実に則したものが多いため、
ドイルの時代の読者たちは突拍子もない絵空事というより、「もしかしたら本当にあるかもしれない」「こ
んなことが起こっても不思議ではない」と、興味と恐怖を掻き立てられたことと思います。実際、それから
百年ほどが経過した現代に読んでも、まったく新鮮さを失わず、今の時代にも通じることの多い作品です。
日本で言えば、明治時代半ばから大正時代にあたります。その時代に身を置いた気分で読んでいただけたら
おもしろいと思うのですが、いかがでしょうか。
二〇一八年七月 森田和子
上記内容は本書刊行時のものです。