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日本料理力 栗本 併治(著) - 柏艪舎
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日本料理力 健康長寿の秘密

発行:柏艪舎
発売:星雲社
四六判
168ページ
並製
定価 1,300円+税
ISBN
978-4-434-24940-2
Cコード
C0095
一般 単行本 日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
不明
初版年月
2018年7月
書店発売日
登録日
2018年6月19日
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紹介

長野県知事推薦!
これぞ日本のおもてなし

 東京を創業の地とし、100年以上の歴史を誇る『ホテル龍名館』。
 その伝統を受け継ぐ総料理長の栗本併治氏が、お客様の笑顔の為に、美味しさのみならず滋養を追い求めた結果、日本人の健康長寿の根幹に辿りつきました。
 日本一の長寿県「長野」の秘密と「和食」の力を解き明かし、季節を彩る究極の献立もご紹介します。

目次

はじめに

第1章 和食の魅力
     〈和食の基本となるお話〉
     〈「和食」が文化である理由〉
     〈水によって育てられた和食文化の話〉
     〈「旨み」と「うま味」の話〉
     〈調味料の話〉
     〈「滋味」と「地味」の話〉
     〈世界の料理人を魅了する包丁の話〉
     〈和食の精神に繋がるおもてなしの話〉

第2章 世界一の健康長寿国「日本」、日本一の長寿県「信州長野」の秘密
     〈信州力の原点は予防医学の考え〉
     〈長野県を知る〉
     〈健康長寿のポイント〉
     1.気圧環境について
     2.よく食べよく学びよく働くこと
     3.野菜パワーについて
     4.郷土料理について
     5.温泉王国について
     6.山菜やキノコ、クルミにみる森林文化
        〈キノコパワー〉
        〈クルミパワー〉
     7.発酵文化について
        〈発酵食品について〉
        〈麹文化について〉
     8.幸せを運ぶ効能食材「わさび」について
     9.長寿県を支える行政の取り組み

第3章 新たな食の風景を提案するという思いと挑戦

第4章 龍名館流「美と健康長寿〝究極の献立〟」披露

第5章 大きな変革期を迎えた日本食文化の環境
     〈沖縄の「長寿神話」崩壊に学ぶ〉
     〈長寿の島「奄美大島」に学ぶ〉
     〈昨今の食風景の変化〉
     〈食育の重要性〉
     〈スローフードの考え方〉

第6章 明日へのメッセージ

 あとがき

前書きなど

はじめに


二〇一三年九月七日、アルゼンチンの首都ブエノスアイレス現地時間、午後五時二十分―
「開催都市 TOKYO!」
それは、ジャック・ロゲICO会長によってコールされた、二〇二〇年の第三十二回夏季オリンピック決定でありました。
その瞬間の歓声と喝采は、何を意味していたのでしょうか。

振り返れば、アジアで初めて開催された一九六四年、第十八回夏季オリンピック東京大会は、敗戦後の日本が見事に復活を遂げた象徴でもありました。
沖縄返還で新たな一歩を踏み出した一九七二年の第十一回冬季オリンピック札幌大会では、ジャンプ七十メートル級で金銀銅のメダル独占、日の丸飛行隊が「勇気と自信」を魅せてくれました。
そして、二十世紀最後の五輪となった一九九八年の第十八回冬季オリンピック長野大会においては、ラージヒル団体が見事な逆転劇で金を獲得、白馬の伝説は「あきらめない心と信じる心」を教えてくれました。
いずれも記憶の中で鮮やかに蘇ってきます。

あのときの歓声と喝采は、何を意味していたのでしょうか。
それは、日本人としての母国に対する誇りであり、郷土を愛する思いではなかったのでしょうか。

二〇一八年の一月十六日、観光庁が発表した数字にあらためて驚きました。
二〇一七年度の訪日外国人観光客数が累計で二、八六九万人(前年比一九・三%増)を記録したというのです。
二〇一五年に一、九七三万人という実績から、訪日客二千万人突破も夢ではないと報道されてから僅かに二年の快挙です。日本と海外を結ぶ航空路線の拡充や格安航空会社(LCC)の便数増加、訪日客誘致に向けた官民の取り組みなどが奏功し、アジアを中心に増加が続いた結果(中国人に対するビザ発給要件の緩和も大きい)だということでした。
しかしながら喜ぶなかれ、世界の外国人訪問者数ランキングで日本はなんと十六位という実態をご存知でしょうか?
実は、二〇〇三年の訪日外国人旅行者数はわずか五二四万人でした。その後、危機感を覚えた政府が本格的に腰を上げ、ビジット・ジャパン・キャンペーン(訪日外国人旅行の促進活動)を展開させたことで、やっとこの数字なのです。
政府は二〇二〇年の東京オリンピック開催年には訪日客四千万人の目標を掲げています。目標の達成には、空港や港などのインフラ整備や、文化財や国立公園をはじめ地方での観光資源の掘り起こしを進めるなどの具体的戦略を実施するとのことです。
 
観光の定義は中国の易経(中国五経の筆頭に置かれる儒教の経典)によると〝国の光を観る〟と記されています。訪れる国や地域の、先人たちが創りあげてきた様々な尊き文化を五感で体験し、学んだことを実生活に活かしていくことが大事だということなのです。
あらためて日本の誇るべき文化は何か、日本の国民はその文化を理解し世界へしっかりと発信する努力をしているのだろうか、という検証が必要なのではないでしょうか。
 
先述のオリンピック競技で問われるのが「心技体」であります。
その精神の基本となる「知」・「体」・「徳」は、まさに人間の育成において欠くことのできない重要な要素であり、「幸せに生きる力」の〝もと〟となります。その原点が「食」であります。
今、世界はオリンピック開催国の日本に、間違いなく関心をもっています。
観光客が増えつつあるこのタイムリーな時期に発信すべきは、「日本の食文化」に他なりません。おもてなしの心とともに優れた日本の食卓を、今こそ最大の観光資源として開花させるべきと考えるのです。




あとがき


近年「健康長寿と食事」はメディアでも広く取り上げられ、「健康食ブーム」も今では当たり前になりました。
「食事は医療の根本であり、病気を治療する〝薬〟と、体の不調を改善したり健康を増進する〝食事〟とは、本来根本は一緒であり、日常から食生活に留意する事が大切なのだ」と東洋医学では『医食同源』を提唱しています。自然界にある食材をバランスよく組み合わせて食事を摂る事は、病気を予防し、健康に繋がります。食するという行為は命の源であり、命を養う食事を摂る事が健康に通ずる、ということは常に感じています。
私が「花ごよみ 銀座店」で料理長をしていた時、常連の男性客が珍しく一人でランチに来られたことがあります。ご友人方はイタリアンを食べに行ったそうなのですが、この方は昨日から風邪で体調が悪く吐気もあったため、消化に良い物を、と日替り和膳を注文されました。
カウンターにいた私は、胃をまず温め、汗を出した方が良いと考え、熱々のおじや風〝海鮮おこげ〟を勧めさせていただきました。その夜、会社の同僚を連れて再び来店されたのです。
「いやー、板長さん! お昼におこげをいただいて社に戻ると、汗がドッと吹き出して体中が熱くなっちゃってね。その後ビックリする程体が楽になったんだよ! まさかあれだけでと思ったけど、食に勝る薬は無いというのはこの事だネ。ホント板長さんに風邪を治してもらって嬉しくて、お礼がてら部下を連れて飲みにきたよ!」
この時は私も嬉しさに言葉もありませんでした。
相手の事を考え、思いやって食事を作る事は、まさに医療に繋がっているのです。今の若手料理人達にも、古き良き日本の工夫された食事を改めて見直し、身近に感じてもらいたいものです。そして私も含め、心して命を養う料理造りに精進して行かねばならないと思っています。

私がこの世界に飛び込んだ時、最初に言われたのが、「料理人になれ! 調理人にはなるな!」ということです。
調理とはただ言われたとおりに、自分の考えを持たずに業務として作るもので、料理とはお客様(相手)の事を考え、喜んでもらえる様に工夫して造るものです。
料理人は調理場という器をいかにきれいに使って美味しい料理を〝演じて〟いけるのか、料理とは「四隅の精神」の基本の上に成り立つ芸術品なのです。
私が修業時代、親方から繰り返し繰り返し口うるさいほどに注意されたのが、「隅々をきれいにしろ。調理台の四隅、包丁・まな板の四隅、流しの四隅、器の四隅……真ん中は誰でもきれいにできる。手の届かない、目の届かない裏側まで注意を払ってきれいにしろ。それを毎日毎日少しずつでもやっておくと、一年中きれいな中できれいな調理台で料理を造る習慣が付くのだ」でした。
その言葉を忘れる事なく、この先も引き継いでいかなくてはなりません。

 一、四隅の掃除 
 二、四隅の包丁 
 三、四隅の料理 
 四、四隅の盛付 
 五、四隅の食膳

料理をする場所をきれいにしていれば、おのずと道具、包丁の汚れが目立つもの。それらもすべてきれいにする事で、きれいで安全な料理が出来上がり、きれいな器に見事な盛り付けが完成する。それを運ぶ膳・盆は細心の注意を払ったきれいなものでなければお客様のお口に入れてはいけないのです。
この精神は〝料理人〟としての基本精神なのです。

十年以上前、六本木の『花ごよみ』での常連客とのやりとりです。
カウンターが指定席で、〝ハンドトゥハンド〟を大変好んでいた顧客にお椀を出したところ、ふたを開けるやいなや、
「ああーこの香り! この香りだよ……人を幸せにしてくれる香りだねぇーッ!」
と言って、満面の笑みをくださいました。料理人としてこれ以上の幸せがあるでしょうか。本当に料理人冥利に尽きる瞬間でした。
しかしひとつだけ心が痛むのは、フランスや欧米などに比べると、日本での料理人の地位はかなり低く、社会的地位を案ずる若手が多い事です。せっかく日本料理を目指そうと夢みている若者の熱意が削がれるのはとても残念です。若手達が日本料理の未来に明るい希望を持てるような社会環境が一日も早く整ってくれる事を切に願います。

最後になりましたが、私ごとき修業道半ばの料理人が分限をわきまえずに、偉そうに、〝人生訓〟らしきご託を並べて参りました。今回のお話をいただいた時は、自分などとんでもない……と何度も躊躇いたしましたが、食に携わる仕事に巡り合い、心の中で誇れる職業として料理人人生を歩ませていただいているのは、現・龍名館との運命的な出会いがあったからこそです。
永きにわたり私を見守り、支えてくださった、浜田章男会長を始め、浜田敏男社長がいらっしゃらなければ、今の私は存在いたしませんでした。本書出版に際しましても、温かく後押ししていただきました事は、今までの言い尽くせない感謝と御恩も含め、私が龍名館に伝え、残していかなければいけないという一念にさせる、大きな力となりました。
また、今まで私についてきた弟子達や一緒に働いてきた仲間達、この書籍を作成するにあたり、取材や人脈の拡張などに多大なご協力をいただいた、龍名館の顧問でもある株式会社プライムマネジメントコンサルティング代表の出村明弘氏、そして私を支えてくれた家族に対し本当に深く感謝申し上げる次第でございます。最後に、本書出版に当たり柏艪舎の山本哲平さんにはひとかたならぬお世話を下さり感謝に絶えません。一介の料理人に過ぎない私の日本料理の可能性への思いを形にし、後進や次代を担う子育てをされている方々へ稚拙ながらも伝えたいという無謀な挑戦に賛同下さり、遅筆に粘り強く付き添いいただかなければ本書の完成は叶いませんでした。

 平成三十年五月
株式会社龍名館 総料理長 栗本併治

版元から一言

著者自らが描いた『お品がき』的な献立がフルカラーで収録されており、
一見の価値があります。

著者プロフィール

栗本 併治  (クリモト ヘイジ)  (

栗本併治(くりもと・へいじ)
龍名館 総料理長
日本料理人生活45年 会席料理が専門。
会席料理を中心に様々な日本料理専門店で料理の研鑽を積む。
40歳で1899年創業の龍名館に入社。「花ごよみ六本木」、「花ごよみ銀座」の店長兼料理長を歴任。2009年より「ホテル龍名館東京」のメインダイニング「花ごよみ東京」の料理長、2012年より龍名館 総料理長に就任。コンビニエンスストアの商品開発や料理教室の講師など活動の場を広めつつ、現在は後進、特に未来を担う若手料理人の育成に力を注ぐ。
趣味は、絵画、卓球、ジャンルを問わない食べ歩き。特に絵画は料理と同じく情熱を傾け、風景画、花、魚などを中心に創作。お客様から料理同様の評判を得ている。(本著の挿絵は全て自筆)

2000年度 読売新聞社郷土料理伝統技能優秀賞受賞

-料理信条-
私共が専門とする会席料理は、宴席に供される料理のことです。日本料理に於いては、儀式などで出される最も正当な料理です。よく懐石料理と混同されますが、懐石料理は「茶」を愉しむものであり、会席料理は「酒」を愉しむものです。会席料理は、陸上で云えば十種競技に当たり、様々な日本料理の専門要素の集積であると捉えています。先人達が作り上げたものを踏まえたものでなければ、新しいものはできません。職業料理人としてお客様に喜んで頂ける料理を信条に、料理サービス渾然一体の美味しい「味」の追求に、日々専念して料理をしております。
現在、未来の龍名館レストラン ミッション&ビジョン~日本料理文化の伝承と創造/もっと身近に日本料理を!

上記内容は本書刊行時のものです。