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森ヒロコ作品集
- 初版年月日
- 2018年5月
- 書店発売日
- 2018年5月1日
- 登録日
- 2018年4月11日
- 最終更新日
- 2018年5月8日
紹介
世界的に有名な銅版画家、森ヒロコ最後の作品集
美術界に名を馳せ、2017年に惜しまれつつこの世を去った森ヒロコ氏の集大成
目次
Ⅰ 銅版画
Ⅱ ドローイング
Ⅲ 森ヒロコの世界
1.マケドニアのアートコロニー
2.東欧の旅
3.忘れられない庭
4.くらしの博物ごよみ
5.森ヒロコのいた場所―長谷川洋行と歩んだ人生
略歴
展覧会・受賞歴
作品リスト
前書きなど
あとがき
森ヒロコさんに癌が見つかったのは、2014年1月。美術館とその収蔵品の今後を常々考えていただろう長谷川さんにとっては、タイムリミットをつきつけられた思いだったかもしれません。同じ2014年夏、私は仕事を辞めて北海道に戻りました。少しでも多くの時間をヒロコさんと過ごしたいと、版画教室に通うことにしました。版画教室の一期生だった私としては、教室の最後を見届けることになるだろうか、という思いもありました。
長谷川さんから収蔵品の整理を任されたのは、時間のたっぷりある私がたまたま近くにいたからにすぎません。収蔵品のデータベース化作業をすすめていると、長谷川さんが「森ヒロコのカタログ・レゾネを作りたい」と言い出しました。そのような経緯で、「森ヒロコ作品集」の編集を引き受けることになりました。然るべき適任者が他にいたのではないか、と今でも思います。
私ひとりの手には余る作業で(長谷川さんは編集作業は全面お任せ、ヒロコさんは相談できるような状態ではなく)、版画教室のかつての生徒であり、ずっと長谷川夫妻の近くにいた寺田千秋さんに助けを求めました。まず寺田さんと版画作品の掲載順と大まかなレイアウトを決め、さらに作品の技法特定に関しては、版画教室の生徒であった土田より子さんと福原秀貴さんにも協力をお願いしました。作品の画像をモニター上で拡大し、それでも疑問の残る作品は小樽のアトリエで現物に当たりました。
レイアウトの細かい詰め、ドローイング作品の選択もこのメンバーですすめました。頭を寄せて銅版画の細部を検討したり、美術館の床にドローイング作品を並べて掲載順を考えたり、昔の若い友人たちとの再会そして作業は思いがけない至福の時間でした。
長谷川夫妻の交際範囲は、有名無名を問わず多士済々の人々にわたり、その一端は私も垣間見ていました。長谷川さんには、作品集のための「森ヒロコ論」を依頼する人物の心づもりもあったようです。また、お願いすれば、森ヒロコの魅力やエピソードを寄せてくださる方はたくさんいらっしゃると思います。心当たりがなかったわけではありませんが、私の判断でどなたにも依頼しませんでした。その点は、多くの森ヒロコファンにお詫びしなければいけないかもしれません。
「Ⅱ ドローイング」はアトリエに残された作品から選びましたが、282「無題」と292「花ビラ」はそれぞれ木下肇さん、小林功男さんの所蔵です。お二人には、作品の撮影と画像データの提供をお願いしました。
「Ⅲ 森ヒロコの世界」の構成に当たっては、夫妻の友人である北海道新聞社の森川潔さんにご尽力いただきました。初期のNDA画廊を知る三神恵爾さん、中村惠一さんからは当時のことを伺い、写真をご提供いただきました。ヒロコさんの甥の木下肇さんには、資料や写真のご提供をはじめ、作業をすすめる上で多くの便宜を図っていただきました。
作品の画像データ化では、長谷川さんと長い付き合いのあった、小樽の石井印刷にご面倒をかけました。そして、遅々としてすすまない素人編集の作業に辛抱強くつき合ってくださった柏艪舎の山本哲平さんに心よりお礼を申し上げます。
「森ヒロコ作品集」の刊行はぼくの最後の仕事、と長谷川さんがもらしたことがあります。口にはしなかったけれど、妻への最後のプレゼントであったと思います。
長谷川さん、ヒロコさん、間に合わなくてごめんなさい。
2018年1月 辻中裕子
上記内容は本書刊行時のものです。