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団体旅行の文化史
旅の大衆化とその系譜
- 初版年月日
- 2021年9月20日
- 書店発売日
- 2021年9月17日
- 登録日
- 2021年7月9日
- 最終更新日
- 2021年10月25日
書評掲載情報
2021-10-31 |
産經新聞
朝刊 評者: 小牟田哲彦(作家) |
2021-10-30 | 朝日新聞 朝刊 |
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紹介
団体旅行と聞くと、旗を持った添乗員に連れられた、主体性のない旅行者の集団、といったイメージが思い浮かぶ。
近年の観光学もまた団体旅行に対してはネガティブな評価をしがちで、団体旅行の発達によって「旅行のワンパターン化」ないし「旅行の画一化」が拡大されたといった言説が目立つ。
しかしながら、団体旅行の発展によって、誰もが安全に旅ができる「旅の大衆化」が進んだこともたしかであり、むしろ肯定的にとらえることもできよう。旅行機会そのものがまだ少なかった時代にあって、旅が体験できる貴重な手段でもあったのである。
一方で、団体旅行の発展は、交通網の整備、宿や食事の提供といった旅を支える諸条件はもちろん、旅人と旅先とを結びつける仲介者を必要とし、同時代の社会の変化と密接な関係にある。
そもそも、現代の多様化した旅も、こうした団体旅行のノウハウと経験の積み重ねを応用することで成り立っている。こうした点もまた、これまで十分に検討されてきたとは言えず、あらためて考察する意義があろう。
本書では、日本社会に団体旅行が定着していく過程を時代背景とともに読み解き、団体旅行の発展を日本の観光文化史のなかに位置づける。
目次
はじめに――旅の大衆化とその系譜
Ⅰ お参りの旅
第1章 伊勢参りとおかげ参り
1 ケンペルがみた旅人の群れ
2 名所図会と道中案内書
3 講と代参のシステム
4 おかげ年の群参行動
5 「抜け参り」と女かくれ道
第2章 元祖旅行業としての御師
1 旅する御師
2 みやげは伊勢暦
3 御師邸と神楽殿
4 心づくしの饗応
第3章 伊勢参宮から全国周遊へ
1 ある商人一行の「伊勢参り」
2 宿の良し悪し
3 「観光地」での現地案内サービス
4 「中食」に酒はつきもの?
5 名物に旨いものなし?
第4章 先達に連れられ富士登拝
1 遥拝から登拝へ
2 富士行者と信仰の広がり
3 富士講と先達
4 案内書と御縁年
5 「再生」への願い
第5章 鉄道と団体参拝
1 明治の伊勢参り
2 旅館と駅の集客活動
3 初めての団体貸切旅行
4 戦後復興と「団参」の賑わい
Ⅱ 学びの旅
第6章 通過儀礼としての旅
1 羽山神社のゴンダチ
2 羽山ごもりと七つ子参り
3 十三参りと成年儀礼
4 若者仲間の伊勢参り
第7章 修学旅行のあけぼの
1 長途遠足と身体鍛錬
2 行軍から見学へ
3 女学生と修学旅行
4 鮮満修学旅行の広がり
第8章 参宮と修学旅行
1 大義名分となった参宮修学旅行
2 みやげ物店の記録にみる旅のシステム
3 終戦と修学旅行の復活
4 参宮から見学へ
5 あこがれの「あおぞら号」
第9章 添乗員の活躍
1 旅行業と添乗員
2 「集約臨」と必需品あれこれ
3 各地からの定番コース
4 教職員の研修旅行
5 修学旅行専用電車の登場
Ⅲ 親睦の旅
第10章 戦後復興と団体旅行
1 慰霊の旅からの再出発
2 少なかった旅行機会
3 メーカーの招待旅行
4 信用金庫の積立旅行
5 国鉄共催の周遊旅行
第11章 海外旅行の大衆化
1 戦後の海外旅行再開と「自由化」
2 「自由化」まもないころのチャーター旅行
3 定番みやげとショップビジネス
4 添乗のスペシャリスト養成
5 驚きのシルバーツアー
第12章 新婚旅行とアンノン族
1 旅する女性の二極化
2 新婚旅行の大衆化
3 BGの旅
4 ディスカバー・ジャパンとアンノン族
第13章 地域と旅行業①――昭和初期創業の「山形旅行倶楽部」
1 洋品店から旅行業へ
2 戦前のバス旅行
3 参拝団からの戦後復活
4 臨時列車の団体旅行
5 「わが仕事に悔いなし」
第14章 地域と旅行業②――信州伊那の「全日本株式会社」
1 伊那自動車の「観光貸切課」
2 「常会」から温泉旅行へ
3 峠越えの「一泊一夜行」
4 「諏訪湖を買う!」
5 小学生たちからの贈り物
6 この道六〇年の「添乗哲学」
おわりに――日本文化のなかの団体旅行
註
参考文献
上記内容は本書刊行時のものです。