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農の原理の史的研究
「農学栄えて農業亡ぶ」再考
- 初版年月日
- 2021年1月30日
- 書店発売日
- 2021年1月26日
- 登録日
- 2020年11月9日
- 最終更新日
- 2021年1月25日
書評掲載情報
2021-05-01 | 日本経済新聞 朝刊 |
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紹介
農業の工業化に引きずられるかのように、農学の工学化がとどまることのない今、果たして工学に従属しない「農学」はどのようにして存在可能なのか、という問いから書き起こす、今までにない農学思想書。「農本主義」の提唱者にして我が国の代表的農学者である横井時敬を軸に、満洲移民政策に深く関与した橋本傳左衛門、報徳思想に傾斜した転向農学者杉野忠夫、ナチス農業政策の満洲移植を試みた法学者川島武宜、公害病研究でも著名な反骨の農学者吉岡金市ら、極めて個性的な農に関わる思想と実践を限界と可能性の視点から詳述。中・東欧やロシア各国の農業政策と農学のなかに日本の農を置き、旧来の農本主義的疑似ロマン主義に流れることなく、医・食・心・政・技を総合する、未来の農学を目指す史的試論。農学を原理的に塗り替えんとする意欲作。
目次
■序章 科学はなぜ農業の死を夢見るのか
1 食と農の死
2 北一輝の消化器消滅論
3 農学栄えて農業亡ぶ
4 農学の思想を求めて
おわりに――人類史の臨界点で
■第1章 夢追い人の農学――「チャヤーノフと横井時敬の理想郷
1 チャヤーノフの理想郷
2 日本のチャヤーノフ体験
3 農業経済学者のユートピア
4 労働と科学技術
5 小農経営と自然環境――チューネンを媒体に
6 躓きの石としての文化
7 「台所」と「農業」の廃止
おわりに――「エコノミーとエコロジー」を超えて
■第2章 八方破れの農学――横井時敬の実学主義
1 農界の巨星、墜つ
2 横井時敬とは誰か
3 農学とその周縁
4 農学のかたち――『合関率』から
おわりに――民学の挫折
■第3章 大和民族の農学――橋本傳左衛門の理論と実践
1 橋本傳左衛門とは誰か
2 「目標」なき農民たち
3 チャヤーノフとの対決
4 クルチモウスキーの哲学
5 結節点としての『農業経営学』
6 橋本農学の崩壊
おわりに――共存と発展
■第4章 転向者の農学――杉野忠夫の満洲と「農業拓殖学」
1 なぜ、杉野忠夫か――「マルキストの記憶」と「満洲の記憶」
2 マルクスから尊徳へ
3 満洲移民から海外拓殖へ
4 「農業拓殖学」に埋め込んだ記憶
おわりに――「極重悪人」の農学
■第5章 「血と土」の法学――川島武宜のナチス経験
1 世界のなかの日本とドイツ
2 絶望する農民たち
3 「土地なき民」からの脱却
4 ナチスの世襲農場法――一九三三年九月三十日、ベルリン
5 世襲農場法の思想的源流――ダレーの「血と土」
6 満洲国の開拓農場法――一九四一年十一月十三日、新京
7 世襲農場法から開拓農場法へ
おわりに――満洲の血と土
■第6章 反骨の実学――吉岡金市による諸科学の統一
1 「立派な人」
2 自己形成期――岡山という条件
3 日本農業の機械化に賭ける
4 「東亜」から「戦後」へ
5 スターリニズムに根差した総合的農学
6 公害の学問領域横断的な研究――イタイイタイ病
おわりに――横井時敬との奇妙な類似
■終章 農学思想の瓦礫のなかで
あとがき
註/参考文献/人名索引
上記内容は本書刊行時のものです。