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ねがいごと
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2008年11月
- 書店発売日
- 2008年10月30日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2018年1月30日
紹介
子供のいない夫婦にクリスマスの夜突然のプレゼント。それはまちにまった子供。でもふたりはいつのまにか心臓(こころ)に変わってしまって…。現代フランスの人気作家が親と子の愛情について描く。親子で読んで楽しめます。
前書きなど
作者のマリー・ンディアイは、一九六七年、フランス中部のピティヴィエという町に生まれ、パリ郊外で育ちました。母親はフランス人、父親は西アフリカの国セネガルの出身です。いわゆる「白人」と「黒人」のハーフですが、両親は早くに別れ、マリーは母親のもとで育ちました。アフリカ文化とほとんど接触することなく、フランスで、フランス人のあいだで生まれ育ったマリーは、それだけに、まわりと異なった顔だちをもつ自分に対する人びとの視線にさらされます。そんな環境のなかで、彼女は幼いころから、名前や肌の色と関係なく踏みこんでいける文学の世界に親しみ、作家を目指すようになります。
十七歳という若さでデビューしたのち、今日までに十数冊の大人向けの小説や戯曲を発表し、フランス現代文学のなかでも飛びぬけた実力をもつ作家として知られています。二〇〇一年には小説『ロジー・カルプ』で、フランス最高の文学賞のひとつであるフェミナ賞を受賞しました。作品は複数の言語に翻訳されており、日本でも、短篇集『みんな友だち』が二〇〇五年に出版されています。また、『ロジー・カルプ』や、最新作『心ふさがれて』も近日刊行となるほか、初来日も予定されています(二〇〇八年十月)。なお『心ふさがれて』は、本作『ねがいごと』と同じく、「こころ(coeur[oeつなげる])」がキーワードになっています。
(・・・)
『ねがいごと』には、「リアル」と「ファンタジー」、「いいこと」と「悪いこと」の境界線が揺らぐような独特の雰囲気がありますが、それは大人向けに書かれたンディアイ作品と共通しています。いくつもの読み方ができる、という点も、変わりません。スカッとするというよりは、なにか謎めいた夢を見てしまったときのような、微妙な読後感をもたらす物語です。心を揺さぶられながらも、同時にきょとんとしてしまう感じ、と言えばいいでしょうか。
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クリスマス・プレゼントのようにして現れた養女を、両親は、むやみに飾りたてて、人形みたいに、こわれやすいモノみたいにあつかいます――ところが、実は、こわれやすいモノになっているのは自分たちです。大人が子どもみたいで、子どもはどこか大人びている。いわば鏡の国にいるように、ものごとの関係が反転しています。
事件が起き、時間が経って、ようやく最後に、両親は自分たちの要求を娘に押しつけるばかりではなく、本心を隠すことで娘にゲームをしかけたり、いっしょに何かしようと誘ったりするようになります。つまり、モノではなく、自分たちとは別の、ひとつの人格として、子どもを見るようになった、ということです。「秘密」や「誘い」は、「相手がなにを考えているかわからない=自分とは別の人間だ」という前提があってこそ、成立するのですから。カメリアと両親、双方のねがいがとうとう一致します。三人は、ふつうの親子になったのです。
作者は、カメリアを登場させた瞬間から、ずっとカメリアの視点で物語を語っています。ふたつのクリスマスにはさまれた一年間にわたる、変身した両親との生活。それは、見知らぬ国の、見知らぬ親のもとにやってきた黒い肌の女の子が、新しい環境に慣れて、なんでもない日常を親と過ごせるようになるまでの、違和感や、とまどいや、反発を、映しだしているのかもしれません。(訳者あとがきより)
上記内容は本書刊行時のものです。