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カオスに抗する闘い
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2018年7月25日
- 登録日
- 2018年6月12日
- 最終更新日
- 2021年10月14日
紹介
すべてが壊れゆく前に
生成変化を言祝いだドゥルーズは、一方で思考と観念の崩壊、つまりカオスを恐れた。すべてが壊れ不可逆な破局を迎える手前でとどまるための、ほんの少しの秩序、少しばかりのコツを探ること、それこそがドゥルーズ哲学全体を貫く「秘密の一貫性」であった。本書では、これまで前景化されることのなかったこの問いを全面化し、ドゥルーズ哲学全体を体系的に読解するとともに、敵とされてきた精神分析、現象学との理論的交錯を描きだす。人が生まれ、老い、死んでゆく、敗北を余儀なくされた闘いのなかの絶望と希望、哲学的な問いを人生の問いへと昇華させる、俊英の渾身作ついに刊行。
「ドゥルーズは、そのキャリアの過程で、自身がカオスと呼ぶものをめぐって、何らかの態度変更とでも呼びうるものを行ったのだろうか。彼は、若き日に肯定した生や経験の創造性を、老年において放棄し、むしろ私たち――とりわけ他ならぬ彼自身――を保護する秩序を希求するようになったのだろうか。これは哲学研究上の問いであると同時に、人生をめぐる問いでもある。それゆえ、単純な肯定でも、単純な否定でも、答えにならないだろう。私たちは、この問いを入り口にして、この哲学者の人生に思いを馳せながら、しかしあくまで哲学研究として、本書をはじめることにしたい。」(本書より)
目次
序論
1 二つのカオス
2 主題と理由
3 前提的注解
4 ドゥルーズ・精神分析・現象学
5 構成
第Ⅰ部 システム
第一章 差異と反復
1 時代の空気
2 差異――シミュラクル
3 反復――永劫回帰
第二章 流産する非時間
1 時間の第一の総合
2 幼生の主体、崩潰した自我、疲労
3 時間の第二の総合の要請
4 時間の第二の総合
5 時間の第三の総合の要請
6 時間の第三の総合
7 システムとカオス
8 『意味の論理学』へ
第三章 表面と深層の無意味
1 『意味の論理学』の位置づけとその特徴
2 『意味の論理学』のトポグラフィ
3 命題の三つの次元から第四の次元へ
4 第二次組織の構造
5 超越論的領野
6 深層における言葉と身体
第Ⅱ部 器官なき身体
第四章 単為発生と第二の起源――無人島と他者なき世界
1 無人島――想像力による人間の飛躍
2 他者とは何か――最初期論文における
3 他者とは何か――「ミシェル・トゥルニエと他者なき世界」における
4 他者なき世界――「神経症をたしかに経由し精神病をかすめる冒険」
5 倒錯の論理学に向けて
第五章 否定・否認・排除――倒錯の論理学
1 倒錯の文脈
2 変換論から批評と臨床へ
3 サディズムと純粋否定
4 マゾヒズムと否認
5 父の「排除」?
6 精神分析における「排除」の概念
7 否認と排除の並立の意味
8 死のまったく別の次元
第六章 出生外傷から器官なき身体へ
1 動的発生論とメラニー・クラインの位置づけ
2 メラニー・クラインと「態勢」の理論
3 メラニー・クラインにおける「完全さ」と「全体性」の密輸入
4 否認、再び
5 出生外傷から器官なき身体へ
6 器官なき身体の栄光とは何か
7 器官なき身体とカオスに抗する闘い
第Ⅲ部 モニュメント
第七章 シニフィアンと〈形象〉
1 シニフィアンの行方
2 ラカンにおけるシニフィアン連鎖と記憶形成
3 ドゥルーズにおけるマルコフ連鎖の概念化
4 シニフィアンから〈形象〉へ
5 肉塊への慈悲
6 リズム、器官なき身体、ヒステリー
第八章 担われなければならない肉
1 絵画における形象と感覚
2 諸感官の統一と現象的身体
3 知覚と感覚
4 病者から絵画へ
5 感覚の存在と肉
6 担われなければならない肉
7 黄泉の国、民衆の幻視
第九章 モニュメントの行為としての仮構
1 哲学=潜在的/科学=現働的
2 芸術=可能的?
3 芸術は保存する
4 標
5 老い
6 モニュメントの行為としての仮構
7 来るべき民衆
結論
あとがき
人名索引
上記内容は本書刊行時のものです。