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出版者情報
日本後紀の研究
- 書店発売日
- 2018年1月26日
- 登録日
- 2017年12月20日
- 最終更新日
- 2018年1月17日
紹介
『日本後紀』は全40巻中10巻しか現存せず、平安初期研究の障害となっている。そのためか、江戸初期には尾張藩『類聚日本紀』から抄出された二十巻本『日本後紀』が広く流布した。本書は真本と二十巻本の両『日本後紀』の基礎的問題を取り上げる。
序論では、近年における六国史研究の現状と問題点を記し、国史編纂に積極的偽造を認めない立場を尊重すべきことを述べる。
第一部では、真本『日本後紀』をめぐって、通説や近年注目される学説に対し疑問を呈する。『日本後紀』の本文、国史編纂と撰者の関わり、桓武天皇の皇統意識をめぐる問題、薬子の変、などの論点に、史料の性格を考慮し言及する。
第一章では、『日本後紀』の主な写本・版本・活版本を概観し、三条西家本と塙本の異同、またそれらと柳原本との異同箇所を検出し、それぞれ一覧にする。また、近年刊行された訳注日本史料本の残存巻における校訂態度についても論究する。
第二章では、『日本後紀』編纂過程における藤原緒嗣の役割について検討する。緒嗣の経歴を確認し、通説となっている坂本説に疑義を呈する。
第三章では、桓武天皇が三皇子の兄弟相承を遺勅されたとする説について、春名宏昭氏による批判を紹介し、『東宝記』の史料的性格や『日本後紀』の叙述を検討。春名説を支持し、補強する。
第四章では、「薬子の変」を「平城太上天皇の変」とする近年の傾向に対して、『日本後紀』における天皇に対する批判的な文言を検討。天皇批判は平城天皇に限られることから、薬子の変を叙述するにあたって平城上皇の責を問わない『日本後紀』の立場に注目し、『日本後紀』を素直に解釈すべきとする。
第二部は、『日本後紀』散佚後、近世期に行われた『日本後紀』復原作業についての基礎的な検討である。一般に広く流布し「偽書」とも称された二十巻本『日本後紀』を中心に論じる。
第五章では、二十巻本の成立を尾張藩『類聚日本紀』編纂に求め、用いられている出典史料を調査する。
第六章では、一七四巻に及ぶ『類聚日本紀』全体について、出典史料を調査する。それを踏まえて、『類聚日本紀』における日本書紀部分と日本後紀部分の特異性や、『類聚日本紀』編纂について言及する。
第七章では、近世期における『日本後紀』探求、とくに林家・水戸藩における動向を概観する。『日本後紀』以外の書名で伝わる復原本・抄本・偽書と目される書について見渡すとともに、二十巻本流布に至る経緯を推定する。
第八章では、尾張藩における『類聚日本紀』と二十巻本の関係性をめぐる所伝が尾張藩の記録に認められない原因について検討する。
第九章では、賀茂社行幸に関する『日本逸史』延暦十三年十二月庚申是日条の出典(『日本後紀』『日本紀略』『日本逸史』『水鏡』)について検討する。
真本『日本後紀』をめぐる学説を再検討し、また散佚後の近世期における『日本後紀』博捜とその復元事業の軌跡を丹念にたどる、手堅い史料研究。
目次
序 論
第一部
第一章 『日本後紀』の諸本をめぐる問題
第二章 『日本後紀』の編纂と藤原緒嗣
第三章 「桓武天皇の遺勅」について
第四章 『日本後紀』における平城上皇に対する叙述──薬子の変を中心として
第二部
第五章 二十巻本『日本後紀』の基礎的検討
第六章 『類聚日本紀』の基礎的検討
第七章 二十巻本『日本後紀』の編纂と流布をめぐって
第八章 尾張藩二代藩主徳川光友の学と堀杏庵門下
附一 徳川光友の詠歌
附二 翻刻・『頥貞先生年譜』(『汲古』第一号所収)
第九章 『日本逸史』延暦十三年十二月庚申是日条考
──賀茂社行幸初見記事の出典をめぐって
結 論
初出一覧
参考文献一覧
あとがき
索引
上記内容は本書刊行時のものです。