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判例に学ぶ決済サービスの法務と実務
- 書店発売日
- 2021年6月9日
- 登録日
- 2021年6月7日
- 最終更新日
- 2022年9月21日
紹介
カード会員の責任/免責の問題から、多様化し国際化する決済サービス、Buy Now, Pay Later の課題まで、代表事例を取り上げる。約款の解釈や債権管理、情報の安全管理等に関する判例を、会話形式を交えてわかりやすく解説。現在の法制度や実務対応に過去の判決がどう反映されているか、残る問題点や課題は何かを整理する。「月刊 消費者信用」の著者連載を民法改正に合わせて大幅改稿・加筆した、決済法務の実務マニュアル。読者対象は、クレジット会社、流通系・メーカー系カード会社、銀行(デビットカード決済業者、オンライン決済業者を含む)、QRコード決済会社等の職員、消費生活相談員ほか、決済法務について学ぶ社会人一般、学生。
目次
第Ⅰ章 キャッシュレス決済と会員管理・利用管理
1 各種カード取引と会員の責任
⑴ クレジットカード会員の善管注意義務と責任
子供が親のクレジットカードを無断使用した場合に、会員の免責が認められた事例/不当に高額な請求を知らずに、カードを自ら交付して決済された場合に、支払義務の免責が認められた事例/本人からカード使用を許諾された者によるカードの使用が、詐欺罪に該当するとされた事例
⑵ 国際ブランドデビットカードの無権限使用と会員の責任
国際ブランドデビットカードのPINコードを使用した不正使用に、盗難補償も預金者保護法も適用されないとされた事例
⑶ 複数の決済手段が関連する取引と責任の所在
オンライン決済サービスの利用代金をクレジットカードに紐付けて決済した場合に商品に問題があっても、カード会社に対する抗弁が認められなかった事例
2 取引約款の規定の有効性についての判断
⑴ 会員の責任条項と消費者契約法
暗証番号を用いたクレジットカード取引の場合に、カード会社は会員に支払請求をできる、とする条項が無効条項ではないとされた事例
⑵ 期限の利益の喪失条項の有効性
クレジットカード会員規約の期限の利益喪失条項が消費者契約法に照らしても、無効ではないとされた事例/みなし到達の規定は、届け出られた住所についての適用は認められるが、貸主が調査して判明した住所についての適用は認められないとした事例
⑶ 所有権留保特約と破産法上の効力
駐車場に放置された自動車について、所有権留保した者に撤去義務が認められた事例/破産手続において、別除権行使をするには、所有権留保の登録が必要であるが、法定代位により、販売店名義の登録により、対抗できるとされた事例/登録の不要な軽自動車の場合、破産手続において別除権行使するには、所有権留保権者への占有改定による引渡しがなされていることが必要であるが、明文の規定がなくとも、当該契約書の条項全体および当該契約を行った当時の状況等を当事者の達成しようとする目的に照らして、総合的に考察して判断すべきとされた事例
⑷ 海外利用特約の有効性
会員規約の海外利用分の円換算法を記載した規定内容が有効とされた事例
⑸ 会員規約の変更の合理性
会員規約の変更が合理的と認められた事例
第Ⅱ章 クレジット取引における紛議と抗弁等の可否
1 名義貸しと取消しの抗弁
名義貸しを依頼するにつき、告げた内容が購入者の判断に影響を及ぼすことになるものに当たるときは、契約の取消しが認められるとされた事例/契約名義を貸した者が、経済的利得等を理由に取消しの抗弁を認められなかった事例
2 加盟店のクレジット会社に対する契約上の責任
紛争解決義務を果たさなかった加盟店に重畳的債務引受が認められた事例/下取代金の未清算に対し、販売店の相殺の主張が認められなかった事例/ネットオークションでの現状有姿販売した車両に、メーター巻き戻しの事実があったことを、隠れた瑕疵として損害賠償請求が認められた事例
3 抗弁権の主張が認められる範囲
銀行の目的ローンを信販会社が保証している場合に顧客の抗弁権が認められなかった事例/割賦販売法の適用のない取引で抗弁権が認められるには、あっせん業者に帰せしめるのを信義則上相当とする特段の事情が必要とされた事例/個人事業主でも、クーリング・オフが認められた事例
第Ⅲ章 後払決済サービスに係る債権管理
1 支払の請求と訴訟手続
商号の続用に係る会社法の規定により事業の譲渡を受けた会社に支払責任が認められた事例/妻が契約したクレジット代金を夫に請求できる日常家事債務とした事例/保証契約の内容を了知したうえで、指示ないし依頼して署名ないし記名押印の代行をさせることにより、書面を作成した場合、保証契約が有効となるとされた事例/購入者が、販売店に弁済受領の代理権があると信じたことに過失がなく、債権の準占有者に対する弁済として有効であるとした事例
2 訴訟手続と無効
合意管轄裁判所を定める条項が、無効条項ではないとされた事例/転居先不明の債務者に対する公示送達が、判決後に無効になった事例/クレジット会社による訴訟提起に不法行為性があるとされた事例/認定司法書士の裁判外の代理権限は簡裁民事訴訟手続と同じ範囲であるとして、これを超える場合の代理はできないとされた事例
3 債権差押えと取立権
先日付で立替金を振り込んだ後に、支払日前に加盟店のカード代金請求権の差押命令が到達した場合に、支払ずみとして差押命令に対抗できず、組戻しすべきとされた事例/生命保険の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者により解約が認められた事例/自動車保険の解約返戻金の差押債権者の取立権に基づく解約権が認められなかった事例
4 支払停止・破産債権届出・免責
弁護士からの破産手続の明記のない「債務整理通知」が黙示の支払停止の表示とされた事例/立替金債務の弁済が延滞に陥ることの明白な状態のもとにされたカードの利用が、不法行為を構成し、非免責債権とされた事例/主債務者の破産手続中に保証人から一部弁済がなされても、求償債権としての予備的債権届出は認められず、債権者への超過配当が認められた事例
5 弁護士照会・文書提出命令
加盟店の苦情内容を記載した書面の一部につき、文書提出命令が認められた事例/弁護士会からの23条照会に対する回答拒否に賠償責任が認められなかった事例
第Ⅳ章 カード情報と個人情報をめぐる問題
1 カード情報の漏洩と責任
カード情報漏洩におけるシステム開発会社の責任が認められた事例/未成年の子の氏名と性別、生年月日、住所、電話番号と保護者としての氏名は、プライバシーに係る情報として法的保護の対象となるとされた事例/カード情報の漏洩におけるインターネット加盟店の損害賠償責任が認められた事例
2 カード情報の窃盗と賠償責任
クレジットカード情報の窃盗犯にクレジットカード会社への賠償責任が認められた事例
3 信用情報機関の信用情報の保存
時効消滅した債務の延滞記録につき、信用情報機関における所定の保有期間内の登録の継続が認められた事例
上記内容は本書刊行時のものです。