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森林と文化 蛯原 一平(編集) - 共立出版
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森林と文化 (シンリントブンカ) 森とともに生きる民俗知のゆくえ (モリトトモニイキルミンゾクチノユクエ)

自然科学
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発行:共立出版
A5判
308ページ
定価 3,700円+税
ISBN
978-4-320-05828-6   COPY
ISBN 13
9784320058286   COPY
ISBN 10h
4-320-05828-3   COPY
ISBN 10
4320058283   COPY
出版者記号
320   COPY
Cコード
C3345  
3:専門 3:全集・双書 45:生物学
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2019年4月2日
最終更新日
2019年4月16日
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紹介

世界各地で森とともに生きる人々は,森林に関する広い知識や,それらを利用する技術・技能を集団内に蓄え,世代を越えて伝えてきた。また,森との関わりのなかで,人々は独自の信仰体系や世界観を構成し,森林利用に係る規範やしきたりを形成してきた。民俗知と称される,地域の人々がもつこれらの知や森への眼差しは,森林を母体として育まれる「文化」の源泉といえる。

しかし,そのような民俗知のあり方は大きく変わろうとしている。あるところでは,国家や国際社会の思惑に翻弄され,またあるところでは,地域社会内部の変化により自然消滅しようとしている。本巻では,国内外の森林地帯に暮らす人々が保有する民俗知の現在を紹介しつつ,それらが森林保全,林産資源の持続的利用,地域づくりといった社会・環境問題とどのように関わっているのか,あるいは関わりうるのかについて論考することで,現代社会における新たな森と人との関係性のあり方を探っていく。

本巻の学術的特徴として,以下二点を挙げておきたい。第一は,文化人類学や日本民俗学の研究者を執筆陣に加えることで,森林学(林学)と,関連する人文社会科学との隔たりを架橋した点である。第二は,海外と日本国内の事例を民俗知という切り口から統合し,民俗知を通じた森と人との関わりを同時代に生きる人々による共通の問題として考察した点である。民俗知の世界は深く,そして広い。本巻が,そのような豊かな意味世界へと多くの人を誘い,森林と文化について興味を深めることに貢献するよう願っている。

目次

第1章 森とともに生きる人々の文化と民俗知
はじめに
1.1 森林との関わりとしての文化と知識
1.2 民俗知に注目する意義
1.3 民俗知から森林文化論へのアプローチ
1.4 本巻の構成

【第1部 民俗知を知る:熱帯と冷帯に暮らす森の民の事例から】

第2章 民俗知と科学知:カメルーンの狩猟採集民バカの民俗知はどのように語られてきたか
はじめに
2.1 民俗知はどのように語られてきたか
  2.1.1 エスノサイエンス研究と民俗知
  2.1.2 民俗知と科学知
  2.1.3 民俗知は生態系の保全に役立つのか
2.2 狩猟採集民バカ
  2.2.1 アフリカの熱帯雨林とピグミー系の狩猟採集民
  2.2.2 調査地の概要
2.3 バカの民俗知
  2.3.1 バカの植物知識の概要
  2.3.2 植物知識の多様性
  2.3.3 知識の創造性と状況依存性
2.4 バカの民俗知はどのように語られてきたか
  2.4.1 カメルーンの森の現在
  2.4.2 先住民運動と参加型マッピング
  2.4.3 非木材林産物(NTFPs)の開発
おわりに

第3章 森林環境問題と住民の森林観:なぜプナンは森林を守るのか
はじめに
3.1 森林環境問題と民俗知
  3.1.1 森林とくに熱帯林問題
  3.1.2 熱帯林問題の原因と背景
  3.1.3 熱帯林問題への対策と関係者の重層性
  3.1.4 住民と民俗知の位置づけ
3.2 ボルネオ熱帯雨林と住民
  3.2.1 ボルネオの概略:森林・人・開発・保全
  3.2.2 狩猟採集民と森林
  3.2.3 農耕民と森林
  3.2.4 開発・保全と狩猟採集民・農耕民
3.3 プナンによる伐採反対運動
  3.3.1 プナンが守り抜いた森林
  3.3.2 プナンが商業伐採に反対する理由
  3.3.3 NGOの役割
  3.3.4 民族間関係
おわりに

第4章 熱帯林ガバナンスの「進展」と民俗知
はじめに
4.1 熱帯林ガバナンスの「進展」
  4.1.1 保護地域の協働管理
  4.1.2 紙・パルプ企業の「自主的取り組み」
4.2 森とともに生きてきた人びとの暮らしと民俗知の現在
  4.2.1 国立公園に隣接するセラム島A村の事例
  4.2.2 産業造林地に囲まれたジャンビ州L村の事例
4.3 統治のための新たな装置
  4.3.1 方向づけられた「協議」
  4.3.2 無効化される知
おわりに

第5章 近代化と知識変容:カナダ先住民の「知識」をめぐる議論と実践
はじめに
5.1 北米における先住民の知識に関する議論
  5.1.1 どのような知識なのか
  5.1.2 ドミナント社会と知識
  5.1.3 森(ブッシュ)の全体性
5.2 カナダ先住民カスカの森(ブッシュ)の知識と生業
  5.2.1 獲得の過程に見るカスカの知識の特徴
  5.2.2 具体的な知識とその活用
5.3 社会の変化と「伝統的な(土着の経験的な)」知識・技術
  5.3.1 様々な変化
  5.3.2 伝承の問題
おわりに

【第2部 民俗知をつなぐ:国内山村の事例から】

第6章 和紙原料栽培の民俗知から見る新たな森林像
はじめに
6.1 日本の森林における共同の中の民俗知
6.2 和紙原料栽培における民俗知
  6.2.1 日本文化・地域社会の核としての和紙
  6.2.2 植物としての特長を活かす和紙の民俗知
  6.2.3 山の自然特性を活かす民俗知
  6.2.4 他の作物・生業との組み合わせを活かす
  6.2.5 楽しみややりがいを生み出す
  6.2.6 和紙原料を巡る民俗知とその衰退
おわりに

第7章 山を知る:森とともに生きるマタギたちの民俗知
はじめに
7.1 「生き方」としての民俗知
7.2 朝日連峰山村における山と人との関わり
  7.2.1 雪に育まれた朝日山地の自然
  7.2.2 五味沢地区における林野利用の歴史
  7.2.3 近代以降の狩猟の変化
7.3 春グマ猟と山の「知識」
  7.3.1 山形県における春グマ猟の法制度的位置づけ
  7.3.2 五味沢地区の春グマ猟
  7.3.3 春グマ猟の実例
  7.3.4 山の地形・地理に関する「知識」
おわりに

第8章 ありふれた資源をめぐる民俗知:山菜・キノコをめぐる民俗知とその現代的意義
はじめに
8.1 森の食べものと山菜・キノコ
  8.1.1 森がもたらす食材
  8.1.2 食材としての山菜・キノコ
  8.1.3 商品としての山菜・キノコ
  8.1.4 稀少性の低い資源
8.2 山菜・キノコ採りにみる知識と文化
  8.2.1 利用対象を選ぶ民俗知
  8.2.2 採取の民俗知
  8.2.3 利用過程の民俗知
  8.2.4 小括:マイナー・サブシステンスとしての山菜・キノコ採り
8.3 山村の強みを活かした山菜・キノコの活用可能性
  8.3.1 山菜・キノコの流通
  8.3.2 長野県小谷村における山菜採りツアー
  8.3.3 福井県大野市和泉地区(旧和泉村)の特産化
おわりに

第9章 保護地域を活用した地域振興や山村文化保全の可能性
はじめに
9.1 多様化する保護地域
  9.1.1 保護地域の定義
  9.1.2 地域「規制」型の保護地域から地域「活用」型の保護地域へ
  9.1.3 繰り返される保護地域ブーム
9.2 保護地域を活用した産業:エコツーリズム
  9.2.1 エコツーリズムの定義
  9.2.2 日本におけるエコツーリズム推進
  9.2.3 地域振興の一方策としてのエコツーリズムの有効性と限界
9.3 保護地域を活用した地域振興の動き:文化庁の動き
  9.3.1 日本遺産
  9.3.2 文化財保護法の改正
9.4 保護地域と地域振興の関係性
9.5 保護地域「指定」がもたらす地域文化への影響
おわりに

【第3部 民俗知のゆくえ:まとめにかえて】

第10章 民俗知のゆくえと現代社会
はじめに
10.1 森林文化の源泉としての民俗知
  10.1.1 民俗知の特質
  10.1.2 森の民にとっての民俗知
10.2 民俗知の近現代
  10.2.1 近代科学との対峙
  10.2.2 技術の発展
  10.2.3 市場経済の広がり
  10.2.4 近代的法制度
10.3 民俗知への期待
  10.3.1 持続的資源管理,環境保全への期待
  10.3.2 地域発展への活用
  10.3.3 地域文化の涵養
10.4 民俗知を「活用」する危うさ
  10.4.1 切り取られる民俗知
  10.4.2 単純化がもたらす懸念
10.5 民俗知をつなぐ
  10.5.1 民俗知継承の危機と課題
  10.5.2 現代社会における新たな民俗知継承のあり方
  10.5.3 「翻訳者」に求められること
おわりに:残された課題

索 引

上記内容は本書刊行時のものです。