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木本植物の生理生態 小池 孝良(編集) - 共立出版
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木本植物の生理生態

発行:共立出版
A5判
264ページ
定価 3,600円+税
ISBN
9784320058125
Cコード
C3045
専門 単行本 生物学
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2020年9月18日
最終更新日
2020年10月21日
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紹介

 多年生植物である樹木は芽生えた場所で長期間にわたって環境を利用しながら成長し,そのうち周辺環境をも変える巨大な構造物になる。これらの特徴を草本植物と対比するため,本書では木本植物と呼ぶ。木本植物は植物の環境適応を考えるうえで,興味深い材料でもある。本書では都市緑化や木質資源再生などの応用に役立つ基礎を学ぶために,ツル性木本植物を含んだ木本植物の生き方の一端を紹介したい。
 植物の光合成のもとになる二酸化炭素(CO2) 増加に伴う温暖化によって,温度,降水の地球規模での急激な変化がもたらされている。住環境として期待の大きい樹林地や都市近郊林は,地域からもたらされる自動車からの排ガスに関連した大気汚染(主に光化学スモッグ),過剰施用している窒素肥料に起因する窒素過剰,越境大気汚染によっても健全性が損なわれる。景観をそこなう虫害の発生など,身近な緑が悪影響を受けている。これらの影響を受けにくい緑地や森林造成が必須である。国家としてのグリーン・インフラの整備の基礎を,この著書から捉えていただきたい。
 本書は,最終目的である森林を基礎とする生態系サービスの高度化のために,保全生態学の基礎,植生分布に起因する種内変異,生産の基礎を担う光合成とその産物の分配,植物生態学の基本原理,環境資源としての窒素動態,安定同位体利用による樹林地の健康診断,そして地球環境変化による影響評価をコンパクトにまとめた。樹林地など緑資源の保全管理のために,木本植物の環境応答の最前線情報を手早く得られることを本書の特徴とする。重点トピックはコラムとして,新進気鋭の研究者からの情報を掲載している。

【読者対象】
植物学・生態学・森林学を学ぶ大学学部生から大学院生,各地の林業大学校,各地の農業高校森林科の学生および教員

目次

第1章 森林の保全生態
1. 1 森林の成立・維持における生物多様性の意味
1. 2 生物多様性と生態系サービス
1. 3 木本植物種の保全生態
1. 3. 1 生活史の完結
1. 3. 2 環境と生理的,生態的最適域
1. 4 撹乱と森林の保全
1. 5 森林の保全策の種類
1. 6 土地の共用と節約
コラム1. 1  撹乱と種の共存はバランス次第
文献

第2章 地域変異と生活環の制御
2. 1 地域変異
 2. 1. 1 遺伝子に見られる地域変異とその生成要因
 2. 1. 2 地域変異の実例
 2. 1. 3 形質に関わる遺伝子の特定
コラム2. 1   カバノキ属樹種の遺伝構造,種分化および雑種形成の歴史
2. 2 光質と日長
文献

第3章 樹冠と林冠の構造とその発達・維持
3. 1 初期構造の重要性
3. 2 個体の樹冠の構造と発達
3. 3 林冠構造と光減衰
3. 4 森林の遷移と林冠構造の変化
3. 5 一斉林における樹冠発達と幹の肥大成長との関連
3. 6 葉面積指数の維持
3. 7 おわりに
文献


第4章 光合成作用
4. 1 シュートと葉の構造・機能
 4. 1. 1 葉の形
 4. 1. 2 常緑・落葉と光合成能力
 4. 1. 3 個葉の内部構造
 4. 1. 4 耐陰性と成長に伴う光利用特性の変化
コラム4. 1  春モミジ
コラム4. 2  コンダクタンス
4. 2 栄養塩
 4. 2. 1 光合成と栄養塩
 4. 2. 2 気候変動下での土壌の栄養環境
4. 3 樹体と個葉の水分関係
 4. 3. 1 高木の水輸送
 4. 3. 2 プレッシャーチャンバーとP―V 曲線
コラム4. 3   過湿土壌とメタン放出―樹木を介した地球環境への影響―
4. 4 クロロフィル蛍光反応と光阻害の生理
 4. 4. 1 クロロフィル蛍光反応
 4. 4. 2 光阻害
 4. 4. 3 クロロフィル蛍光の量的展開
コラム4. 4  蛍光反応の利用
4. 5 非同化器官の呼吸
 4. 5. 1 樹体内における酸素の移動
 4. 5. 2 樹液流によるCO2 輸送
 4. 5. 3 CO2 放出速度の季節変化
 4. 5. 4 幹の呼吸速度のサイズ依存性と個体呼吸量の推定
コラム4. 5  C―D 定規
文献

第5章 光合成産物の分配
5. 1 ソース・シンク
 5. 1. 1 ソース・シンクの概念
 5. 1. 2 生産環境への応答
 5. 1. 3 森林の保育技術
コラム5. 1  樹木と土壌物理性
5. 2 被食防衛物質の分配
 5. 2. 1 被食への防御
 5. 2. 2 葉内の被食防衛物質の局在
コラム5. 2   匂いを介した植物コミュニケーション―植物の環境感知能力―
5. 3 樹木の形と森林の構造
 5. 3. 1 基礎編:パイプモデル理論の原著論文
 5. 3. 2 展開編1:パイプモデル理論と樹木の解剖学的・機能的特性
 5. 3. 3 展開編2:パイプモデル理論と関連する法則
 5. 3. 4 発展編:分岐特性に配慮したパイプモデル理論の発展
 5. 3. 5 今後の展開
コラム5. 3  タケにおける稈形の解析
5. 4 競争密度効果
 5. 4. 1 競争密度効果の逆数式と最終収量一定の法則
 5. 4. 2 自己間引きの3/2 乗則
 5. 4. 3 森林群落への応用
 5. 4. 4 競争密度効果と現存量密度の関係
 5. 4. 5 3/2 乗則の解釈と説明
 5. 4. 6 森林の構造を取り入れた密度効果
コラム5. 4  吉野杉に見られる樹幹と樹冠
文献

第6章 木部の構造と機能
6. 1 肥大成長の制御
 6. 1. 1 肥大成長の外的制御
 6. 1. 2 肥大成長の内的制御
コラム6. 1  広葉樹多種の肥大成長の特徴
6. 2 木部構造と水分生理
 6. 2. 1 樹木の木部構造
 6. 2. 2 木部の通水機能概説
 6. 2. 3 木部の通水特性と細胞形態
 6. 2. 4 木部通水構造の機能タイプと生育分布
 6. 2. 5 つる性木本植物の木部通水特性
文献

第7章 木本植物の窒素利用
7. 1 木本植物にとっての窒素
7. 2 木本植物の窒素獲得
 7. 2. 1 土壌中の無機態窒素
 7. 2. 2 微生物との共生
 7. 2. 3 多様な窒素獲得
7. 3 木本植物の体内での窒素の利用
 7. 3. 1 窒素の配分
 7. 3. 2 窒素滞留時間
 7. 3. 3 森林生態系の窒素循環への影響
コラム7. 1  窒素飽和
文献

第8章 安定同位体から見た森林樹木
8. 1 安定同位体とは何か
 8. 1. 1 炭素
 8. 1. 2 炭素安定同位体比とその利用
 8. 1. 3 その他の元素の安定同位体比―酸素・水素・窒素・硫黄・重金属―
8. 2 森林樹木と街路樹の環境応答
 8. 2. 1 森林樹木の水利用効率
 8. 2. 2 街路樹―安定同位体による機能評価―
 8. 2. 3 樹木の光合成機能を決めるメカニズム―安定同位体による評価―
コラム8. 1  瀬戸内の樹木の水利用効率
文献

第9章 繁殖
9. 1 有性繁殖
 9. 1. 1 樹木の性表現
 9. 1. 2 自家受粉と他家受粉
 9. 1. 3 花芽形成に影響する要因
 9. 1. 4 結実の豊凶(マスティング)
 9. 1. 5 種子
9. 2 クローン成長
 9. 2. 1 クローン成長の定義
 9. 2. 2 クローン成長の形態
 9. 2. 3 萌芽更新と撹乱―頻度と強度―
 9. 2. 4 クローン成長を制御する内的要因
 9. 2. 5 クローンは永遠か?
9. 3 更新環境と菌害
 9. 3. 1 土壌伝染病
 9. 3. 2 菌害各種と発生環境
 9. 3. 3 更新適地
9. 4 ササ類の特徴と生理特性
 9. 4. 1 特徴と生活型
 9. 4. 2 分布域と積雪深
 9. 4. 3 ササ類の生理生態的特性
文献

第10章 生態系修復
10. 1 荒廃地と乾燥地の生態系修復
 10. 1. 1 荒廃地の緑化
 10. 1. 2 乾燥地の生態系修復
10. 2 菌根類の利用による生態系修復
 10. 2. 1 宿主植物と共生菌の関係
 10. 2. 2 AM菌とECM菌
 10. 2. 3 根粒菌類
コラム10. 1  好アルミニウム植物
10. 3 樹木と土壌動物の関係
 10. 3. 1 はじめに
 10. 3. 2 土壌動物の分類群・機能群
 10. 3. 3 実生の成長・生残
 10. 3. 4 種子と土壌動物
 10. 3. 5 繁殖
 10. 3. 6 土壌動物と樹木の気候変動への応答
10. 4 海岸林の緑化再生―根圏の視点―
 10. 4. 1 海岸林の再生―東日本大震災の事例から―
 10. 4. 2 震災後の海岸林造成における盛土の性質
 10. 4. 3 海岸林におけるクロマツの根系
 10. 4. 4 今後の課題―?き起こしの効果とマツ材線虫病―
10. 5 マングローブ
 10. 5. 1 マングローブ―樹種の特徴と種構成,日本国内の分布―
 10. 5. 2 樹木の配置と物質生産
 10. 5. 3 マングローブ林の生態系サービス
 10. 5. 4 耐塩性,気根,繁殖特性
 10. 5. 5 マングローブ林の人工植栽による造成
コラム10. 2   マングローブ植物の定義
文献

第11章 変動環境への応答
11. 1 二酸化炭素(CO2)
 11. 1. 1 CO2 施肥から陸域生態系の応答予測
 11. 1. 2 CO2 応答 ―負の制御とFACE―
 11. 1. 3 階層構造への影響とメタン発生
コラム11. 1  複合環境ストレスの評価に向けて
11. 2 大気汚染
 11. 2. 1 酸性雨と広域大気汚染
 11. 2. 2 樹木への大気汚染影響
 11. 2. 3 市街地における大気汚染と樹木の応答
 11. 2. 4 山岳域における大気汚染と樹木の応答
 11. 2. 5 樹木に対するオゾンの影響
 11. 2. 6 O3-FACE による樹冠レベルの光合成応答
 11. 2. 7 オゾンとその他の要因の複合影響
 11. 2. 8 おわりに
コラム11. 2  BVOCs を出す木,出さない木
11. 3 ヒートアイランド
 11. 3. 1 都市環境と樹林地
 11. 3. 2 個葉と気孔の構造・機能―落葉広葉樹を例に―
 11. 3. 3 緑地造成の注意点
11. 4 森林植生に対する気温上昇と乾燥の影響
 11. 4. 1 温度上昇の影響―水分通道と土壌乾燥の影響―
 11. 4. 2 水分不足環境での生理と枯死のプロセス
 11. 4. 3 温度と乾燥の複合影響
コラム11. 3 山火事と落葉のかたち
11. 5 低温応答
 11. 5. 1 冷温に対する応答
 11. 5. 2 凍結温度に対する応答
文献

参考図書
基礎編
 生態学
 同位体生態学
 植物学全般
 植物生態学
応用編
 土壌・植物栄養
 生理生態学・環境植物学
 森林生態学・樹木医学系
 生物間相互作用
 調査・実験法
 その他

上記内容は本書刊行時のものです。