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SP盤演説レコードがひらく日本語研究
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2016年3月
- 書店発売日
- 2016年3月10日
- 登録日
- 2016年2月18日
- 最終更新日
- 2017年8月24日
紹介
演説の言語は、近代日本語形成史において
どのような役割を果たしたのか
日本最古のまとまった音源である大正~昭和戦前期のレコード音声と文字化資料を対象に、方言を中心とする音声研究、変異理論や談話分析に基づく社会言語学的研究、文法・語彙を中心とする近世・近代語研究、話し言葉・書き言葉のコーパス言語学的研究、と多角的アプローチ。
大正以前の過去へ、そして現代へとつながる言語理論を切りひらく。
【本書は......SP盤レコードに遺された、大正から昭和戦前期の政治家・軍人・実業家・文化人等の演説・講演を中心とする録音音声資料と、それを忠実に文字に起こした文字化資料に基づき、多様な背景をもつ12人の日本語研究者が、それぞれの持ち味を生かして新たな研究活用の方途を探索した成果である。書名では「SP盤演説レコード」と一括りにしたが、実際に収録されている内容は演説に加えて講演・訓話・法話・説教、朗読・実況・ドラマ、さらには自治体の行政広報と、そのジャンルにはかなりの広がりがある。......「はじめに」より】
【SP盤レコード(standard playing record)とは、1948年頃にLP盤レコード(long playing record)が開発されて以降、それ以前の蓄音機用レコードをstandard playing record と呼んで区別するようになった、その名称の略称である。日本ではこの呼称が普通に使われるが、国際的には、このレコードの1分間の回転数に由来する"78rpm record"という名称の方がよく使用される。最初期には片面盤のものも見られるが、通常は両面盤で、一面の録音時間は3分程度までのものがほとんどである。】
執筆は、相澤正夫/金澤裕之/東照二/岡部嘉幸/小椋秀樹/尾崎喜光/高田三枝子/田中牧郎/南部智史/松田謙次郎/丸山岳彦/矢島正浩。
目次
はじめに●相澤正夫
[資料解説]SP盤レコードと岡田コレクション●金澤裕之
はじめに/岡田コレクション「SP盤貴重音源集」について/演説・講演レコードの資料的性格/文字化の実態と作成資料について/録音資料の歴史/作品名一覧【音源順・通番】
I 音源資料がひらく音声・発話の研究
1 幕末~明治前期のガ行鼻音を推定する●相澤正夫
要旨/はじめに/分析対象とするデータの作成/ガ行鼻音の保持状況の捉え方/東日本各地におけるガ行鼻音の保持状況/おわりに
2 大正期演説のピッチ―ピッチレンジおよび大隈演説のfinal loweringについて●高田三枝子
要旨/研究の概要/岡田コレクション大正期演説の音声資料/大隈演説におけるfinal loweringの生起範囲/今後の展望
3 大正~昭和前期の演説・講演における漢語の読みのゆれ●松田謙次郎
要旨/はじめに/方法論/「存」類/「没」類/「達」類/「重」類/軍人読み?/まとめ
4 戦時中の広報―東京市情報課の「巻き込み」手法●東 照二
要旨/はじめに/理論的背景/データ/分析/まとめ
II 文字化資料がひらく文法・形式の研究
1 大正~昭和前期の演説・講演レコードに見る「テおる/テいる」の実態●金澤裕之
要旨/はじめに/調査について/調査結果Ⅰ〔一般的な傾向〕/調査結果Ⅱ〔個別的な特色〕/おわりに/本稿において調査対象とした「テいる」の用例一覧/岡田コレクション「演説音源集」〔分類一覧〕
2 大正~昭和前期における助動詞マスの終止・連体形について―マスルの使用状況を中心に●岡部嘉幸
要旨/はじめに/終止・連体形「マス」「マスル」の使用実態/「マス」と「マスル」の使い分け/マスルの表現価値―終止法の場合/おわりに
3 従属節の主語表示「が」と「の」の変異●南部智史
要旨/はじめに/調査対象/「が」と「の」の分布/変化について/変化の推進要因としての「の」生起環境の縮小・消失/まとめ
4 大正~昭和前期の丁寧語諸表現の動態●尾崎喜光
要旨/はじめに/分析/今後の課題
III 文字化資料がひらく文体・表現の研究
1 条件表現の用法から見た近代演説の文体●矢島正浩
要旨/本稿の目的/方法/話し言葉資料でも使用が見られる接続辞について/話し言葉資料では多用されない接続辞について/演説の文体を形作るもの/おわりに
2 大正~昭和前期における演説の文体●小椋秀樹
要旨/はじめに/先行研究/目的・調査対象・方法/分析データ/調査結果/終わりに
3 演説の文末表現の変遷―明治時代から昭和10年代まで●田中牧郎
要旨/本稿の目的と問題/演説の文末表現の調査/敬体と常体/名詞類に下接する文末表現/まとめと課題
4 大正~昭和前期の演説に現れる文末表現のバリエーション●丸山岳彦
要旨/はじめに/先行研究と本稿の目的/分析(1):大正~昭和前期の演説に現れる文末表現/分析(2):平成期の演説に現れる文末表現/考察/展望
「あとがき」に代えて―文字化を巡るこぼればなし●金澤裕之
上記内容は本書刊行時のものです。