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建築 意匠権対策マニュアル
- 書店発売日
- 2021年12月24日
- 登録日
- 2021年11月23日
- 最終更新日
- 2021年12月4日
紹介
デザインを盗むな!
意匠権ウォーズが始まった!!
2020年4月施行の改正意匠法で導入された「建築物・内装の意匠権」の入門書。建築設計者・デザイナー、店舗運営に関わる事業者なら押さえておきたい基礎知識と実務ノウハウがこの1冊で分かる。大手建設会社などの意匠・特許事務などを広く手掛ける弁理士、知財紛争に詳しい弁護士などに取材し、新法の使いこなし方を提案する。建築物・内装のデザイン領域における知財事件も解説。
<主な内容>
1章 意匠権ウォーズが始まった
意匠権とは、デザインを守る盾か、ビジネスに生かす矛か――。建築物・内装の意匠登録が可能となったことで、具体的に何が変化するのか。住宅のデザインを巡って実際に起こった裁判の事例から見ていく。
2章 建築・内装設計が意匠権で変わる
意匠登録制度はデザインの独占的排他利用権を認めるもので、確立すれば模倣行為など民事・刑事の両面から防ぐことができる。同時に競合他社が手にすれば手ごわい権利でもある。意匠権とは何か?基本を解説する。
3章 デザインを武器にせよ、トップランナーを追う
ユニクロ、蔦屋書店、くら寿司・・・。建築物・内装の意匠登録第1弾となったのは、主に商業施設を展開する事業会社だった。機敏に権利取得へ動いたトップランナー企業群の狙いを探る。ユニクロ、くら寿司の店舗デザインを手掛けた佐藤可士和氏にもインタビュー。
4章 先行意匠の調査・意匠登録出願の勘所
いま進めている設計案のデザインは、他者の意匠権を侵害していないか? 意匠登録が可能なレベルの独創性に達しているか? 意匠登録制度に強い杉村萬国特許法律事務所の監修により、先行意匠調査や意匠登録出願のポイントを解説する。
5章 弁護士・弁理士が応える建築と意匠権Q&A
意匠権の「権利者」となれるのは誰か? インハウス設計者は意匠権者になれるのか? メディアで公表済みの建築作品は登録できるか? 意匠権はデザインの金銭的価値を高めるか? そうした疑問について、知的財産権や意匠法に詳しいTMI総合法律事務所の弁護士、弁理士が解説する。
6章 判例に見る建築デザイン事件簿
建築デザインを巡る建築訴訟は何度も起こっている。だが著作権法を根拠とした事件では、裁判所へ訴え出た設計者・デザイナー側に厳しい判決が相次いできた。意匠権を巡って権利者側の主張が採用された東京地裁判決のほか、主要判決を振り返る。
目次
1章 意匠権ウォーズが始まった
1-1 デザインを盗むな! ワンダーデバイス事件の波紋
住宅外観の模倣が異例の裁判に発展/初めて建築物に「権利侵害」を認定/
東京地裁判断の注目ポイントは
1-2 意匠権は建築業界をどう変える?
水面下で数々の紛争、実は知られてなかっただけ?/「独占的排他利用権」は建築業界をどう変える?
1-3 設計者よ夢を抱け、もっと権利意識を持っていい
建築設計の新たな業界像を聞く
【インタビュー】インタビュー 近角 真一氏(日本建築士会連合会会長)
今の設計者には夢とロマンが欠けている/原因は日本の設計事務所の収益構造ではないか/
知的財産が開く設計事務所の新たなビジネス展開
1-4 意匠権は建築士の職責に含まれる可能性も
意匠設計・建築計画の研究者に聞く
【インタビュー】北尾 靖雅氏(京都女子大学教授)
意匠権も建築基準法が守るべき「財産権」?/デザインビルド優位となる可能性/
権利が経済的負担とならないか、注視が必要/建築デザインは誰のものか。公共建築物はどうなる/
分かりにくい「類似範囲」の判断/無効審判制度の活用の検討も視野に/今後の建築学における研究領域にも
2章 建築・内装設計が意匠権で変わる
2-1 意匠権とは何か
審査は新規性・創作非容易性・先願の3要素/特許庁による2段階審査/
事前調査は必須になる
2-2 意匠権の効果とは
最大の権利は「実施権」/法は予防措置も許容している
2-3 改正意匠法制定の経緯は
次世代産業戦略「デザイン経営」の一環/2017年から検討が本格化/
意匠制度小委員会が示した法改正の趣旨/2020年改正意匠法の要点は
2-4 意匠登録制度で建築文化は新しい局面に
建築設計・知財両面を知る専門家に聞く
【インタビュー】杉村 憲司氏(杉村萬国特許法律事務所代表弁理士)、
杉村 光嗣氏(同代表弁護士)
苦心の労作、いつの間にか模倣された/「似た建物が立たない」という新しい価値に/
最大のリスク要素は“曖昧さ”/「意匠登録済み」はポートフォリオの独創性示す/
日本の意匠権は世界にも通用/課題は知財のプロとの協業どう進めるか
3章 意匠権どう使う? トップランナーを追う
3-1 ユニクロ、くら寿司、蔦屋書店-1番手企業の思惑
店舗デザインを守れ/くら寿司は「グローバル旗艦店」を登録/権利が企業価値を裏打ち
3-2 空間デザインはもはや曖昧では成り立たない
建築物・内装の登録意匠第1弾の創作者に聞く
【インタビュー】佐藤 可士和氏(クリエイティブディレクター)
ユニクロ旗艦店3カ所同時オープンへの挑戦/異業種参入の可能性も
3-3 「蔦屋書店」が意匠権にこだわった理由
内装の登録意匠第1弾の知財担当者に聞く
【インタビュー】中路 星児氏(カルチュア・コンビニエンス・クラブ法務責任者)
意匠制度小委員会で必要性を訴える/ネット全盛で変わるリアル店舗の位置付け/
“パクリ論争”から権利流通へ/映画コンテンツの権利流通がヒントに
3-4 建築界のフロントランナー・大林組
「全創作物を出願」、権利で設計の自由を守る/秘密に包まれた意匠登録も/
知財こそ建設会社の価値だ/設計者は知財プロデューサー
3-5 間取りで意匠権取得も、見えてきた建築界の対応
設計事務所やゼネコン、住宅会社が出願ラッシュ/大和ハウス工業は住宅に加え研修施設も出願/
住宅分野では「組み立て家屋」から移行
3-6 建築物・内装の意匠登録は300件を突破
改正意匠法施行1年半後の登録ランキング/権利取得数トップは積水ハウス
★建築物・内装の意匠登録一覧(2021年9月末時点)
4章 先行意匠調査・意匠登録出願の勘所
4-1 先行意匠調査のポイント
先行意匠調査でどんな情報が分かるのか/名称の付け方にはルールがある/
同じデザインで別の意匠権が確立した例も
4-2 J-PlatPatを使いこなそう
登録内容は誰でも見られる/権利内容の見るべきポイントは?
4-3 意匠登録出願のポイント
基本情報はすべてウェブサイト上にある/
原則は電子申請、まず方式審査を突破せよ/まず読むべきは「手引書」だ/
解像度・サイズ・図法にも規定がある/戦略的な視点も必要になる
4-4 手引き書を読み解く(建築物の意匠)
「建築物の意匠」願書記載の留意点/建築物の意匠「1意匠1出願の原則」とは/
建築物の意匠の名称・表記ルール/建築物の図面表現技法
4-5 解説・手引き書を読み解く(内装の意匠)
「内装の意匠」願書記載の留意点/内装の意匠は「1意匠1出願」の例外/
(2)内装の意匠に特有の名称・表記ルール/
(3)内装の図面表現方法と説明方法/特許庁は「特徴記載書」の提出を推奨
4-6 解説・実体審査の審査ポイントは
「新規性」の判断ポイントは/「創作非容易性」の判断ポイントは/
内装の意匠ではこう判断される
5章 弁護士・弁理士が答える建築と意匠権Q&A
5-1 意匠権は誰のものか
Q1 意匠権利者となれるのは誰ですか?/
Q2 インハウス設計者は意匠権者になれますか?/
Q3 創作者を偽称した場合はどうなりますか?
5-2 出願の留意点は
Q4 意匠登録できるデザインとは?/Q5 内装の意匠の登録要件に個人住宅は含まれますか?/
Q6 メディアで公表済みの建築作品は意匠登録できる?/Q7 「創作非容易性」とは何ですか?/
Q8 意匠権と著作権は何が違うのですか?/Q9 海外の建築デザイン保護制度にはどのようなものがありますか?
5-3 意匠権の使い道
Q10 実務ではどのように用いるものですか?/Q11 権利侵害に当たる「模倣」とは?/
Q12 「組み立て家屋」の意匠権とは何ですか?/Q13 先行意匠はどのように調査するのですか?
5-4 責任問題はどうする
Q14 類似性はどのように判断したらよいですか?/Q15 秘密意匠制度とは何ですか?/
Q16 どの程度似ていたら「侵害」なのですか?/Q17意匠権侵害は誰の責任ですか?/
Q18 無効審判とはどのような手続きですか?/Q19 リフォームや改装は侵害行為になりますか?/
Q20 意匠権侵害による損害賠償はどの程度のリスクとなりますか?
5-5 建築界への影響
Q21 社会の進歩が阻害される恐れはありませんか?/Q22 デザインは模倣から始まるものではありませんか?/
Q23 登録が増加すると、自由度が狭まりませんか?/Q24 海外の意匠権は日本でも通用しますか? その逆は?/
Q25 意匠登録すれば模倣対策は万全と言えますか?/Q26 資金力がある大手事業者に有利なのでは?/
Q27 意匠権はデザインの経済的価値を向上させますか?
6章 裁判例に見る建築デザイン事件簿
6-1 ワンダーデバイス事件(東京地裁2020年11月30日判決)
戸建て住宅で意匠権侵害を初認定
★アールシーコア事件 判決文
6-2 タコの滑り台事件(東京地裁2021年4月28日判決)
遊具デザインの著作物性を認めず
6-3 コメダ珈琲店事件(東京地裁2016 年12月19日決定)
模倣デザインの店舗が使用禁止に
6-4 ステラ・マッカートニー事件(知財高裁2017年10月13日判決)
監修者を共同著作者と認めず
6-5 初台マンション事件(東京地裁2014年11月7日判決)
設計図の無断流用に責任問えず
6-6 新梅田シティ庭園事件(大阪地裁2013年9月6日決定)
庭園の著作物性認めるも改変は容認
6-7 グルニエ・ダイン事件(大阪地裁2003年10月30日判決)
プレハブ住宅の著作物性を認めず
上記内容は本書刊行時のものです。