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出版者情報
呼吸器ジャーナル Vol.67 No.4
肺高血圧症 ガイドラインとニース会議提言を紐解く
- 初版年月日
- 2019年11月1日
- 書店発売日
- 2019年10月25日
- 登録日
- 2019年10月4日
- 最終更新日
- 2019年10月4日
紹介
特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(I/HPAP)については、1973年に第1回WHO肺高血圧症国際会議が開催され、若年女性が罹患し、中間生存期間2.8年と極めて予後不良の疾患とされた。本症に対するエポプロテノール持続静注療法および経口肺血管拡張薬の発展に伴い、その予後の飛躍的な改善がみられるが、初期併用療法が普及した日本の専門施設におけるI/HPAPの予後は極めて良好なことが報告されている。抗凝固療法のみでは予後不良とされてきた、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)では、肺動脈内膜摘除術に加えて、日本においてその手技の改良によって普及したバルーン肺動脈拡張術(BPA)によって、非手術適応例の予後も改善した。一方、肺静脈閉塞症/肺毛細血管種症(PVOD/PCH)の予後は今なお不良で、肺移植が唯一の確実な治療である。これらは、厚生労働省の指定難病とされており、PAH、CTEPHはともに3000名を超える患者が登録されている。
2018年3月に肺高血圧症治療ガイドライン改訂版が公表され、海外のエビデンスと日本の現状を踏まえた推奨が記載された。同年2月には、ニースで第6回の肺高血圧症国際会議が開催され、12月にそのまとめが公表された。ニース会議における大きな変更点は、肺高血圧症の定義(安静時平均肺動脈圧≧25mmHg以上)が、>20mmHgと変更されたことである。さらに、PAHの遺伝子的素因、分子病態解明の進歩が報告され、リスク分類と治療指針が改訂された。左心疾患や呼吸器疾患に伴う肺高血圧症とPAHの鑑別、治療の現状について記載され、BPAの有効性が海外でも認められるようになった。
日本においては、もやもや病と関連するRNF213遺伝子異常が初めて報告され、日本人での解析の重要性が指摘されるようになった。CTEPHの病因として、TAFIとの関連が報告され、過剰発現によるCTEPH実験モデルも開発された。先天性心疾患では、積極的肺血管拡張薬使用と、経カテーテル的シャント口閉鎖術で、閉鎖術の適応が拡大してきている。本企画では、日本循環器学会ガイドライン、ニース会議提言のサマリー、解説等の記載に加えて、日本の現状を踏まえた各種肺高血圧症治療のポイント、病因解明とその展望についても記載していただいいる。先生がたの日々の肺高血圧症診療、研究にお役立ていただければ幸いである。
上記内容は本書刊行時のものです。